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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第八章:勇者な執事と魔法学園の姉妹の絆。ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!
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46話:ネズミと言われて思いつくキャラは山ほどいるけど笑顔のセリフ一つで分かるキャラってすごいよね?

「――知らない天井だ」


 何だかこのセリフを言う事が最近多くなっているような気がする。


――生きてる。


 死んでしまっていたら、人間大砲よろしくステラさんに射出してもらおうと思っていたけれど何とかその事態だけは避けられたらしい。大気圏経由な高高度移動ってロマンだけど、生身でやったら何だかまた死にそうだしね!


 ふぅと吐いてあの時既に炭化していた右手を見る。すでに傷は無く、全身を貫くような痛みも消えていた。どうやら眠っている間に治してもらっていたらしい。本当にありがたい事だ。胸の上でモフモフモードで眠っているフレアを撫でると、嬉しそうにすりすりとしてくれた。フレアもお疲れ様。


 あの一瞬、死を覚悟したのだけど何者か知らない誰かに助けられた。だけど、一体誰だったのだろうか?とっさに動けたとして、あの瞬間に攻撃ができる距離にはフレアもビオラちゃんも、真理に沙夜、ライガーでさえいなかった。


「真人さん、目が覚められたのですね」


 カーテンが開くと可愛らしい白いミニスカナースのような姿のビオラちゃんがそこにいた。……天使かな?天使だ!ああ、白いタイツが眩しい!可愛すぎないかなこれ!


「兄さん何だか目がエッチい」

「そ、そんなことは無いぞぉ!そんなことは!」


 その後ろから覗き込むように現れた真理も同じ格好をしていた。く、眼に毒過ぎないかな!?


「それで、俺はどのくらい寝てたのかい?」

「ちょうど丸一日です。被害は建物以外けが人多数で死者はありませんでした」


 そうなると、俺が何とか降ろした四人は――


「はい、ビアス教授もアイリスさんもご無事です。完全に魂を魔石化されていた筈なのに、と学園長さんが首をかしげていましたが、どうやら後遺症もないとの事でした」

「それは何より」


 また大きく息を吐いて目を閉じる。人の域を超えるほどの一撃。


――無限流/人技/終局/百櫻繚乱


 人たる俺の最終奥義。


 殺すためでなく、()()()のその技はどうやら上手くいったらしい。組み立ては出来ていたけど、実践はぶっつけ本番だったから完成したのはあの瞬間。修羅の国の魔王曰く、奇跡とも言える技なのだけど、よく頑張ったな俺!

 しかし、それだけの技だ。今までの奥義が比にならない程に反動が酷い。肉がはじけ飛ぶだけなら()()いい。この技は打てばそれで終わり。俺は完全に電池切れになってしまう。今回こんな状態になったのもほぼほぼその反動が原因と言えるだろう。


「えと、それでビアス先生がご迷惑をお掛けしたと果物を送ってくださったんです。今剥いてきますね?」

「ん、ありがとうビオラちゃん」

「私も手伝う。兄さんはちゃんと寝てないと駄目だからね!」


 そう言って病室から二人は調理場へと行ってしまう。何とか――すべて丸っと上手くいった。このまま全部何とかなってくれればいいのだけど……そうはならないのが現実と言うモノだ。今までどれほどに痛い目にあって来た事か。――運だけではどうにもならない事なんて山ほどあった。だからこそ、慎重に事を運んでいかなければならない。足元をすくわれるときは本当に、一瞬なのだから。


「――それで、あれが貴方の勇者の力?」


 どこから湧いて出でたのか、俺の寝ているベッドの横には学園長――アリアちゃんがいた。本当に自由だなこの学園長さん!


「いつの間に、という言葉は飲み込んでおくとして。怪我人に言う事は他にあるのでは?」

「傷は全部治した。尤も、我が薬を使う前にある程度は既に君の奥方が治していたようだが……。まぁ、エリクシール(虎の子)を使ったんだ。アレを使って治らぬものなど人の心や魂位なものさ」


 アークルとかに居た頃は大魔王が()()()()にポンポンとくれるものだから割と適当に使っていたけれど、売れば人財産――城が立つほどと言われるほど高価なのだ。使ってもらって分かる申し訳なさと有難さを身に染みて感じる。これ、俺お返しとかできるのかな!?


「お返しなど不要。むしろこちらがこれでも足りない程。あれ程の惨事で犠牲者はゼロだ。よもやビアスまでも救おうとしていたとは思わなんだが」


 まぁ、助けようとして助けたわけじゃあないのだけれど。モノのついでで助けれただけのはそっと俺の心の中だけにしまっておこう。


「魔石化されててた全員が元の状態に戻っている。まるで元の状態に綺麗に()()()()()()かのようだった。あんな一瞬でどうやった?魔法?それとも貴方のチート?」

「純粋な技術という奴さ」


 ――彼女のジトがすこぶる痛い。だって本当なんだから仕方ないじゃないか!どうやったか説明しろと言われても本当に難しい。自分の中に発露するその全霊をかけて振るったとしか言い切れないのだ。……

故に俺でにしか使えない技、なのかもしれない。というか、こんなの教えられる気がしないんだけど!


