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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第八章:勇者な執事と魔法学園の姉妹の絆。ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!
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39話:もう少しオブラートに包んで話してねと言って若い子に首をひねられると自分の歳を感じるモノだよね?

 砕け落ちてきた瓦礫を押しのけ、何とかフラリと立ち上がる。


 天井があった場所を見上げれば――空。


 どうやらあの化け物の一撃はダンジョンを討ち貫き、大穴を開けてしまったらしい。


「真理、カトレアちゃん、沙夜、公くん、無事かい?」

「ん、私たちは大丈夫」「は、はい……」「問題ありません」「ちゅー……」『一気に力を使ってはじき出されたがのー』


 ホッとした表情で皆が床にへたり込んでいる。アイリスちゃんは……また薄くなっているけれど、まだ完全に消えてしまってはいないようだった。


 そして、ぷくーと小さくなったヒルコ様だけが不満げに頬を膨らませてる。こうなってしまえばかわいいんだけどなー。


『何か?』

「ん?何でもないよぉ!」


 俺の髪の毛をガジガジ齧るヒルコ様はさておいて、くるりとあたりを見回す。


 あの化け物によって放射された熱でコゲコゲになった研究室内は、部屋であった面影もなく落ちてきた瓦礫まみれになってしまっていた。お高そうな計器類も研究資材もすべておじゃんになってしまっているみたいだった。うん、アレ一体いくらするんだろうね!


 けれど――あるべきはずのものが落ちていない。


「あれだけ倒したのに、魔石が一つも……?」


 真理の驚く声にカトレアちゃんがハッとした表情を浮かべる。

 そう、生まれたばかりとは言え、倒したのは魔石を体内に有する魔物であることに違いない。つまるところざっと数えただけで数百匹分の魔石が消え去ってしまっているわけだ。


 そして、あの時俺の見たダンジョン最下層、そこに飾られていたレリーフの巨大な赤い魔石も無くなってしまっていた。


「アレって本当に魔王の魔石……だったんだよね」


 震える声でアイリスちゃんを見上げる。


『はい、聖剣をもつ白銀の勇者様が討伐された魔王モラクスの魔石だそうです』


 アイリスちゃん曰く、白銀の魔王の倒した十の魔王以外、召喚されたユウシャ達で倒すことができた魔王は四体ほど、そして紫魔石を持っていた魔王はただの()()だけ。強欲の魔王グラトニウスだけなのだそうだ。名前からしてろくでもなさそうだ!


『けれど、ダンジョンコアの魔石は大賢者様がダンジョンを作られてから一度たりともあのレリーフから外されたことは無い筈です』

「そ、それならビアス先生とか公くんの魔石は……」

「それとはまた別の魔王の魔石なんだろうね」


 出所なら心当たりがある。恐らくは、アクシオムの国に献上されていた魔王の魔石なのだろう。横流しした犯人は間違いなくあのいけ好かない金髪!イケメン!のアルフレッド王子だ。今度逢ったら一発ぶん殴ってやる!


「じゃ、じゃあさ。今にいるアレって、魔王二体分かそれ以上の魔石になってるって事?」

「まず間違いなく?」


 ここにいるユウシャや冒険者たちではまず歯が立たない。というか一息で吹き飛びそうなんだよ!プラントの時点で竜とか出して来てたしね!まぁ、培養して育ててたみたいだけども。それでも、普段のダンジョンに比べても強力なものが生み出せるようになっていることに違いない。


 そして更に厄介なのは、アレは空に上がって尚大地との接続が切れていないと言う事だ。


「ダンジョン出てもダンジョンマスターってこれチートじゃないかな?」


 俺も欲しかったなチート!結局何も貰えてないんだよ!といつもの愚痴をこぼしつつ、肩を鳴らして空を今一度見上げる。十階層にもなるこのダンジョンは最下層から地上まで数百メートルはある。地上にはビオラちゃん達が待機してくれてるからしばらくは持つだろうが、限界はある。


「風の精霊が少ないけど、まぁ行けないことも無いかな?」

「ま、待って兄さん。その腕!」

「腕……?」


 言われて見てみると――なるほど、腕の一部が炭化してコゲコゲになってしまっていた。先ほどの一撃の全てを弾き切れなかったから仕方がない。八咫鏡-降天伍華もまだまだ完全では無いという訳だ。もう少し練らないとなぁ。


「そうじゃなくて!その腕でまだ戦うの?」

「戦うさ」

「なんで!私たちに任せてしまっても――」

「そうしたらアイリスちゃんを助けられないかもしれない」

「っ――」


 恐らく現状の戦力であればみんなが死力を尽くして、プラントだけに集中して戦えばギリギリ勝つことができる。というか、こっちにはヤマタノオロチ姉さんズの憑いているビオラちゃんとヒルコ様が憑いている真理がいるのだ。戦力だけで言えば揃っていると言えるだろう。


 しかし、それだけではこの物語は悲劇で終ってしまう。


「だから、俺がいる。絶対に助けるさ」


 ポンポンと涙目のカトレアちゃんの頭を撫でてあげると、その手にアイリスちゃんが手を重ねてくれた。

 その姿は最早霞むほど。時間は――もう無い。


「真理、沙夜、公くん。外に出たら戦場になる。覚悟はいいかい?」

「……うん、大丈夫。まだ戦える」『妾もついておるしの!』

「一度この姿にしていただければしばらくは持つことが分かりましたので、ええ存分に戦わせていただきます」


 そういえば沙夜は元の姿に戻ったままだった。うん、やっぱりその姿の方が可愛い。とポツリと言うと顔をそらされてしまった。褒めるって難しい……。


ちゅちゅー(はりきってこー)!」


 俺の頭の上に乗った公くんがフンスと鼻息荒くやる気をにじみ出している。いつの間にか言葉が微妙にわかるようになってきてる気がするけど、これもフレアと俺が契約しているせい……なのかもしれない。


 体から魔力をごそっと持っていかれた感覚を感じる。どうやら外ではフレアが龍化して戦闘を始めたらしい。


 目を閉じて、声を飛ばす。願うは大精霊――ウィンディア様。うん、ここから外までよろしくお願いするんだよ!

 何だかチラリと頭に冷えピタ張って机に向かうウエンディさんと菜乃花さんが見えた気がするのはきっと気のせいだろう。机の上のモノ(BLの原稿)も見えてなかったことにしたい!何で今書いてるのさ!?と考える間もなく俺たちは巻き上がる風に乗って上へ上へと舞い上がって行ったのだった。


 もっと格好つけさせて欲しいな!?

今日も今日とて遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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