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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
番外の章:とある少女の前日譚
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序:最後の思い出

 ――痛い。



 痛い。



 痛い。



 それでいて、寒くて。



 ひもじくて。



 体が鉛のように動いてくれない。



 だけど――私は、幸せを感じていた。



 だって、ずっと一緒にいて欲しいと願ってやまなかった、兄さんと一緒にいられるのだから。



「……ごめんな。兄ちゃんがもっとお前の事を見てあげていればよかったのに」



 ううん、違うの。私が兄さんの事をよく見ていなかったからだめだったの。



 兄さんがどんな風に頑張って、兄さんがどうして頑張っていたのかを。



 私が、それを知ろうとしなかったから――。



「気にするな。お前は俺の大事な妹だから。家族だからな」



――見渡す限りの白。



 雪に覆われた山肌には岩陰すら見えず、その雪の深さが見えた。



 ヘリから突き落とされて、一体どのくらいたっただろうか?



 もう、私には時間の感覚すら無くなっていた。



――そう、きっと私を置いて行ってくれれば、兄さんだけは助かる。



 だから、傷だらけの私を背負う兄さんに、何度も降ろしてと言った。



 けれど――



「兄ちゃんがお前を置いていくことは絶対にない。その時は一緒だからな」



 そう言って、ぽんぽんと昔のように頭を撫でてくれた。



 苦しい。



 痛い。



 刺さるように寒い。



 だけど――


 この日、この時は離れ離れになっていた私と兄さんの心の隙間を埋める、大切で、大切で、大切な時間なのだ。



 兄さん。



 私の、大事で、大好きで、愛する、兄さん――



 いつも優しくて。



 暖かで。



 私の陽だまりのような人。



 ――ごめんなさい。いつもわがままを言ってしまって。



 ――ごめんなさい。いつも冷たくしてしまって。



 ――ごめんなさい。心にもない事ばかり言ってしまって。



 兄さん、私はずっと、ずっと昔から兄さんの事を――



 兄さんの大きな背中のぬくもりを感じながら――私は終ぞ、意識を手放してしまった。



 辛くても。



 苦しくても。



 やっと素直になれた、この一瞬だけは永遠に続いてくれればと、そう願いながら。

本日中に1話を投下できればと思いま( ˘ω˘)スヤァ

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