「はぁ。話す気が無いと言う事は分かった。もし、真人。貴方のいう技術なのだとすれば、人の域ではない。魔人――ううん、神の域に触れていると言っていい。事象割断だなんて、魔法でもまだ実現不可能だ。つまるところ、人間にできていいものじゃない」

「と、言われてもなぁ……」


 できてしまうモノは仕方がない。もう一度やれと言われたらできる。それが技術と言うモノ。俺が俺の為に生み出した、俺だけの技なのだから当然だ。だからこそ、彼女はこの技をチート(神からもらった)ではないかと聞いたわけだ。そんなわけが無い。というか、貰えるんなら貰いたかったよ!


「ところで、だ。現状、とっても困っていることが一つ、あるんだ」

「……と、言うと?」

「アレだ」


 彼女が親指でさす先に居たのは――大量に積み上げられたクッキーを頬張るネズミのようなネズミ耳をつけた白髪の小さな幼女だった。……え、誰?


「んっきゅ。だ、誰とは失礼っす!オイラっすよ!(あね)さんに付けていただいた(こう)の名を忘れたとは言わせないっぶふぅ!?姉さん!顔面に体当たりはやめてくれっす!モフモフで痛く無いっすけど、心が痛いっす!」

「んきゅううう……」


 公と名乗る幼女の顔面に全力アタックをかましたフレアがモフモフお顔を膨らませている。と、なるとこの子が……あの、公くん?え、あれ?お、男の子じゃ無かったの!!!?


「性別は問題ではない。問題はこの子が――魔王化している、と言う事」

「え」

「魔石判定は紫」

「え」

「正直に言おう、この魔法学園の総力をかけてもこの少女に勝てる戦力は、無い」

「え」

「そして、彼女は君の事を主の主だと言う」


 アリアちゃんのジトの勢いがすごい。そして背中が冷や汗で冷たい。え、ええと、どないすればええんでしょう……?


「どうもしないで欲しい。つまるところ、暴れられたら抑えられないと言う事。騒動が収まったところにもう一山来られるのはこちらとしてみればたまったモノではない」


 困った様子のアリアちゃんがヤレヤレと肩を竦めて首を振っている。まぁ、確かにその通りだろう。紫魔石クラスと言えばフレイのお母さんやシルヴィアクラスだ。魔王の中でもトップクラスの力を持ってしまった公くんに暴れられたりしたら今いる病院だけでなくこの町が崩壊しかねない。


「もーそんなことしないっすよー。姉さんもお世話になってるって言ってるっすし、アイリスの姉さんの学び舎なんっすから!」


 ふんす、と頭にフレアを乗せた公くんが白いワンピースをはためかせて、幼女なのに大き目の梨ほどの大きさのたわわなモノを見せつけてくれる。身長の代わりにここに養分が……いや、よそう。なんだかアリアちゃんの視線がとっても痛い!


『己の小さい頃の体系に近い。我の眷属、似てとーぜん』


 ごにょごにょとフレアの声が俺だけに聞こえる声で聞こえる。なるほど、そういう訳でこんなけしから……ゴホン、小さいのに大きめサイズになったのだろう。うんうん、実にけしからん!


「この子の言う通りなら問題ないのだけど」

「問題ない、です。この子は俺の家族になってくれた。それならもう安全さ」


 そう言うと公くんがすごく嬉しそうな顔で目を輝かせていた。まぁ、こんな子をこのまま放置して行けないしね!


「そう言う事にしておこう。新たなる魔王として誕生したネズミ型魔王<(こう)>はこの地を護りし勇者の――」

「ペット!」

「――だとな」


 んふーっとまた胸を張って自分をそう(ペットと)言い放った公くんに俺は頭を抱える。せめて、妹とか娘とかその辺にして欲しかったなっ!


 そういう訳で。紆余曲折はあったけれど、どうにか最初の目的――の一歩手前。アイリスちゃんを助け出すことには成功。後はパーティーへの勧誘なのだけど……。それはまた、明日にしてしまうことにする。


 窓から見える中庭で幸せそうにはにかんだ笑顔を浮かべた姉妹の間に――俺が割って入ることなんてできやしないのだから。

これにて八章は完結となります。

いつもより長めでしたが、ご覧いただきありがとうございましたOTL


挿話を一つ挟んだのち、九章へと向かいま( ˘ω˘)スヤァ

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