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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第八章:勇者な執事と魔法学園の姉妹の絆。ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!
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31話:ミルクティーとロイヤルミルクティーが違うモノだと知っている人って大人な感じがするよね?

 お昼ご飯を食べて、充電完了!

 戦いの資本は食事から。味は……まぁうん、そこそこという感じだったけれど、お金も無いしグッとこらえて腹八文目に抑えておく。

 勇者になって肉体が成長しなくなったとはいえ、お腹にお肉はついてしまうみたいだしね!……せいちょう……ううん、大丈夫、きっと方法はあるし!自分の平坦な部位をじっと眺めていると、カトレアちゃんが不思議そうに首をかしげていた。


 悲しい現実から目をそらしつつ、カトレアちゃんと手をつないでビアス先生のラボへと向かう。朝のうちに書類は職員室でビアス先生から受け取っていて、休み時間のうちに二人で中身を書き上げておいた。


 名前と経歴の他にどうしてラボに入りたいかという小論文までついていたけれど、これでも元の世界ではトップクラスの成績だったのだ。授業を受けつつ考えて、二回目の休憩時間にカトレアちゃんと仕上げてしまった。ふふん、この程度造作もない!とドヤっていたら沙夜から誤字を指摘されて耳まで真っ赤になったのはここだけの話。兄さんに見られてなくてよかった……。見てないよね?と、ラボへ通じる空中の渡り廊下で見回すと、影に兄さんが笑顔で手を振っているのを見つけた。


 どうやってそんなところに(上の階のラボの床下)立っているのか考えたらきっと負けなのだろう。アレで何のチートも貰えなかったと嘆いているのだから意味が分からない。うん、考えるのはやめた!


「おお、いらっしゃい。ようこそ我がラボへ!」


 扉をノックすると笑顔のビアス先生が私たちを出迎えてくれた。

 昨日と変わらずダンディなおじ様という感じで見た目だけは好感が持てる。もてる、のだけど彼がカトレアちゃんのお姉さん――アイリスちゃんを監禁し、プラント成るモノへと改造してしまったのだという。

 人は見かけによらないというけれど、ビアス先生は好感は持てるけれどそこはかとなく怪しげな雰囲気を持っているから、あり得なくもないと思えてしまうのが不思議なところだ。もしかするとそれがビアス先生の魅力という奴のかもしれないけれど。


「うんうん、朝書類を渡しておいたのにここまで書き上げてくるだなんて、どうやら私の目に狂いは無かったみたいだねぇ。ふふん、こいつを教員の皆に見せるのが今から楽しみでならないよ」


 にっこにこと鼻歌交じりに私たちの手渡した書類を綺麗に封筒に入れてしまう。

 あれれ、ビアス先生だけじゃなくて職員室のみんなにみられるのかな!?


「ええ、もちろんです。ラボの研究員になるためにはうちのラボの推薦だけでなく、各教員と学長の承認が必要になりますから、どうぞミルクティーです」

「ありがとうございます、ブラントさん」


 奥からお茶を持ってきてくれたブラントさんによると、ラボの研究活動に熱中し過ぎて学業が疎かになる人物だと先生たちに思われていると中々承認が下りないらしい。特に、本来ラボの研究員に慣れない学年ならば顕著に。でも、それなら正直な話入学して一週間も経ってない私たちが入れるのか疑問だったりする。ええと、大丈夫なんです?カトレアちゃんと共に暖かな紅茶に口を付ける。うん、今日のお茶も中々に美味しい。やっぱりいい茶葉を使ってるんだろうなぁ。


「――もちろん問題ないさ!君たちが優秀だと言う事は私の見立て通りだ。きっと私の研究に役立ってくれるさ。そう――その(からだ)を持ってね?」

「え――」


 かくん、と私の体が揺れ、気が付けば床に崩れ落ちていた。視線だけ動かせば、カトレアちゃんも又動けなくなっているようだった。これは、一体――


「本当に残念だよ。君たちならば私のラボの一員としてとても優秀な人材になり得たのだが――何分今の私は時間が無くてね。多少手荒なことをさせてもらったんだ。本当に済まないと思っている」


 笑顔を崩すことなくビアス先生はカトレアちゃんを片手で抱え上げる。分かってはいたのだけれど、躊躇なくこんな事をするだなんて!


「これもすべては人類の為、世界の為――」

「何をおっしゃられているんですか、ご自分の名誉の為でしょう?」

「ふふ、そうとも言うかな?」


 ブラントさんの軽口にビアス先生は肩を竦めて見せる。恐らくカトレアちゃんをのお姉さんであるアイリスちゃんを嵌める前からこの二人はグルだったのだろう。


「さて、私はコレを早速プラントにしてくるよ。赤色魔石の残りを使えば十二分に国王のお眼鏡にかなうものが仕上がるだろうさ。その子は――ふふ、君の好きにして構わないよ」

「ありがとうございます。ちょうど勇者を実験体に使いたいと思っていたところだったのですよ」


 ブラントさんは動けない私を下卑た目で一瞥し、本棚と本棚の間を割開く。ここの位置からは見えにくいけれど、どうやら隠し階段のようだった。


「それじゃあソレを片付けたら、後で手伝いに来てくれたまえ」

「承知いたしました」


 ひらひらと手を振るビアス先生が階段を下りて行くのが見える。まだ、まだ動けない。


「ふむ、バラバラに刻んでしまうのも赴きがありますが――勇者の苗床の実証実験に使うとしましょうか。女性らしい起伏は乏しいですが、魔物たちにはきっと関係は無いでしょうしね」


 何て失礼なことを言うんだろうか、この人は!思わず飛び掛かりそうになったけれど、まだ、まだ動けない。


 ギィと音を鳴らしてブラントさんは本棚の入り口を閉じ手近にあった縄を持って、こちらへと歩み寄る。


「ですが、多少は味見をしても構わないでしょう。顔立ちは整っていますし、いい声で鳴いてくれそうですし……ね?」


 舌なめずりをして彼の手が私の顔へと触れようとした、その瞬間――私の渾身の右ストレートがブラントさんの顔面へと突き刺さった。


「げふぁ!な、なにが!>」


 ドンガラガッシャンと音を立てて床へ転がったブラントさんが驚きの声を上げる。


「まったく、こっちが何も言えないと思って好き勝手に言ってくれましたね?誰が起伏が乏しいですって!成長期ですから!これからなんですから!」

「勇者が成長するわけないじゃないかこのアバズレが!」


 プツリ、そう何かが切れる音がした。もちろん心の音だけど!そんなことは百も承知なんですぅううう!


「ヒルコ様、お力をお貸しください!」

『ハイハイ、気合入れていくぞい!』


 ポンと、出現したヒルコ様から閃光が解き放たれ――私はこの世界の神様から受け取ったその力を展開させる。


 一瞬で来ていた服がはじけ飛び、目にもとまらぬスピードで手に、足に、体にとその衣装が形成されていく。


――頭には金色の小さなティアラ。フリルがふんだんにあしらわれた巫女服と白いスクミズを合体させたような装いは、思っていた以上に可愛い。うん、着てる私はとっても恥ずかしいのだけど!


「デュミナスフォーチュナー……。ねぇ、ヒルコ様?口上ってこれだけでいいんじゃないの?」

『いやいや、そこはきちんと言わぬとだめじゃぞ!』


 そうは言われても、ブラントさんも呆れ顔である。うん、やっぱり恥ずかしいな!

今日も今日とて遅くなりましt( ˘ω˘)スヤァ

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