42話:ロボを開発できるなら仕様書に乗せないギミックはどこかに仕掛けておくものだよね?
それから、二日ほどが経った。
出立の日時が伸びた原因はどこかの某S氏が張り切り過ぎたせいで、帰りの分のエネルギーまで先日のトドメのビーム砲につぎ込んだせいだったりする。うん、つまるところ百パーセントオーバーの当たりだったりする。稼働エネルギーまでぶっこむ必要は無かったよね!と言ったところ、
「ふふ、駆動系のエネルギーを全て砲身に回す。これもまたロマンなのですよ……」
と返されてしまった。
うん、ロマンだけど!確かにロマンだけども!それは本当にどうしようもない時だけでいいんじゃあないかなぁ!と俺は頭を抱えたのだった。
そういう訳で、数日間メガブラスティアキャノンの発射ポーズのまま硬直したメガブラスティア・アークさんは一時的に観光資源と成り果てていたのであった。うん、サクラちゃんとナナちゃんが楽しそうに写真を撮ってたよ!
そして俺はその間、追加の追加で舞い込んだ商談に追われつつ、復興のお手伝いに勤しみ、さらには押しかけて来た無限流師範代の連中の技の叩きなおしをさせられていた。うん、そろそろ過労死しそうなんだけど!
「はは、何を言う。聞くところによるとこの程度日常茶飯事と椿からきいておるぞ!まだまだいけるいける!」
「そして死んでるからね!勇者虐待だよこれぇ!」
ガリガリと最初に宿泊した首都の旅館で書類作業に追われつつ、久々にロベリアちゃんを撫でながら癒しを求める。あーいやされるぅ……。
「なんで癒しで私なのでしょうか?馬鹿ですか?」
「いいじゃない、何だか落ち着くんだし」
いつの間にかロベリアちゃんを撫でるのも日常的になってしまった。まぁうん、嫁さんたちがいない日は未だに寝床に潜り込んでくるしね!俺は寝ないから夜通しなでなでしてるのはここだけの話である。
「――で、覚悟はそろそろ決まったか?」
修羅の城の謁見の間。俺は火急で性急で重大な用事があると羅刹さんに呼び出されていた。
内容は分かっている。分かっているからこそ、今すぐ逃げ出したいんだけど!駄目かな?駄目かぁ……。
「誠心誠意――お尽くし――いたします」
羅刹さんの隣にいる伊代ちゃんがテレテレとしながらそう言う。ふふ、とても可愛いけど俺すっごく困る!
「え、ええとですね?申し出はもの凄く、ええ、もの至極嬉しいのですが、私にはすでに嫁が四人おりまして……」
「そこに一人増える位なんてことないだろう?それに……すでに伊代のあられもない姿を幾度も見ているという。これは最早――他の誰の嫁に出すこともできんからなぁ」
ニヤニヤと嬉しそうに羅刹さんは言う。いやいや、お風呂は伊代ちゃんからだし、二回目は九尾のせいだし?俺悪く無いんですけど?!わ、ワルクナイヨネ?
「事故でも故意でも他意であったとしても関係は無い。他に嫁に出せぬと言うておるのだ。お前がこの子を嫁に貰ってくれなければ、伊代は一生を独り身で過ごすことになるぞ?」
ぐぬぅ、そう言われると困る。とーっても困る。こんなに可愛くて気立てのいい子が一生独り身だなんて勿体なさすぎる。だって、伊代ちゃんはあんなに苦労して寂しい思いをして来ていたんだ。だから、幸せになるべきなんだ。なって欲しい。だけど、そうなんだけど!
「お、俺の嫁さんたちが許してくれるかどうかが問題でして……」
ともかく俺のキャパは割といっぱいいっぱいなのである。嫁さん四人でも貰い過ぎなのに、それ以上て……。だから、嫁さん四人を理由に躱すしかないのだ。流石にまだ新婚だしね!新婚旅行に行って嫁さん増やしてきましただなんて笑い話すぎるよぉ!
「煮え切らんなぁ……。だがまぁ、そう言う事は想定内だ。緋乃女、どうだった?」
ガラリと襖が開き、タイミングよく緋乃女さんが入って来る。……あ、これアカン奴や。
「ふふ、私が何と言うか真人はんは気付いてはるな?」
ニッコリと嬉しそうに緋乃女さんがほほ笑む。
――これは、まさか。
「オウカはんも、フレアはんも、ええシルヴィアはんに、ビオラはんにも問題ないとの言葉を頂いて来たえ。これでもう、逃げ道はあらへんで、真人はん?」
俺の顔から血の気が引いていくのが分かる。それでいいの?いいのかなと、分身の俺が離れた位置の嫁さんズに詰め寄る。
「伊代ちゃんならいいと思いますよ?それより見てくださいこの部品!精度がヤバいんです!本当にヤバいんです!ええ、語彙が無くなるほどに!」
「ん、いい子だし。お菓子美味しかった。ぼたもち……えへ♪」
「まぁ、苦労してきたからね。ボクはとやかく言える立場じゃないし」
「ぐす、あんなにいい子、幸せにしてあげないと駄目です!」
……どうやらここ数日の間に、見事にみんな説得されていたらしい。四面楚歌、四方の陣、嫁さんみんな伊代ちゃんの味方で誰も味方がいねぇよぉ!うん、サクラちゃんとフレアは買収みたいだけど!
「そういう訳だ。最早逃げられんぞ?」
正しく魔王の笑みで羅刹さんがくつくつと笑う。
「真人様――不束者でございますが――どうぞ――末永く――よろしくお願いいたします」
九つの尻尾をワサワサと嬉しそうに揺らしながら伊代ちゃんが、正座のまま頭を下げる。
――ああ、可愛いな……。と、キュンとしてしまった時点で俺の負けなのだろう。うん、負けっぱなしな気がするけども!!
だけど、これだけは最後に言わせてほしい。そう、つまり絶望が俺のゴールだ!パートツウウウウウウ!!うおわあああああん!!
俺は涙を流し、畳に突っ伏したのだった……。
前話にてギガブラスティアと書いていた部分をメガブラスティアに統一し、訂正しております。
書いてるうちに何でギガになったんだろう……。恐らくちらっと頭によぎったんです。
そう、ブラギg(ry はい!今日も今日とて遅くなり、申し訳ありませんでs( ˘ω˘)スヤァ