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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
番外の章:とある少女の前日譚
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7話:託されたモノ

 すっかりと夜の帳の下りた校舎を後にして、沙夜と共にじいやの運転する車で帰路につく。


 私の知らない内に、また私の大切なモノが削り落とされていた。


 ふと、そんな言葉が浮かび、頭を振ってそんな妄言を振り払う。

 まだ瑠莉奈が死んだと決まったわけじゃない。行方不明、安否不明なだけだ。……けれど、どうしても気になってしまう。


――七不思議。


 以前の私ならただの噂だと切って捨てていたものだ。だけど私は、そう言う摩訶不思議なモノがあると知ってしまった。この身をもって、痛いほどに。


「沙夜、あの話……どう思う?」

「……七不思議とは人がそうあるかもしれない。あって欲しいという人々の噂にすぎません。ですが……それが本物になると言う事もあり得ないことではないのです」


 言葉とは力だと沙夜は言う。願いも、噂ですら力を持つのだと。


「妖怪というモノは、暗がりの良くないモノがたまったところからそう言った言霊が作用して生まれ出でてきます。もちろん、山や湖などから生まれ出でる精霊といわれるものもその一部に含まれることはありますし、それ以外のモノもいます。ですが、こと七不思議に限るならば噂から生まれる――都市伝説と言われるモノと同じでしょう」

「都市伝説、か。それなら、今回がいなくなったのも……」

「……わかりません。ですが、確かにあの東側の階段にはよくないモノが溜まっているように感じられました」


 どうやら、沙夜はその噂を事前に聞いていたらしく、すでに調べていたらしい。


「それで、どうだったの?」

「何かがいた――のではないかとは思いますが、実際にその時間帯にあの場にいなければ確定はできません」


 それなら、と言いかけたところを私の口を沙夜の指に阻まれる。


「それはいけません。私は真理様をお守りするのが役目です。危険にむざむざ飛び込むのを許すわけにはまいりません」


 確かに沙夜の言う通りだ。けれど、もしかしたら瑠莉奈は今も助けを求めているのかもしれないのだ。他の子だって。なのに、何もできないだなんて……。


「……私ができる事は今後、同じ被害が出ないよう良くないモノを散らすことくらいです」

「だけど、それじゃあ……」


 瑠莉奈も、被害にあった子たちもどうなったかが、わからない。


「真理様。確かに貴方は神と契約しました。しかし――アナタは何一つ変わってはいないのです。運がいいのは真理様自身の運がいいだけ。どれだけ運が良くても、気付けば呆気なく死んでしまうだなんてこともあるのですから」

「……それが私の運の尽きなんでしょうって、いたぁい!」


 パチンと音がしておでこに衝撃が走る。デコピン。それも相当に痛い!私よりも小柄なのにどこにそんな力があるのよ!胸?胸なの?そのたわわに詰まってるの!?


「悲しい事を言わないでください。貴女の――真理様の命は真人様の命です。なのに、簡単に捨てるようなことを、言わないで……っ」

「沙夜、あなた……」


 普段人形のような沙夜の目尻にはうっすらと涙が浮かんでいた。この子がこんな表情を浮かべるだなんて……。


「っ。申し訳ございません。私、どんなお叱りも――」

「このくらい友人のじゃれ付きじゃない。気にすることはないわ」


 言って、沙夜のおでこをツンとつく。


「友人……?」

「そ、前々から兄さんにも言われていたのよね。沙夜と友達になってあげて欲しいって。なのに、貴女ったら、兄さんにベッタリだし、兄さんがいないときはメイドの仕事ばかりで話しかける隙もないんだもの」


 だからこの機会に仲良くなっておこうと思ったのだ。うん、これからずっと一緒なのだろうし、その方がいいよね!


「……ダメです」

「なんでー!」


 プイと、沙夜は顔をそむける。何だか口角が上がっていたような気がするけれど、ダメらしい。うん、なんでダメなのよぅ!


「私は、真理様をお守りするのが役目。なので、何れ私は――」

「そんな風に考えちゃ駄目。うん、兄さんがそんなこと望むはずもないもの」


 ムニと沙夜の頬を両の手で包む。ぷにぷにで柔らかく、私よりもきめ細かい。むむ、本当に可愛いわね、この子!


「兄さんが私に、仲良くしてって言ったの。だから沙夜がなんと言おうと私の友達なの。わかった?」

「……ふふ、まるで真人様みたいですね」


 え、どこが?と思わず聞き返す。


「そういう所が、です。こうと思った事は絶対に曲げない頑固なところが本当にそっくりです。あと、そうなったら私の意見に耳を貸してくれないところもですね」


 ジト目で沙夜が私を見つめる。うう、そんな風に言わないで!兄さんに似てるって言われて嬉しいけど何だか嬉しくない!


「ありがとうございます。その言葉だけで私は十分ですから」


 うっすらと笑みを浮かべて沙夜は言う。……ナニコレ、すっごく可愛いんですけど!

 普段人形みたいに無表情で何考えてるかわからないところがあるなって思っていたけれど、まさか少しほほ笑むだけでこんなにも破壊力があるとは……。兄さんも沙夜がこんなに可愛いと教えてくれていればよかったのに。そうすれば――


「真理様、何だか目が怖いです」


 どうやら人には見せれない顔をしてしまったらしい。うう、私ったらはしたない……。うん、家に戻ったら色々と私の服を着せてあげるとしよう。……だけど、入るかしら?

 私は沙夜の大きくたわわな一部をじっと見つめて、頭を抱えたのだった。

今日は少し早めに( ˘ω˘)スヤァ

抜けがありましたので、訂正しておりますOTL

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