29話:女心と秋の空というけれど男心も以外と変わりやすいモノだよね?
早速ダンジョンへ再アタックだ!と意気込んでビオラちゃんとシレーネさんと合流して、ライガーを合わせて四人でダンジョン前へ行くと。人だかりができていた。
「ええと、どうしたんですか?」
「ああ、何でも最下層のダンジョンマスター(仮)が倒されたから、復活するまで二日間はダンジョンアタックが禁止なんだと。まったく、いつもなら三階層までは潜らせてくれるのに……」
剣士のお兄さんがヤレヤレと肩を竦める。
言われてダンジョンの入り口を見てみると物理的にも魔術的にも厳重に入り口が塞がれ、中に入ることができなくなっていた。ガーンだな、出鼻をくじかれた……。
「いや、どうするんだこれ。あの子を助けるにはダンジョンの最下層に行くしか無いんだろ?」
「ううん、その通りなんだけど……」
なんだけれども潜れない。どうしたものかと頭を捻っていると頭の上のモフモフモードなフレアのさらに上に乗っていた公くんが何かを思い出したかのようにくるりんぱと俺の手のひらへと降りてきて、チューチューと身振り手振りで何かをアピールしてる。うん、ごめん。俺じゃわかんないからフレア、通訳お願いできるかな?
『塔の中、ダンジョンに降りる、秘密の入り口、ある……?』
よくわかんないけどそんなこと言ってるよ、とフレアがポムポムと俺の頭を優しくたたく。
秘密の入り口……。恐らくは従業員用の勝手口的なものなのかもしれない。
このダンジョンは人口のダンジョン。しかも、魔法学園の賢者たちによって作られたモノ。なるほど、確かに秘密の入り口なるものがあって然るべきだろう。うん、最下層の調整やら掃除やらに行くのにわざわざ一階ずつ降りて行かないよね!ズルイな!
「だけどその入り口に行く方法って私たちも行けるんでしょうか……」
ビオラちゃんが心配そうに小首をかしげる。
……うん、そこの所どうなのかな?ジッと手のひらの公くんを見ると何だか複雑そうな顔をしていた。なるほど、どうやら秘密の入り口まで行く道はわかったけれど、そこまでの道のりは公くんサイズで俺らが通るのはどうやら難しそうだった。
けれど、あることはわかったわけだ。後はそこへどうやっていけばいいかが分かればいい。
「ともあれ一旦ホテルに戻りましょう。今日はここから入ることはできなさそうですから」
「だね。一旦戻って作戦会議だ」
そういう訳ですたこらサッサと昼下がりに何の収穫も無く部屋へと戻って来たのだった。
「なるほど、それで昨日ならダンジョンに挑んでいた時間に部屋にいる訳なのね」
「そういう訳だ妹よ。うん、そっちは何か収穫はあったかい?」
先にカトレアちゃんと部屋に入ってくつろいでいた真理に問いかけるも苦笑いを浮かべて、首を振られてしまった。まぁ、普通に授業を受けていただけだろうし、そりゃそうだよね!
「んで、秘密の入り口についてアイリスちゃんは知っているの?」
『そもそも、ダンジョンに行った事が入学して数回しかありませんし、お恥ずかしながら、一階層しか……』
ガックリと項垂れて、アイリスちゃんが大きくため息を付く。ダンジョン外でのフィールドワークが主なラボであるビアスラボに所属していたせいで、ダンジョンアタック自体が少なかったらしい。ううん、アイリスちゃんならと思ったんだけどなぁ……。
「一番わかりやすいのは件のビアス先生の後をつけて行くことだろうけど、そっちはどうなんだい?」
「んー……動きは無し。ラボから出て来やしないよ。アルフレッドさんの方も同じくだね」
どうやら二人とも今日は動かないのかもしれない。うん、ラボにはさっき男性の生徒さんが入っていた。彼が昨日の話に聞いたブラントさんなのだろう。
「……少し、気になったのですが。どうして、ビアス先生は私たちに声をかけたのでしょうか?」
少し暗い顔で、カトレアちゃんが俺をじっと見つめる。
「どうして、って青田買いだったんじゃないのかい?」
「思い出したのです。ビアス先生、私が名乗る前に……私の名前を言っていたのです。私がアイリスお姉ちゃんの妹だってことも知っていました」
この時点でどうしてカトレアちゃんをラボへ招いたのか想像がついてしまう。だから、確認のために少し、酷な質問を投げかける。
「……カトレアちゃんはその理由はもう分かっているのかい?」
「はい。きっと、お姉ちゃんと同じようにしようとビアス先生は思っていたのかと」
「っ!それって!」
アイリスちゃんは鴨が葱を背負って来多様な状態だったわけだ。ヴァンパイアと人間のハーフであり。カトレアちゃんとは違って父親のヴァンのおっちゃんの血を濃く受け継いでいるため、その身に魔石を宿している。
「あの数分でそこまで分かったかまではわからないけど、アイリスちゃんが喉から手が出るほどに欲しいのは間違いないだろうね」
何せ、出資者であるアルフレッドさんに納期を迫られていたのだから。
「つまり、私がおとりになれば姉さんの場所へ連れて行かれる可能性が高いと思うのです」
「まって、アイリスちゃん。それは危険すぎるよ!」
確かに危険過ぎる。というか、そんな無理無茶は流石にさせられない。
「だけど、これしか方法が無いなら――私、がんばるのです!」
フンスフンスと鼻息荒くアイリスちゃんはそう言い切った。
ならば、その気持ちは汲んでやらねばなるまい。
大事な家族が奪われたのだ。今の俺にはその気持ちが痛いほどわかるのだから。
今日も今日とて遅くなりましt( ˘ω˘)スヤァ
誤字報告ありがとうございます。とってもとっても助かっておりますOTL