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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
番外の章:とある少女の前日譚
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13話:招かれざるモノ

 夜空を明るく照らす月は丸みを帯び、瞬く星々と共に学園駅への道を明るく映し出していた。


 今更ながらに、学園を出てすぐに駅があるだなんて恵まれているなぁと感じる。お金にモノを言わせているともいうけれど、気にしないことにしよう。うん、今更だしね!


 レンガ造りの駅舎へ入ると、時間も時間だけあって学生たちの姿はまばらだった。これならば沙夜と並んで座ることもできるだろう。


――と、学園駅に似つかわしくない人影が見えた。


 身長は百八十を優に超えるだろうか。ホワイトブロンドの髪のガタイのいいスーツ姿のご老人が駅名の看板とにらめっこして首を何度もかしげている。どうやら、自分がどこにいるかわからないでいるらしい。


「おじいさん、お困りですか?」


 外人さんのようにも見えるけれど、まずは日本語でアタックしてみる。うん、通じなければその時はその時だ。


「む、これは親切なお嬢さんだ。いやなに、降りようと思っていた駅とは違う駅で降りてしまったようでな。悲しいかな相方とはぐれてしまったのだよ」


 珍しい赤みがかった瞳のおじいさんがアハハ、と恥ずかしそうにはにかむ。うん、よかった!通じるよ日本語!


「真理様、言葉が通じたからと嬉しそうにこちらを振り向かずにきちんとご案内して差し上げてください」

「っと、すみませんでした!」


 背中にひしひしと感じる沙夜のジト目をさておいて、おじいさんの目的地を訪ねる。――どうやら、乗る路線を間違えていたらしく到着はするが遠回りになってしまう路線になっていたようだ。なので、最短でたどり着く道順をメモ紙に書いて渡してあげる。これならおじいさんが乗っていた電車に追いつくこともできるはずである。


「なるほど、乗る電車をまず間違えておったか。まったく、あ奴も俺に任せてくれと言って居ったから任せたものを。まぁ良い、これもまた旅の醍醐味であろう」


 カラカラと楽しそうに笑う。ううん、相方さんってどんな人だろう。息子さん……かな?


「うむ、一度は行っておかなければならん特撮の聖地であるからな!」

「特撮……ですか」

「いいぞ、特撮は……。ああ、以前言った東北のミュージアムも素晴らしく良かった」


 おじいさんはグッと握りこぶしを握りしめ熱く語る。ああ、兄さんがいたらこのおじいさんと朝まで語り明かしそうだなぁ……。


「さて、電車の時間も差し迫っている事だし、遅れぬように行くとしよう。それでは――これは駄賃替わりにプレゼントしてあげよう」

「――これは?」


 受け取ったのはコインのようなもの。金色の枠の中に赤くクリアな石でできた思議なコインだった。鷹のようなエンブレムが両面に描かれており、何か――不思議な力を感じるような気がした。


「それはわが国のコインでな。()()()()()()標となるだろう」


 よくわからないけれども、すごくいいものを貰ってしまったらしい。って、もしかしてこの真ん中の赤い石って宝石!?いやいや、そんなに高価なモノもらえないよ!?


「遠慮するでない。後は虎とバッタがあれば――む、嫌な音だな」


 音……と、耳を澄ますと学校の方から十九時の鐘が鳴り響いていた。私はこの時間まで残ることがないため聞いたことはなかったけれど、絡繰り時計が毎日同じ時間にああいう風に鐘を鳴らしているのだそうだ。


「ふん。()()はダメなモノだな。やりたい事とやっている事ちぐはぐで間違っておる。お嬢さんもアレは聞かないようにするんだぞ?それでは――」

「はぁ……」


 おじいさんは呆れたような顔で手を振って改札をくぐって行ってしまった。


「待ってください。貴方――貴方は一体何者ですか?」


 先ほどまで黙っていた沙夜が絞り出すように震える声で言う。一体どうしたというのだろうか?


「そうさな――通りすがりの大魔王だよ」


 ニヤリといたずらっ子のような笑みを浮かべると、それじゃあと手を振って今度こそおじいさんは行ってしまった。ううん、不思議な人だったなぁ……。


「なんで、どうして……」


 青い顔で沙夜はぶつぶつと震えながら地面をじっと見つめ続けている。う、うん、どうしたのかな?


「先ほどのおじい様からは尋常ではない力を感じました。もしかすると本当に大魔王……なのかもしれません」

「い、いやいや、流石にそれは無いと思うよ?どう考えてもおふざけで言っているじゃない」

「ですが――真理様がお受け取りになられたそのコインからも尋常ならざる力を感じるんです。どう考えても普通の代物ではありません」


 え、何。そんなにヤバいモノ貰っちゃったの!?ま、まさか呪われて……。慌ててポッケから取り出してジィっと眺めてみる。うん、不思議な感じはするけれど、どこからどう見てもただの赤くて綺麗なコインにしか見えない。


「……呪いの類はありません。ただ、純粋な力の塊のようです。ですが、このコインからううん、あのお爺さんからも。真人様の匂いを――感じたのです。それも、つい最近。今朝にでもついたような匂いが」

「え?」


 どれだけ兄さんのこと好きなのかなという言葉を、越えて驚きの声が漏れる。

 だって、兄さんは――死んで――この世界には――。


 ジッと、手の中のコインを見つめる。


 お爺さんの「探し物の指標となる」という言葉が頭の中で反響する。


 ……もし、これが死んだ兄さんを探すための指標となるのなら――。


「行先変更。沙夜、海無神社へ行くわ」

「かしこまりました。お車を手配いたします」


 握りしめたコインを胸に抱いて。私たちは暗がりの中、あの神の元へ向かう事にしたのだった。

話数を間違えていましたので訂正しております。

と言う事で、今回もまた遅くなり申し訳ございま( ˘ω˘)スヤァ

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