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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
挿話:魔法少女'sはお役に立ちたい!
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挿話:魔法少女’sはお役に立ちたい!

 彼――真人さん曰く、自分はあちらでは普通で平凡で凡庸な少年だったのだそうです。


 けれど、どう考えてもそんな訳が無くて、妹の真理さんと幼馴染だという使い魔の沙夜さんが呆れたような顔をしてナイナイと手を振っていました。ええ私もそう思います。妹のカトレアだって、真人さんがどのくらい凄かったのだと私が魔獣プラトニアスから助け出されたときの事を毎夜、鼻息熱く語っているのですから彼が語る元の世界の話はあまり当てにならない気がします。


 そもそもな話、普通の勇者に私たちの父――ドラキュリア・ヴァン・ロムネヤスカが単独で破れる筈も無いのですから!

 お父様はヴァンパイアのありとあらゆる弱点を克服し、不死の魔王として既に数百年君臨する魔王の中の魔王。軍隊で攻め入って来た勇者教を幾度も返り討ちにしている本当にすごい人なんです!


――そう、未だお父様に土をつけたのは真人さんと大魔王様だけ。


 ついこの前助けてもらった私だからこそ、そんなお父様を倒した彼の異質さはよくわかります。


 私が魔獣プラトニアスに魂を魔石化させられて取り込まれていました。それを元の状態に戻すことなんて、現代魔法学では不可能――ううん、不可逆の変化だと言われていたものなのです。なのに。今私はこうして、魔物になることも無く生きています。自分という実証例があるのに、不可能だと言いきれてしまうのが魔法を齧るモノとしてとても悔しいところではありますが、どう考えてもあり得ないのでこれ以上不覚考察するのはビアス先生に投げてしまう事にします。ええ、一番頭を抱えていましたし!


 ともあれ私は真人さんに助けていただき、冒険者パーティーの一員として妹共々スカウトしていただいたのですが……。私、このパーティに必要……なのでしょうか?

 学生の傍らでパーティの一員として活動しているので、どうしても学院を数日お休みして遠征するしかないのです。けれど、その週末に遠征を繰り返すこと三回。その三回で私たちのパーティーは魔王を三体ほど撃破しているのです。ええ、少なからず頑張らせてもらいましたが、どの戦闘もあり得ない程に呆気なく終わってしまうのです。


 一回目の魔王の時はフレアちゃんと公くんその可愛らしさを馬鹿にされたことに怒り、獄炎とも呼べる炎により一瞬で魔石のみを残して焼失させられてしまい、二回目の魔王の時なんてスミレさん……ビオラさんと真理さんとカトレアの合体技で上半身をまるっと消し飛ばされ、三回目の魔王はライガさんのお知り合いで、真人さんを馬鹿にされたと言う事でその頭をパンチ一発で吹き飛ばされてしまっていました。

 確かに、たどり着くまでの間の気配遮断や魔力感知なんかは私が担当していましたが、こと攻撃に関しては私は全くと言っていいほど何もしていませんでした。うう、カトレアですら戦っているのに……。



「それで私に相談を……」

「はい……。私、お役に立てているのでしょうか……」


 午後の学園のカフェテラス。お気に入りのアイスミルクティーをちびちびと飲みながら、私はまた深くため息を付いてしまいます。目の前のシレーネさんに相談をお願いしたいと言ったのは、同じパーティーメンバーで私と同じような役回りを持っているから。シレーネさんは現状をどう考えているのかというのも気になったというのもあります。


「そう、ですね。まず戦闘において真人様たちのお役に立てることは今の私やアイリスさんにはとても難しいと思います」

「それなら、やっぱり私なんて……」

「役立たず、だなんて思わないでください。私には私の、アイリスさんにはアイリスさんの役目があるのですから」


 確かに、キャンプを張る際の魔法や魔物の探知、罠の解除なんかは私が担当しています。だけど……。


「そもそも、アイリスさんは自分の価値を分かっていなさすぎます。豊富な魔物の知識とその対応。この世界における安全な冒険の手法は現状のパーティーにおいてアイリスさんの右に出る者はいません」

「けれど、このくらい勇者のシレーネさんなら……」

「その私がそう言っているのです。もっと自信を持たれていいと思いますよ?」


 ニッコリと優し気にほほ笑むシレーネさんですが、皆さんの活躍に私は埋もれてしまっているような、そう、パーティーの名声が私の身の丈に逢っていないように思えてならないのです。……学園の生徒の噂で私がパーティーに寄生していい気になっているとも言われていて……。


「全くもって的外れな噂です。真人さんも仰られていましたよ?アイリスさんの魔法知識や魔物に関する知識は真人さんの知らない事ばかりでとても勉強になると。ですからそのように悩まれることはありません」


 ぴしゃり、とシレーネさんがそう言い切ります。

 みんながそんな風に思ってくれるならどれほどいい事か。私にも――せめてカトレアくらい攻撃魔法が使いこなせればいいのですが、吸血鬼としての血が薄い私は魔力もカトレア程無いのが実情。妹にすら負けるほどの実力と言われるのも無理はありません。


「どうにか……もっと皆さんのお役に立てれるようにならないと……」


 私はまた深くため息を付いて、頭を抱えたのでした。





「ううん、考えすぎだと思いますけど?」

「いいんですぅ!お役に立ちたいんですぅ!」


 今度はシレーネさんがため息を付いて、ヤレヤレと首を振っています。我がままであるのは自覚しているのですけれど!それでも私はもっと真人さんのお役に立てれるようになりたいんですから!

今日も今日とて遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

5/17 ヴァンさんの名前をミスっておりましたので訂正しておりますOTL

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