17話:洞窟ってどんなに小さいモノでも人工的でも何だか神秘的な雰囲気があるよね?
魔法学園は基本的には四年生の学園である。学園と言っても魔法以外の事に関しては殆ど教える事は無い。冒険者として活動するための基礎知識や鍛錬なんかはカリキュラムに組み込まれてはいるが、文字の書き方や読み方、基礎となる数字の計算に関しては自分で時間を見つけて学ばなければならないらしい。行ってしまえば、すでに普遍的な教育を受けて入る大学的な立ち位置なのだ。うん、これ学園に入っても卒業できない子出てくるんじゃないかな!
「それでもかまわないというのがこの学園の方針のようですね。その分学費はもらえる訳ですから。尤もラボに入らずに在籍できるのは八年だそうですけれど」
学園の塔の横に併設されている冒険者ギルド。今日はそこで情報収集だ。うん、流石に何も知らなさすぎるからね!……とはいえ、シレーネさんの持っている学園の手引きと言う名のパンフレットで大体事足りそうだけれども。
「それでラボって?」
「元の世界でいう大学院のようですね。賢者の方々の下で魔法や魔術、精霊や魔物に関する研究を行っているようです。その成果によって賢者を目指す方々や、様々な王国の宮廷魔術師となるための足掛かりにしているみたいですね」
「つまり、魔術師として大成するにはそのラボってのに入らなければならないわけだ」
そして、ラボに入るにも面接やら能力の試験やらがあって学園の三年を無事に修了したとしても参加できないことが少なく無いらしく、入るだけでもかなりのステータスになるのだそうだ。
「そして、大賢者とよばれる人物は世界を変えるレベルの偉業を成し遂げた者にだけ授けられる称号なのだそうです。先日お逢いした田中様も無詠唱で魔力がない人でも魔法を使うことができるスクロールの開発……その中でも魔術回路の開発に成功をしたため大賢者として名を馳せているのだそうです」
ちなみにシルヴィアの故郷にいる大賢者――菜乃花さんは体に刻む魔紋を人間が使えるようにしたという偉業を成し遂げている。つまるところこの二人は今の魔法技術の基礎を築いていると言ってもいいだろう。……きっと年齢に関して考えたらものすっごく怒られるのでここでは割愛としておこう。うん、菜乃花さんに知れたら恐ろしいことになりそうだしね!
「カトレアちゃんのお姉さん――ヘレナ・A・ロムネヤスカさんはまだ三年に上がったばかりなのにすでにラボに所属しているとか超有望株だったらしいよね。そんな子が行方不明になっているんだからもっと色々と調べられててもいいものだけれど……」
それについての学園側の回答はたった一文。
――ダンジョン探索中の失踪にて捜索不能。
俺がさっくりと調べたところによると最近行方不明になっている子たちはみなダンジョン探索中に居なくなったことにされていた。実際には全員が深夜の間に部屋からいなくなっていたにもかかわらず、である。
「そしてほとんどの生徒がラボに加入、或いはその手伝いをしていた優秀な生徒ばかりみたい何だよね。うん、何かありそうな気がするんだけどこれ以上はもっと詳しく調べてみないとなんともわかんないかな」
「ううん、ダンジョン探索でいなくなったっていう根拠はあったりするのか?とりあえずダンジョンのせいにしているだけじゃないとは思うんだが」
ライガーは顎に手を当ててうーんと考え込んでいる。
この事件の肝はその全ての生徒がダンジョン前に設置してあるダンジョンアタック帳成るモノに記帳されていたのだ。それを根拠として学園側は今出ている行方不明者は何かしらの理由で深夜にダンジョンに潜り、行方不明となった――としている。
「ダンジョンアタック帳はギルドカード、或いは学生証をかざすと記されるモノになっている魔道具になっているみたいですね。ですので、確実に彼らはダンジョンに入ったものと考えられます」
「たった一人で何の武器も無く寝巻のままで、か。なんだかエクストリーム自殺というか、とりあえずメンドイから捜索不能の認定をした雰囲気を感じざるを得ないんだよ」
深く深ーくため息を付く。どちらにせよ、学園は今回の行方不明事件をこれ以上詳しく調べるつもりは無いらしい。何かしらの理由がありそうな気がするけれど、これ以上は学園内部から調べないと分からないだろう。
「内部の進展は君の妹さんとカトレアちゃんが調べるんだろう?」
「まぁ俺の分身がこっそりと付いて行ってるけどね」
ヒルコ様と沙夜にはバレてるがそれはそれで構わない。うん、妹の成長を見守るいい機会だしね!
「……そんなことしていると嫌われるぞ?」
「そ、そうなのか?うん、妹とあんまり傍にいれなかったから距離感が微妙に測り辛いんだよね……」
過保護過ぎずに安全は見守らなければならないという何とも難しいミッションである。うん、インポッシブルな任務じゃあないよネ?
「ただいま戻りました。ダンジョンに入る入場章を頂けましたので、これで一定期間は潜ることができます」
ビオラちゃんが持ってきてくれたのは小さなバッチ。これがあればダンジョンに自由に出入りができるようになるらしい。もちろん入る前にはダンジョンアタック帳に記帳しなければならないのだけれど!
「それじゃあ俺たちはまずはダンジョンアタックをしてみるとしますか!」
「だけど、こんな装備で大丈夫なのか?ボクとお前は執事服だし、シレーネさんはメイド服、スミレ様に至ってはドレスみたいな装備だけど……」
確かに見た目は普通の服。けれども俺たちが来ているのはクレオさんの糸で編まれた服なのだ。正直、そんじょそこらの防具程度では足元にも及ばないレベルで頑丈だったりするのだ。
「まぁ、俺は大体戦いの時はこれ着て戦ってきたんだし問題ないさー!」
「……おまえ、前短パンTシャツで戦ってなかったっけ?」
「さぁ!レッツダンジョンアタックだー!」
「聞けよコラ!」
ライガーの突っ込みを華麗に躱してギルドの外へと出る。天候は快晴。まさしく、ダンジョンアタック日和だ!
「……ダンジョンは洞窟だから天気は関係ないよな?」
「その通りだけどね!」
要は気分だからいいのである。うん、何だかやっと異世界に来たって感じがする!……フシギダナ?
今日も今日とて遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ
誤字報告助かってます……OTL