7話:マヨネーズって色んなところで使える万能調味料だけど食べ過ぎでお腹のお肉がヤバいよね?
翌日、みんなが起きてきたところで奥さんのマユさんのお手伝いをしてみんなに豪華な朝食をふるまう。
「むむww朝からベーコンとは豪勢でござるなww」
「真人さんがお世話になっているお礼にって保存食を分けてくださったんです」
ベーコンと朝採れ卵とボイルしたお野菜をテーブルへと運ぶと、どっかりと座ったヒゲ面の田中がいた。朝飯くらい手伝えよう!
「ふふ、いいんです。祐くんにはいつも助けていただいていますし、何より家の為私の為、引いてはこの村のみんなの為にいつも頑張ってくれているんです。だから、このくらいしないと罰があたってしまいます」
――なんてできた奥さんなのだろう。旦那である田中を立てつつ自分は一歩引いてこんなにも尽くしてくれるだなんて。
「ああ、マジ尊い。うちの嫁さんマジ尊い」
「うん、もぎれて死ねばいいと思うよ」
「んんwwwひどいでござるwwwと言うか、真人殿こそもwwwげwwwろwww」
もげろと言われてもまだ未使用品だからもがれてしまうととっても困る!うん、流石にDTのままもがれるのは悲しすぎるかなって!
「それは兎も角、これからどうするつもりなんだい?」
「魔法学園の招待状も貰ったし、まずは山を下りた先の町で冒険者登録かな。俺は指名手配されてるだろうし、偽名でだけども」
「……その仮面の呪い、でござるか」
そう、俺は今仮面をつけている。以前、ロベリアちゃんからもらった仮面を少し改造したモノになっていて、口部分だけ出たマスクのようになっている。
「まぁね。認識阻害にステータス表記の改ざんもできるようになっているらしい。うん、調整したの俺じゃないから詳しくはわからないんだけどね!」
正直、俺に向けての呪いは全く効かないので上手くいくかは不安だったのだけれども、大魔王直属の四天王であるクリュメノスさんがやってくれたのだから、外に向けての効果は期待してもいいだろう。
「他の子は問題ないのかい?」
「シレーネさんは冒険者登録しているし、ライガーは俺の奴隷っだしそっちは問題ないかな。ビオラちゃんは自らも戦いながら国の再興を図るお姫様ってのは事実っちゃ事実だし、うん。もーまんたいもーまんたい」
ユウシャの子供が冒険者として立身出世することはこの世界ではままあることらしい。だから、そのうちの一人だと考えてもらえるだろうし、金さえ積めば冒険者登録は問題無いだろう。
「正直、魔法学園のことも心配はしていないんだ。懸念材料は――」
「勇者教の動向とアラガミ……か」
勇者教は最近なぜか魔王達の国への侵攻を全て取りやめ、冒険者となったユウシャ達の小さな小競り合いしか起きていないらしい。
「何か大きなことを仕掛けるために準備をしているのか、それとも……」
「すでに事が起きているか、でござるね。まぁそれは冒険者の宿の方が情報を集められると思うでござるよ」
まぁ確かにこんな辺境に住んでいる田中が情報を持っている訳もない。町へ下った時に色々と聞き込みをしておくとしよう。
「アラガミの連中はまず間違いなく君が真人だと知れば襲い掛かって来るでござる。何せ、この世界を護る本物の勇者。世界の破滅を願う彼らにとっては目の上のたんこぶもいいところでござるから」
目下の敵はこいつらだろう。まったくもってはた迷惑な奴らだよ!
「みなさん、お待たせいたしました。パンが焼きあがりましたよ」
「おお!待っていたでござる!さぁ、皆さん食べてくだされ!うちの村特産のはちみつとバターをたっぷりつけて!あと拙者が開発した最!新!のマヨネーズを!」
「マヨネーズ!」
やはり、転生者の誰しもが考える事なのであろう。うん、これマヨネーズと言うよりもタルタルソースだけどね!いやうん、美味しいけども!
「んふふ、保存の魔方陣を描いた小瓶にいれたらこれがもう奥様方にバカ売れでwwwうはwww村がwww潤うwww」
だからこそ、こんな辺境の町に住んでいながらヴォルガイアまで新婚旅行へ行けるほどの資金を持っていたのだそうだ。く、そつがないな!
食事を終え、荷物を改めて整える。現在は来る時と違って荷馬車を連結し、馬たちを並べて繋げている。俺の運転テクニックがすごすぎて後ろを走っていたライガーを置いて行ってしまう事が原因である。ふふ、できる男はつらいね!
「違うからな?お前が飛ばし過ぎて馬がすぐにバテちまうからこうしたんだからな?」
「あーあー聞こえないー!」
同じ御者台に乗り込んだライガーの視線が痛い。自分ではそうでもないと思ってはいたのだけれど、一刻も早くサクラちゃんを助け出したいという焦りが馬車の操作にまで影響してしまっていたらしい。感情に流されるだなんて、俺もまだまだ未熟者だと言う事だ。
「それじゃあ、俺たちはこれで。本当はついて来てもらいたかったけど……」
「んんwww拙者はこの村を護らなければならないのでwww」
「と言うに決まってるから今回は諦めるとするよ」
だから、もし何かまた頼りたくなったら遠慮なく呼ばせてもらう事とする。その為の報酬も先払いで渡しておいたしね!
「絶対に嫁さんを取り戻せよ?」
「当たり前だ。絶対に取り戻してやるさ」
手を軽く振って、荷馬車を動かし始める。山を下って次の町まで行くのにはこの速さであれば二日ほどで付くだろう。はやる気持ちを抑えつつ、俺はまた大きく深く息を吐くのであった。
「ちなみに、渡したあの荷物って何なんだ?」
「大魔王の持ってたラノベとマンガだよ?」
ビシリ、とライガーの表情が固まる。いいんだ、このくらい。きっと大魔王も許してくれるしね!……してくれよね?うん、大丈夫だ!たぶん!
今日も今日とて遅くなりましs( ˘ω˘)スヤァ