表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第八章:勇者な執事と魔法学園の姉妹の絆。ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!
460/554

38話:クリスマスのイルミネーションに彩られた街並みって独り身だと身に染みる辛さを感じるよね?

 唐突に現れた閃光は大地を焦がし、天を閃光が染めあげる。


 収束した光の元にあったはずのダンジョンは跡形もなく吹き飛び――姿を現したのは魔物と言うのも憚れるモノだった。


 それは、ダンジョンマスター。


 本来であればダンジョンの深くそこにいる筈の化け物。


 そんなモノが六対の醜悪な翼を羽ばたかせ、空へとに舞い踊り、咆哮を上げる。


 誰しもがその光景を見た瞬間に絶望したに違いない。


 あんなものがこの世に居てはいけない。あっていい筈がない。そう、魂の奥底の本能が警鐘を鳴らすのだ。


 ――魔王、ではない。ダンジョンから抜け出したアレは最早ダンジョンマスターですらない。


 魔物を越え、魔王でもない化け物――それは世界を喰らい尽くす破壊の獣。


「に、逃げろおおおおお!!」


 誰かが上げた叫びを皮切りに、街の民も学園の生徒も、冒険者すら逃げ走る。しかし、大地が見ブルするかのように揺れると、ダンジョンに現れる筈の魔物が地面から生まれるが如くその身を起こした。


「な、なんですか、これは……」


 意味が分からない。いいや、分かってたまるモノか。


 至る所から溢れ出した魔物は止まることなく、己が生命を紡ぐため、女はその身を剥かれ男は牙を突き立てられ――立ち止まった魔物すら大型の魔物が喰らっていた。


 魔物たちに統制などなく、己がしたいまま、己が本能のままに全てを奪い、喰らい、犯す。


「ひっ――」


 そして、私の番が訪れる。


 目の前には大型の飛竜。本来であればここにあったダンジョンマスタークラス。こんなのに、私一人がどうできるはずもなく。


 大きく開いた口は躊躇うことなくへたり込み動けなくなっていた私を捕らえ、その命をここで――



「――申し訳ありません。遅くなりました」

「え――」


 驚きに目を見開く。そこにいたのは、只一人の少女だったのだから。


 彼女は、確か先日私を助けてくれたピーターという方の主……確か、スミレ・グリフィンさん……だったはず。どこかの国のご令嬢で、己が身を立てるために配下であるピーターさんたちと共に旅をしているのだと私は聞いていた。


 そんな彼女があの細い足で竜の頭を踏み砕いていた。可愛らしい衣装を身にまとったその姿はまるで勇者のよう。だけど、彼女は勇者ではなくこの世界の住人の筈。


「スミレ様。大型の魔物の殲滅を開始いたします」

「はい、どうぞよしなに」


 メイド服のロングスカートのすそを軽く持ち上げたのはピーターさんの同僚さん。名前までは知らないけれど、とそこまで考えた瞬間。ボコっとその身からその可愛らしい見た目にそぐわぬ巨大な腕が背中から生え、襲い来る魔物たちを殴り飛ばしていく。何かな、アレ?


「それで、どの程度でやっていいんだ?」

「全力でお願いします。フレアちゃんもお願いします。どうか被害がこれ以上増えないように」

「んきゅ!」


 獅子族の奴隷少女が彼女の号令にあわせて戦場へと走り出す。大型の魔物をまるでおもちゃのように蹴り飛ばし、その頭に乗っていたモフモフのぬいぐるみは――巨大な真紅の龍へと変じると上空へと飛び立った魔物たちを口から放つその焔のひと吹きでほとんどを焼き落してしまいました。


 あまりの事に目が点になる。うん、なんなのかなこのトンデモ軍団!いや話には聞いていた。ダンジョンに初めて潜って最下層に到着、そしてダンジョンマスターを超少数メンバーで撃破したと。けれど、どこかその話を半分くらいしか聞いていなかったようにも思える。だって、どう考えても現実感がない。あってたまるモノですか、このファンタジーが!聞いただけじゃフィクションにしてもできすぎだと行ってしまうに決まっている!


 だけど、目の前のその光景が現実だと言う事を嫌というほどに見せてくる。といか、もう彼女たちだけでいいのではないだろうか?――あれ?


 そこまで考えて、あることに気づく。そう、あの日私を助け出してくれたという仮面をつけた執事のピーターさんの姿が無い。一体どこに?


「まな……コホン、ピーターさんは今、あのダンジョンの最下層に居ます。アレを止めようと苦心していましたが、どうやら不測の事態が起きたらしく……」

「そ、それなら彼は――」

「……大丈夫、です。あの人はどんな時でも、どんな困難に突き当たっても、必ず笑顔で帰って来るんですから。真理ちゃんの先生さん、どうかこの場をお願いします。私たちは戦う事はできます。だけど、それ以上の事はできません」


 なのでどうかこの混乱を収めてください――とそう言うとスミレ卿はトンと足を踏み鳴らし、魔物たちの中へと身を躍らせて行ってしまった。


 あれ程までの力を持ちながらなんて謙虚な……。グッと手を握りしめ、震える足に力を籠める。こんな若輩者の言葉に何人が耳を傾けてくれるだろうか?それでも私は走り出す。


 あのバカ老人たちが果たして私の言う事を聞いてくれるかはわからない。けれど――どうか目の前のこの惨状を見て答えを渋るような馬鹿でないことを祈るばかり。大丈夫……大丈夫よね?

今日も今日とて遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