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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
番外の章:とある少女の前日譚
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5話:消えゆくモノ

 寝不足の頭を抱えながら送りの車から沙夜と共に降りる。


 いってらっしゃいませという爺やの声を後ろに、私はフラフラと沙夜に手を引かれながら学園の中に入る。

 私と沙夜の通う学園、柳生(りゅうせい)学園は幼小中高大一貫の学園でありながら、中学に上がると男子校と女子校と別れる少し変わった学園である。


 男子校は帝王学や馬術、武術を含んだ全国でもトップレベルの学び舎であり、時代の財閥やトップ企業の御曹司たちが通い、私と沙夜の女子校は並々ならぬお嬢様たちの通うお嬢様学校で、マナーや我が国と関係の深い諸国の作法や文化、語学について深く学ぶことができる。ちなみに、女子高も全国模試ではトップレベルである。


「男女別々と言うのは今更ながらに時代錯誤を感じざるを得ないわよね……」

「真人様とは大学に上がるまでは同じ学び舎で学ぶことはできませんでしたし、どちらにせよ関係ないのでは?」

「うん、何でそこでお兄様の事が出てくるのかしら!」


 思わず沙夜に突っ込んでしまう。確かに一瞬、ちらりと、ほんのちょっぴり考えていなくはなかったけれども!……もっとも、もうその夢すらも叶う事は無いのだけど。


「……申し訳ございません。失言でした」

「いいのよ、辛いのは沙夜も同じなんだから」


 ふぅ、と息を吐いて空を見上げる。

 兄さんがいないだなんて落ち込んでばかりもいられない。


――私は兄さんに生かされた。


 だから、生きて、生きて生きぬかなければならない。どんなに苦しくても辛くても……死にたいほどに悲しくても。


「ごきげんよう、生徒会長。ニュース……見ました。ご無事で、何よりです」

「ごきげんよう、春。ほら、タイが曲がっていてよ」


 そう言って、女学園前の門で生徒たちへ挨拶活動をいち早く始めている春のネクタイを綺麗に直してあげる。この子は下条(しもじょう)(はる)。学年は一つ下で生徒会の書記を務めてくれている子だ。とても小柄で薄い栗毛の髪の毛をみつあみにして大きな黒縁のメガネをかけた大人しい女の子だ。いつも可愛くて、生徒会室に持ち込んだ私物の衣装やお化粧道具で可愛くイメチェンをして写真を撮らせてもらっていたりする。広報活動の一環の衣装、問題ない、問題ない。うん、他意は無いしね!


「あら、数日間お休みになられたとは思えないほどに元気ですわね?」

「ごきげんよう、真綾さん。ええ、お陰様で私は……ケガもありませんでしたので」


 はちみつ色の髪でパーマをかけている彼女は井頭(いがしら)真綾(まあや)。生徒会会計であり、学内でもトップクラスの才女だ。性格はツンケンとしているけれども、生徒会室にいつも差し入れを持ってきて、誰よりも他人に気を使ってくれるツンデレさんである。


「真綾さん、その、会長はお兄さんを……」

「……え?まだ行方不明……?な、何でそれをもっと早く!そう、お兄さんを……」


 こういう所があるからどんなに強く当たられてもああ、可愛いなぁと思えてしまう。ああもう、抱きしめてナデナデしたい!まぁ、したら叩かれてしまうのは目に見えているからしないけれども。


「真理様って本当に真人様によく似てらっしゃいますよね」

「え、そ、そんなに?」


 むしろどこが?と聞きたかったのだけれども、沙夜はクスクスと笑うばかりで答えてくれない。ううん、そうなのかしら?


「……あら?瑠莉奈は今日はいらしていないんです?」


 生徒会副会長、安武瑠莉奈。私の右腕ともいえる頼れる相方であり、大の親友だ。おっとりとした性格で、濡れカラスの如き艶やかな長い黒髪はにた髪色の私ですら羨むキューティクルで、その可愛らしくも美しい見た目に不相応な大きくたわわな二つの果実は見るモノを魅了してやまない。うん、なんで同じ十四なのにこんなに差がついたのかしら!また揉んで吸い取ってあげないと……吸い取れてるのかしら……。


「会長は入院されていて、まだ……お聞きになられていないんですね」


 春はふっと目を伏せる。まだ……?いったい何の話だろうか?瑠莉奈は小さい頃から病弱ではあるけれど、まさかまた体を――


「副会長……瑠莉奈さんは二日ほど前から行方不明、なんです」

「……え?」


 思わず、私は聞き返してしまう。瑠莉奈が……行方不明?そんなわけ、あんなにもご家族に大事にされているのに――。


「詳しい話は後。今は生徒会の仕事に集中なさい」

「……ええ、そうね」


 顧問の日下部先生先生にあいさつをして荷物を沙夜と共に教室へと持って上がる。

 沙夜とは別々のクラスであるため、荷物を持って行って!と気軽に言えないのが少し辛いところである。流石に兄さんのメイドだった彼女に私専属のじいやと同じように甘えてしまうのは、まだ無理だ。というか、同い年の女の子を使用人として扱うのは正直、難しい。


 教室に入ると友人たちに適度に挨拶を交わし、瑠莉奈の話を軽く聞いてみる。


「私が聞いた話では、放課後の図書室で忽然と消えてしまったらしいですわよ?」

「あら、私が聞いた話では深夜の女子トイレと……」

「音楽室では……?」

「茶道部の部室と私は……」


 どうやら情報が錯綜しているらしい。

 みんなにお礼を言って、私は再び校門へと戻る。


 仕方ない。まだまだ気になるけれど、瑠莉奈の事は放課後に生徒会室でみんなから聞き出すことにしよう。

今日も今日とて遅くなりました。

これもすべて乾巧って奴の仕業なn( ˘ω˘)スヤァ

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