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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第八章:勇者な執事と魔法学園の姉妹の絆。ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!
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34話:ご飯の上に卵を乗せて醤油をかけるだなんて考えた人はノーベル賞モノだと思っちゃうよね?

 公くんはちっこい体をギュルンと回してまるで跳ね回るゴムまりのようにビアス先生へと襲い掛かります。炎を纏ったその姿は正しく自在に飛び回るファイアーボール!変幻自在に高速で動き回る火の玉とか怖すぎます!


「ぬ、むぅ?!」

ちゅちゅー!(こんにゃろー!)


 公くんが頑張ってくれている今のうちにと姉さんの所へと私は金属の階段を駆け下りて行きます。

 傍へ行ったところで何もできないのは分かっています。けれども、それでも私はやっと逢えた姉さんの元へと駆けよらざるを得なかったのです。


「ははは、まさかこんなところに鼠が入りこんでいるとはね。――と言いたいところだが。止まれ」

「ちゅ!?」


 ビアス先生が手をかざした瞬間、公くんの動きがピタリと――止まることなく、その顔面を捕らえました。あ、アレは痛い奴なのです!


「は、ぐぅ!?な、なんだ。何故止まらぬ!貴様は()()()()であるのだぞ!」

ちゅちゅ(残念)ちゅちゅちゅー!(もう違う!)


 公くんの炎が勢いを増しながらビアス先生の腹へと抉りこむようにぶち当たります。


「が、はっ!?」


 勢いのまま、ビアス先生は吹き飛んでしまいました。


ちゅーちゅちゅー(完全勝利ー)!」


 ふんす、と鼻息荒く公くんが胸を張っています。ほぼほぼビアス先生は無抵抗だった気がするのですけど……うん、気にしたら負けなのかもしれません。


「――姉さん」


 そっと、姉さんと一体化してしまった肉の塊に触れます。

 熱を帯びたソレは姉さんの柔らかな肌とは程遠く、最早コレから助け出す手段など無いように思えます。一体、どうすればいいのでしょう?


「どうすることもできんよ」


 ふらふらとしながらもニヒルな笑みを浮かべてビアス先生が階段を降りてきました。公くんが私の前に出て睨みを利かせてくれています。……でも、不思議です。何でこんなに小さな公くんにこれほどまでの力があるのでしょうか?


「実験体四号、それがこの鼠の名称さ。よもや私の手をこうして煩わせてくれる存在になってくれるとは思いもしなかったがね」

「実験体……?」

「ああ、そうさ。魔石適合実験のモルモットという奴だね。赤色魔石の適合実験は中々に苛烈でね。どうすれば適合できるか、その実験の最中、たまたまネズミ捕りにかかっていたこいつが小さい白色魔石を宿している事が分かったんだ。魔物とは魔石に自らの魔力、或いは他者の魔力取り込むことで成長をしていく生物だ。ならば――魔石を取り込むこともできるのではないかと思ったのだよ。実験は成功。偶然、たまたま捕らえることができたソレのおかげで私の実験はまず第一歩を踏み出すことができたのさ」


 それなら、公くんが真人さんに言っていた話は嘘だと言う事になる。じゃあ、公くんは私たちの事を騙して……?


「そう、騙してここたどり着かせることが目的だったのさ。自ら罠にかかりに来てくれるように……ね?」

「何でそんな回りくどい事をしたのです?そんなことしなくっても……」

「けれども、私が四号を送り出さなければ君が今、ここにいるは無かっただろう?そして――ああそうだ。私の書いた推薦状はハーフヴァンパイアである君が学園に入るのに役立っただろう?」


 ――まさか。


「ああそうさ。君がアイリスんを心配して学園に来てくれるのも、私の計算通りという訳さ」

「ちがう、違う!私は、私は自分で!」

「すべては私の計算通り」


 ニヤリ、とビアス先生が下品笑みを浮かべた瞬間でした。


「やっ!?」


 肉塊(姉さん)から伸びた私を覆うほどに大量の触手が私の体を絡めとり、そのまま中へと――


『カトレア!』


 姉さんの声と共に、私を包んでいた触手がバラバラに切り刻まれて――そのまま誰かに抱きかかえられたのです。そう、お姫様だっこ。いつかは素敵な旦那様にしてもらいたいね、と姉さんと夜な夜な語り合った抱きしめ方でした。その、えと、これ以外と恥ずかしいのです!


「うん、ごめんね!ちょっと遅くなっちゃった」


 その人は、ちょっと変わった仮面をつけた真理さんのお兄さん――真人さんでした。すごい人だとお聞きしていましたが、こんなにすごい人だったんですね!


「ふふ、もっと褒めていいよ!最近誰も褒めてくれないしね……。俺結構頑張ってるんだけどなぁ……」

「ああ、兄さんズルイ!私も!私もカトレアちゃんお姫様抱っこしたいー!」

『ね、ねぇねぇ!なんか私の体凄い事になってるんだけど!、ね、ねぇ!』


 落ち込む真人さんから、いつの間にか可愛らしい衣装に着替えた真理さんにはい、と渡されてしまいました。姉さん、本当に自分がこんなことになっていたなんて知ら鳴ったんですね……。


「君は、誰だい?真理君は兎も角として、君をここに招待した覚えは無いのだが?」


 ビアス先生が今まで温厚だった面持ちを捨て、真人さんに憤怒のまなざしを向けて杖を構えます。ど、どうやら相当に怒っているようです。


「なんだ、知らないのかい?」


 そして、悪戯っぽい笑顔を浮かべて真人さんはこう言ったのです。


「通りすがりの勇者って奴さ。覚えておきな!」




「……兄さん、そのセリフ言いたかったんですね」『こんな時まで……』『真人らしいがの』

「うん、決めてるところだからその突っ込みは辛いな!」


 真理さんと真人さんって本当に仲のいい兄妹なんだなって、こんな時なのに思わずほっこりとしてしまったのはここだけの話なのでした。

今日も今日とて遅くなりましt( ˘ω˘)スヤァ

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