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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第八章:勇者な執事と魔法学園の姉妹の絆。ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!
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10話:普段からやり慣れていない事ってどんなことでも加減がよくわからなかったりするよね?

 翌日、スィーティーなルームに泊まった三人を部屋に残したまま、俺は再び冒険者ギルドへとやって来たのだった。

 ギルドでは昨日までに申請されたクエストが翌朝に張り出されるようになっており、冒険者たちは割のいいクエストを探すためにギルドの開く朝から長蛇の列を作る。

 俺もひっそりと列に並んで掲示板に張り出されたクエストをざっと見まわしてみる。……碌なクエストが無いな!


「これでもマシな方さ。報酬が高いクエスト程危険も伴う。そういうのは勇者の連中じゃないとこなせない物ばかりでな、俺らには手が出せない事も多いんだ」


 そういうのはここの町のベテラン冒険者だというおっちゃん。

 言われてみれば死に戻り前提クエストとかどう考えても勇者を指名しているようなクエストだ。正直、持ち帰る素材に対してそんなはした金で命を懸けるの?という微々たる報酬なのだけれど、一介の冒険者には魅力的な金額らしい。うん、中抜き半端なくないかな!?


 だからこそ、現地調達ができるクエストが人気が出る。その分がっぽり丸儲けって訳だしね!


「まぁ、そう言うクエストも俺たちの出番何て中々ないんだがな。俺らがやるのは村回りの害獣に魔獣駆除やら野盗の討伐に要人の護衛が関の山さ」

「あら、護衛の任務ですか?」


 可愛らしい女性の声に振り向くと昨日の受付のお姉さんがそこにいた。何かいいクエストでもあるのかな?


「実は今ちょうどギルドからクエストを出そうとしていたところなんです。人数は五人、魔法学園へ学びに行かれる皆さんの護衛を探していたところなんです」


 それはまた運がいい。魔法学園へ行くクエストとはまさに渡りに船じゃあないか!と身を乗り出したらおっちゃんに止められてしまった。うん、何故に?


「待て待て、魔法学園に行く奴らに勇者が混じってるんじゃねーのか?それならそいつに護衛をさせりゃいいじゃねーか」


 おっちゃんが呆れ顔でお姉さんの方を睨む。確かにそうだ。勇者がその中にいるのなら報酬ももらえてラッキーとばかりに自分でクエストを受けそうなものである。


「その、実は一緒に行かれるはずだった勇者の子がお世話になるのは申し訳ないって一人で行ってしまいまして……」

「申し訳ないって、また変な気の使い方をする勇者だなぁ」


 それはまたうちの世界の人間らしいというかなんというか……。恐らく、他人と接するのが面倒くさくなって先に行ってしまったのだろう。


「それならこのクエストは私が受けても構わないと言う事ですね?」

「え、ええ魔法学園まではそこまで危険な魔物が出ると言う情報はありませんし、ランクD以上であれば問題ありません」


 それならば受けてしまって問題無いだろう。ついていくだけでお金ももらえて目的地にもつく。これは正しく一石二鳥と言ってもいいだろう。


「いやいやまてまて、こいつ……昨日冒険者になったっていう貴族の御付きだろう?こいつで本当に大丈夫なのか?」


 おっちゃんが心配そうになるのは間違っていないだろう。なにせ、はたから見ればCランク冒険者プレートをお金で買ったようにしか見えないしね!……まぁ、そう勘違いしてもらうようにしたのは俺だけども。


「実力がランクにそぐわない……そう言いたいんですか?」

「そぐわないかどうかが分からないって言ってるんだ。あの街道は確かに危険な魔獣は少ない。だが……初心者に狩れるほど甘いもんじゃあねぇ」


 ……このおっちゃんいい人だ!見た目がいかついおっちゃんだけど、いい人だよ!恐らくは昨日どうやって俺が冒険者になったのかを誰か――恐らくは目を背けている受付のお姉さんから聞いているのであろう。まぁ、確かにそれだけを聞けば実力があるかどうかなんてわかる訳ないしね!


「ご納得いただけないかもしれません。しかし、私はこれでも相応の実力を持っていると自負しております。よろしければ――その一端をお見せいたしますが……」

「へぇ、面白れぇ。それじゃあ俺の一撃を見切って見せな――!」


 瞬間、おっちゃんの雄叫びと共に鞘付きのロングソードが弧を描いて襲い来る。――躱すまでもない。が、実力を見せると言ったからには少しは本気を出す必要があるだろう。


 一閃。おっさんの剣の腹を殴って瞬時に弾き飛ばし、ガイン!という金属音と共に木造の壁に叩きつけて差し上げた。

 やろうと思えばいくらでもできるが、Cランクであればこの程度で十分過ぎるだろう。


「お前さん……何者だい?」

「ただの執事ですよ……」


 そう言って肩をすくませておく。ふ……これで俺の実力をある程度は認めて――


「いや、只の執事がAランクの俺の一撃を躱すでなく弾き飛ばすだと?いや、信じられん。只者じゃあねぇな、お前さん」


 あれれ?おかしいぞ。これくらい普通じゃないの?え、違う?勇者でもこんな奴いない?


 言われてふと思い出す。そういえばチートを持っているうちにいた勇者の子のランクはどの程度だったのだろうか?夏凛ちゃんと林檎ちゃん、苺ちゃんは実力だけで言えばかなり上位だろう。もちろんチートもあってのことだけれど、そう考えるとCからBくらいはあってしかるべきだろう。


 そうなると、あの3人でもできなさそうなことをやってしまった時点で答えは明白なのである。うん、やりすぎたなこれ!


「……じ、実は、その、記憶を!そう、記憶喪失でして!」


 背中に汗をだらだらと流しながら俺は何とかその場を取り繕い、魔法学園行きのクエストを受注して逃げるようにその場を立ち去ったのだった。あ、危なかったな!

いつもよりさらに遅れに遅れて大変申し訳ございませんでしt( ˘ω˘)スヤァ

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