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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第八章:勇者な執事と魔法学園の姉妹の絆。ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!
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28話:学生の頃に学校の先生につけたあだ名って割と知られたらヤバイモノが多い気がするよね?

 手の中で落ち込む公くんを優しく撫でながら五階ほどあったラボから、飛び降りてくるんくるんと身を翻して着地する。ヒーロー着地はひざを痛めるけど格好いいからついやっちゃうんだよね!痛いけど!


 影に身を潜め、昼休みに入ったのか人が増えてきた校内をするりと抜けてホテルへと戻る。


「おかえりなさいませ真人様」


 スイートな部屋に入るとシレーネさんが深々と頭を下げてくれた。うん、ただいま?分身の俺もホテルの部屋にいるからただいまって感じはしないけど!


「おかえりだ真人。公くん、どうした元気ないぞ?」

「きゅう~!」


 心配そうにのぞき込む久々な人型モードのフレアに公くんが飛びつき、そのままゆったりと空いたかなり小柄なのに豊満なお山へと潜り込んでいった。な、なんてうらやまけしからんことを!


「む、くすぐったいぞ?……なに、アイリスが実験材料にされていて魔物ですらないナニカにされてるかもしれない?」


 きゅう、と涙目でお山から覗かせた小さな頭をフレアに撫でられている。何だろう。ほのぼのとしている場面なのにすごく、こう煽情的と言うか……。く、静まれ、俺のザンバットソード!他の分身にも連動しそうだから踏ん張りどころだぞぅ!


「真人さん、どうなさるんです?」


 優雅に椅子に座って紅茶を飲むビオラちゃん。ううん、普段のメイド服姿も可愛いけど、お嬢様然とした今の姿もすごく様になっていて可愛い。


「もう、真人さんったら……」


 と、テレテレとするとさらにかわいい!ふふ、俺の嫁さんはどうしてこう可愛いのか――本体の俺が足を思い切り踏まれた。踏んだのライガーだよ!痛いな!?


「まずはあの先生さんとラボの生徒の兄ちゃんの監視かな。犯人が彼らならあそこ以外にも研究室がある筈だし、そこに行くところを抑えられたらいいんだけど……」


 すでに分身を増やして監視を増やし、ついでにラボから出てきたアルフレッドさんにも監視を付けている。でもこの兄さん外面は普通だしこのまま帰るつもりっぽい?うん、塔から出て来ちゃったよ!


「アイリスさんは何と仰られているのですか?」

「魔物の生態と観察、データの収集をさせられていたみたいだけど、他のラボなんて知らないみたいなんだよね」


 正直な話、アイリスちゃんは何も知れなかったんじゃないかなと思う。

 ビアス先生がプラントなるものを作っていたことを知っているかと聞いたけれど答えはノーだった。そもそもな話、ビアス先生のラボは魔物の生態研究が主であり魔物の畜産化が目的だったのだという。ならば、プラントという言葉は辻褄が合わない。そう、畜産ならばファーム(農場)とでも言うべきところをプラント(生産設備)と言ったのだ。


「なるほど、アイツらは魔物を牧畜ではなく戦奴にするつもりな訳だ」

「しかし、そんなことできるわけがありません。そもそも、魔物は――」

「魔王ならば、いや、或いはダンジョンマスターならば魔物を使役できる」


 そう、そのプラントとやらの頂点が魔王やダンジョンマスターであれば、その頂点を制御できたならばそれも可能だろう。


「そんなこと、可能なんですか?」

「できているんだろう。ビアス先生は魔物の統制が取れていると言っていた」


 けれども、不可思議な事がいくつもある。


 恐らく、プラントの素体は彼女――アイリスちゃんで間違いないだろう。彼の言っていた魂と魔石が馴染んでいない理由もそれで説明がつく。なにせ、彼女の魂は今肉体から飛び出てしまっている。詳しくはわからないが、何らかの拒絶反応のようなモノがおこり、彼女の魂は肉体からはじき出されてしまったのだろう。

 しかし、魔物をどうやって生み出しているのかがわからない。記憶領域からの抽出、つまり記憶から魔物を作り出しているのだというのだ。そんなこと、どうやって――


「母様から聞いたことがある。魔石を喰らい、成長した魔王の中には自分の魔力を素材にして配下の魔物を生み出すことができるって。でも、それじゃあ効率?が悪いから苗床なんかを使うらしい」


 そう言うフレアは胸元でまだぐずっているコウくんの頭を優しくナデナデしている。


 なるほど、つまり魔王や強力な魔物が他種族を苗床にして自分の配下の魔物を生み出すことができるのは無意識のうちに魔物である記憶を植え付けているからなのだろう。


 そういえば、前に戦った名前も忘れた魔王もそんなことをしていた。恐ろしく非効率で趣味でやっていたようにしか見えなかったけどね!


「……ねぇ、シレーネさん。ここのダンジョンって人工だったよね?」

「はい、今から数十年前に討伐された魔王の赤色魔石を大地からくみ上げた魔力を使いダンジョンを形成していると」


 大地からくみ上げた魔力を苗床代わりにして魔石に宿る記憶を使って魔物を生み出していたのだろう。それを、プラントを使ってさらに効率的に魔物を生み出し、更にはその魔物たちを人間の配下にしてしまおうというのだ。


「あー……うん、これってさ、普通にやばい、やばくないかな?」

「しかし、ダンジョンで生み出した魔物はダンジョン内でしか生存は……」

「受肉してしまえば関係ないんだろう?」


 もし、今のダンジョンは既にプラントのダンジョンマスターにすり替えられているとするならば、今魔物たちは冒険者たちや動物たちの肉を喰らい、落とし物を喰らい、仲間すらも喰らい、その体を確固たるものにしていっていると考えられる。





『だけど、ビアス先生はきっとそれだけじゃ満足はされないと思います』


 アイリスちゃんの部屋。震える声で彼女は本棚のビアス先生の論文を指さす。


『昔、ここにダンジョンを生み出した賢者の一人だったビアス先生の書かれた論文です。その中にこう書かれているんです』


――人工ダンジョンマスターよる大地契約の手法と簡略化による拠点制圧の考察について。


 それは、人工ダンジョンマスターの兵器利用の考察が記された論文であった。うん、どう見ても机上の空論だよこれ!


 けれども、もしこんなものが生み出されたならば――魔王ですらない人間が死を恐れぬ魔物の軍勢を従えることになる。それをただの一国が持ってしまえば、危うい均衡に保たれているこの世界が瞬く間に戦乱の狂気に飲み込まれかねない。


「同族である人間や獣人を使って、か。ボクは人間の方がよっぽど魔物たちより怖い気がするよ」


 論文を読むライガーの表情は暗い。そりゃあそうだ。実験動物として自分たちの種族も使われた記録が残っていたのだ。決して気分がいいものではあるまい。


「プラントと大地と契約させられている場所にアイリスちゃんの体がある訳だ」


 想像はつく。というか、これほど簡単かつシンプルな答えも無い。


 彼女の体は今、俺たちが出会った場所――ダンジョンの最下層にある。


 ううん、あそこまでもう一度潜らなければならないわけか……。大変だな!

今日も今日とて遅くなりましt( ˘ω˘)スヤァ

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