18話:その昔に親に怪しい人について行っちゃ駄目といわれたモノだけど怪しい人って大雑把すぎてわかりにくいよね?
この世界に来たばかりの勇者にお勧めだとギルドのお姉さんに言われただけあって、初日の授業からこの世界についての基礎的な事から初等部は教えてくれる。けれど、ここにきて重大で重要な問題にぶち当たってしまう。
――そう、文字が読めない!
一生懸命に言われたことをノートに書き写してはいるけれど、授業はこっちの世界の字が読み書きできる前提で進んでいく。うううん!授業の内容は面白いし興味深いけれど、書いてあることが全然わかんない!頭をフルに回転させて意味合いを読み取って汲み取って何とかノートを作り上げていく。それでもやっぱりわかんないよう!助けてヒルえもん!!
『そんなことを言うても私は学問の神ではないからのう。分からんものはわからん』
小さな肩を竦めてヒルコ様はそう言って助けてくれない。というか興味もないようだ。ぐ、ぐぬぬ、こういうのって異世界に来た時点で分かるようになってるものじゃないの!?どうなってるのよぅ!
『真理様はこちらの世界に来られた経路が通常のユウシャの皆さんと違うせいでこういったことが起きているのかもしれませんね』
なりほど、それは確かに考えられる。今になって思えば兄さんはさらさらとこちらの世界の文字を呼んでいたように思える。うん、もしかするとそうなのかな……。うう、異世界でも勉強からは逃げられない!まぁ、嫌いじゃ無いんだけどね。
「えと、もしかして書いてあることが読めないのです?」
助け舟を出してくれたのは隣に座って綺麗にノートを纏めているカトレアちゃんだった。文字が読めなくてもわかる。これは……できる子のノートの書き方だ!
「ごめんカトレアちゃん後で教えてくれる?」
「はい、もちろん大丈夫なのです。それじゃあ夜、部屋でノートに書いたことを口頭で説明するのです。その後で、この世界の文字も教えるのですよ」
な、なんていい子なのだろうか!分かっていたけど、いい子過ぎる!
「もちろん是非にお願い――って、部屋で?」
この学園は全寮制になっていて、部屋といえば寮の部屋になっている。そういえば部屋がどこになるかはまだ聞いていなかったような?
「はい、後ほど寮の鍵をもらえるそうです。二人一組がきまりのようですので、その、えと、よ、よかったら、私と同じ部屋に……なってもらいたいのですが……」
だめです?と上目遣いで可愛く言われてしまった。
こんなの!断れるわけが!無いじゃあないの!
「もちろんOKよ。うん、夜更かししない程度に一緒にお勉強しましょうね!」
「はいなのです!」
にっこり満面の笑みでカトレアちゃんが嬉しそうにそう答えてくれる。ああ、可愛い……。
『真理は何と言うか、本当に真人の妹だのう……』
『ええ、とてもそっくりですね』
後ろの方で二人のジトな視線を感じる。ふふ、そうかな?そうかもね?とごまかしておくことにする。兄さんに似てると言われることは嫌な事じゃないしね!……時と場合によるけれど。
「はいそこ、静かにする!うう、声を張るとまだ体が……」
蛇のお腹から出てきたばかりだというのに、先生は無茶しすぎだと思う。というか、あれが普通なのかな?だとしたらこれからの学園生活がすこぶるに不安だぞぅ!……怖いなぁ。
授業は昼過ぎには終わる。
そこからは自由時間で、基本的に勇者の人たちはパーティを組んで学園内にあるダンジョンへもぐるのがセオリーになっているらしい。
というよりも、そうしなければ生活ができない上に学費も満足に払う事ができないのである。まぁ、初日だし、早速ダンジョンアタックは今日は遠慮させてもらうとする。
兄さんが様子見で潜るって言ってたし、中の事を聞いてからでも遅くは無いと思うしね!
「それにしても授業の進みが半端なく早い……早くない?」
「基本的に勇者以外の生徒は基礎……つまり、精霊や魔法、魔物に関して、ある程度知識がある人が集まっているのです。ですので、勇者の皆さんに合わせるのは最初のうちだけで、そこからは予習をしていかないとついて行けなくなる、と姉さんが言っていたのですよ」
なるほど、私の元の世界の学校と同じく予習をかなり進めてから授業に臨まないとまともに理解ができないようになっているらしい。うん、普通の人ってついてこられるのかなこれ?
「だからこそ、そのある程度まで学んだ勇者の大半が離脱して勇者業に専念し始めるって訳さ新人さん?」
「貴方は――」
そう話しかけてきたのは眼鏡をかけた怪しい白髪ヒゲ面の何だかダンディなおじさんだった。ブラウン系のスーツを着ており見た目は教師然としているけれどもなんだか怪しさ抜群で、できればお近づきになりたくない。うん、カトレアちゃんとのランチタイム中なのでお邪魔ですよ?
「おおっと、ナンパじゃないから勘違いをしないでおくれ。ただ――そちらのお嬢さんの顔が見た顔に似てたからね。もしかしてと思って声をかけさせてもらったわけさ」
「ふぇ?姉さんの事、しってるんです」
「ああもちろん何せ――彼女、アイリス君は僕のラボに所属していた生徒だったのだからね」
柔和な笑みを浮かべて、ダンディなおじさんはそう言ったのだった。うん、やっぱり何だか怪しい人だよ!
今日も今日とて遅くなりましt( ˘ω˘)スヤァ