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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第八章:勇者な執事と魔法学園の姉妹の絆。ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!
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1話:エナジードリンクって疲れた体と頭に良く効くけど元気を前借してる気がするよね?

 こうして大魔王と四天王が一同に会しているのを見るのはこの異世界に来て初めての事なんじゃないかなと、回らない頭のままにボウと眺める。

 大魔王城の大広間。ここでは今、奪われてしまったサクラちゃんの魔石についての会議が行われていた。


「今すぐにでも人の国へと進行すべきだ!これは、我々に対する宣戦布告だぞ!」


 バン、と力強く長テーブルへと手を叩きつけ、ライおっさんが怒りの咆哮を上げる。


「お気持ちは痛いほどに分かります。確かにあの勇者――七竃撫子がオウカ様の魔石を奪ったという事は事実です。ですが、彼女が勇者教……或いは何れかの人の国から指示されたかも不明です。オウカ様のその魔石の行方も分からぬままに戦火を振りまいてしまえば、その行方もさらに分からなくなるのではありませんか?」

「ぐ、だが……」


 サテラさんの言葉にライおっさんの語尾が小さくなっていく。

 そう、確かにその通り。無計画にサクラちゃんを探すためにと進行してしまえば最後、あちらの国は瞬く間に混乱と混沌に堕ちてしまい、只でさえ砂漠の中で金貨を探せと言うくらいに無理難題であるのに、砂嵐を巻き上げて全く見えなくしてしまう事になりかねないわけだ。


「ですので、偵察を幾重にも放ちオウカ様の魔石の場所を探しだすことが先決かと思われます。人の国へ進行するのはその後で構わないかと――」

「オウカの魔石のおおよその場所は分かっておる」


 グリムが大きなため息を付き、サテラさんの言葉を遮る。場所が分かっているだって?思わず俺は席から立ちあがり、睨むように大魔王を見つめる。


「落ち着け真人。余の考え通りであるならば、あの子の魔石は丁重に扱われているだろうよ。何せ――聖剣を使う為の鍵となるのだからな」


 ざわり、と大広間がどよめく。そりゃあそうだろう。つい先日、聖剣をめぐって大騒動が逢ったばかりなのだから。だけどその時に狙われたのは俺なんだけど、そこのとこどうなのかな?


「ああそうだ。今の使い手はお前だからな、真人。だが――知っての通りあの剣はオウカの母親のものだった。だからアイツがこの世界から消え去ってからは、所有権はオウカが持っておったのだ。そこをオウカが認めてお前が使い手になったのだが……。たとえ使い手がお前になっていたとて、その権利を持っているのはオウカに過ぎんのだ」


 思わず俺は天井を仰ぐ。

 恐らく、その事を勇者教側が知ったのはあの事件の後――ナナちゃんが報告してしまったのだろう。だからこそ、サクラちゃんの魔石を奪う役目をナナちゃんが任されてしまった。けれどもその方法が分からない。ナナちゃんにそんなチートは無いし、魔石を奪い取るだななんてそんな物騒なアイテムは持っていなかったはず。なのになぜ……?


「その答えは実際にその場にいた者に話を聞くとしよう……さぁ、入るがいい」


 グリムが手を叩くと扉が開き――両腕を鎖でつながれたライガーが連れて来られていた。いやいや、それはおかしい。だってこれじゃあ罪人と同じ扱いじゃあないか!


「おかしくはない。これは当然の事さ。ああ、そうだ。目の前で――ナナが自分の腕を切り落とせと叫んでいたのに私にはそれができなかったのだから」


 ライガーの話をまとめるとこうだ。

 サクラちゃんとナナちゃんがこれからもよろしくと手をつないだ瞬間、突如としてナナちゃんの付けていた指輪が光り輝き、サクラちゃんの体から魔石を吸い込んだのだ。そして、全てを吸い終えたと同時にナナちゃんは塩の塊になって砕け散ったのだそうだ。


「何度も、あの子は、ナナは叫んでいたんだ。嫌だ、嫌だ、と。……なのに、ボクの力が足りなかったばかりに切り落とすことができなかった。ボクが、止められなかった、から……ボクが……」


 ポロポロと涙を流し、ライガーはその場に崩れ落ちる。どうやら、その時の光景が忘れられないらしく心を痛めてしまっているらしい。


「……なるほど、呪いか」


 ポツリとつぶやいたのは今まで一言も発していなかったクリュメノスさん。呪い――つまるところ魔法以外の霊的現象の事であるけれど……と俺は首をかしげる。


「恐らくは複合チートなのだろうよ。呪いとは限定的な発動条件であればあるほど強力なものになる。例えば、特定のセリフを他社の前で言わせる。或いは特定の場所に一人で立ち入る……とかな」


 自身が死んで発動するモノもその一種だろう。けれど、そう言ったものは必ず代償が伴う。人を呪わば穴二つと言う言葉がある通り、誰かを呪った瞬間に自分を呪っているのだ。


「だからこそ、勇者撫子は塩となったのだろうな。代償は己の命。その命と引き換えに、彼女はオウカ様の魔石()を奪い取ったのだ。(もっと)も――命をおとしたとて、セーブ地点で復活ができる勇者にその代償が代償となっているのかは甚だ疑問ではあるがな」


 勇者は死んだ時点で身につけたものはそのままセーブ地点へと引き継いで持っていける。

 だからこそ、塩となったナナちゃんの跡にサクラちゃんの魔石を吸い込んだ指輪はかけらも見つからなかった。つまり、サクラちゃんの魔石を奪う事が逃げる事とイコールになっていた訳だ。


「呪いとは魔法とは別物だ。だから、サテラのスキャンには反応しなかったのだろう。そして、勇者のことだ、恐らくは隠匿のチートでも複合していたのだろうさ」


 ヤレヤレと首を振り、クリュメノスさんが大きくため息を付く。


「そういう訳だ。オウカの魔石は勇者七竃撫子によって奪われてしまった。それが故意にせよ不可抗力にせよ、だ。我々は彼女を捕らえ魔石の行方を探さなければならん」


――駄目だ、と俺の心のどこからか声が聞こえた気がした。そう、そうだ。そんなことをしてしまえば一番悲しんでしまうのは、何よりサクラちゃんじゃないか。ナナちゃんは自分の腕を切り落としてまでもその呪いを止めようとしていた。なのに大魔王の配下に捕まってしまえば殺さない程度にいたぶられたのちに魂まで残さずに消し去られてしまう。


「なら、その役目は――夫である俺の役目……だろう?」

「勇者撫子も救う為に、か?」


 呆れたような顔でグリムがこちらを見ている。そんな顔をされても困るな!だって俺はもう後悔しないって決めているんだから。何があっても、どんな選択肢があっても後悔なんて絶対にしない。――してたまるモノか。


「ああ、そうさ。みんな全部助ける。なんたって俺は勇者なんだからね!」

「うむ、勇者が勇者の国へ潜入とは字面的にどうかと思うがな?」


 確かにその通りだけど、そこを気にしちゃおしまいだと思うな、ボカァ!


 鈍っていた頭を両頬を叩いて直す。


――もう二度と大事なものは失わない。この手で必ず掴んで見せるんだ。

とってもとっても遅くなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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