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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第七章:勇者な執事と東の果ての新婚旅行。はい、鍛えてますから!
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閑話:

 爆裂的な火柱が上がり、世界の終りの如き暴風が吹き荒れる。湖はまるで生き物のように鬼達を飲み込み引きずり込んでいった。それは、個人で行われるにはあまりにも大規模な力。


――あまりにも規格が違い過ぎる。


 もはや乾いた笑いしか出ない。

 拙者とて、鬼の端くれ。武人としての自負はあったのだけれども、流石に天災ほどの力を持つ奥方たちの力を見ると力量の差をまざまざと感じてしまう。うむ、あんなのに勝てるわけがないではないか!まぁ、うん。今の拙者はメイドなのだけど。


「――梅雨さん、危ない!」


 犬族のあんちゃんの声に動ずることなく降り注いだ矢を見ることなくいなしていく。はぁ、駄目だこの程度では真人様の足元にも……!


「いや、何で見もせずに反応できるの?」

「む?いや、このくらい普通ではないのか?」


 呆れ顔の夏凛殿の言葉に首をかしげる。尤も、勇者である夏凛殿であれば私のように剣線を重ねて切り払うのではなく、一撃の剣圧にて振り払えるのだろうし、彼女もまた規格が違う。


「う、うん。アタシの場合は剣圧じゃあなくてチートのオートリフレクションで弾き返してるだけだからな?絶対に梅雨さんの方がすごいって!」


 そう言いながら降り注ぐ矢の豪雨の正しく矢面に立ち、その全てを跳ね返していく。うむ、これを規格外(チート)と言わずして何といおうか?


「自分の力で身に着けたわけじゃないからそんな感じが全然しないんだよなぁ……。それよりも真人さんに教わった剣技の方がまだ――!」

「ぎっ!?」

「自分の力になった感じがする」


 無限流/大剣(おおつるぎ)/白


 それはにて放たれる振り下ろしの一閃。断末魔の叫びをあげることなく、空から降って来た鬼を真っ二つに両断して見せた。


「ん、いい調子。というか、今どこから来たこいつ!」


 見上げると、空には幾つもの点。アイツら、空から――!


「まったくもって鬼が頑丈だからと好き放題にしてくれる」


 己の手にじとりと汗がにじむのを感じる。


 空から落ちてくるのは青い肌の鬼達。

 ああ、そうだ。アイツらは――


「なんだ、はは!梅雨じゃあねーか!」


 着地した白髪の青鬼が拙者を見てニヤリと笑う。


「強羅、貴様そこまで堕ちたか」

「はっ!堕ちた?何を言っていやがる?我らは力を求める種族!それが己が力でも与えられる力でも構わねぇ!それが鬼ってもんだろう!」


 ゲラゲラと笑い、巨大な金棒を振って見せる。


「我らが邪神様は素晴らしいぞぉ。ああ、力が満ち満ちる!そうだ、梅雨!お前もこちら側に来い!そして俺の女になれ!あの時はアイツに不覚を取ったせいでお前を奪われたが今は違う!我らが神の力に我が技をもってお前を俺のモノにしてやる!」


 目が血走っていてどう見ても強羅は正気ではなかった。しばらく会わない内に一体どうしてこいつはこんなことになっているのだろうか?


「ええと、梅雨さんのお知り合いですか?」


 あんちゃんが可愛い肉球グローブと肉球ブーツで襲い来る鬼達を殴り飛ばして蹴り飛ばす。ううん、可愛いけど威力は申し分ない。


「知ってるやつに似てるけど――」

「はは!その腕を叩き砕いて俺の嫁にしてやる!行くぞ!無限流/昆/奥義――」

「どうやらもう違うみたいで候」


――無限流/刃/御雷


 紫電の如き瞬く間の一閃。奥義へと至ることは未だできず。拙者が覚えられたのもこの型だけ。

 然れども――それで十分であった。


「あ、ぇ?」


 ずるりと、強羅であったモノがズルリとズレて、二つに割れて倒れる。

 拙者の知る――力強くも優しい彼は、最早記憶の中にしかいなかったのだ。


「ああ、クソッタレな邪神の教徒へ堕ちた同胞達よ。せめてこの一閃にてその命を終わらせてしんぜよう」

「私もお、お手伝いします!」


 ふんすふんすとあんちゃんもやる気満々といった様子。まったく、メイドになったのにどうして拙者たちは戦っているのだろうか?あとできちんと真人様に追加報酬を頂かねばなるまい。うむ、此度の交易で手に入ったと言う抹茶を譲ってもらうとしよう。こちらで食べた抹茶の菓子は中々に美味であったし。


「それ以前に、戦闘部隊な私たちよりメイドさんたちが強い気がするのは何でなのかな!」

「ええい、姫騎士隊の面子が潰れかねん!もっと皆しっかり働けぇ!」


 ライガさんの掛け声と共に姫騎士の皆さんに力が入る。うむ、彼女らもやはり規格外。少なくとも幹部クラス、或いは魔王クラスの力を持っているのでは無いだろうか?


「それもこれも真人さんに鍛えられたからやろなぁ。はぁ、まったくもって戦斧をずっと握っていたアタシよりも斧を使いこなされたら溜まったモノじゃああらへんで」

「その分、魔法ではこちらの利があると思っていたら精霊との契約で詠唱いらずで魔法を放ってきますからね、彼。本当に負けていられませんわ!」


 くるんくるんと戦斧の重さを利用してマネッチアさんが鬼を金棒ごと薙ぎ払い、ミラさんが未だ空から落ちてくる鬼達を風刃の魔法で撃ち落とす。


「私たちも負けていられません!メイド隊!今こそ真人様に鍛えられた技を見せる時です!無限流・護衛術をもって邪鬼どもをお掃除です!」

「「「はい!お任せください!!」」」


 エルフメイドなエリスさんの掛け声にメイドの拙者たちに風の精霊の加護が宿る。流石は森の番人!

 軽やかになった足取り鬼の首を切り落とす。


――彼女はいつか花屋を開くと言っていた友人だった。


 背後から迫る凶刃を刃にて往なして振り向きざまに御雷にて振り下ろす。


――彼は沢山の子供を持つ父親だった。


――彼は漁師で。


――彼は。


――彼女は。


――彼は、彼は、彼女は。


 足元の血だまりに拙者は立ち尽くす。


 ……一族郎党全てが邪神の信徒と化していた。それでも、拙者の刃が止まる事は無い。止める事は無い。なぜならば――!


「これが我が主への忠義にて」

「――それで良い。それが、我らの」


 最後に切り伏せた男がそう言って、地面へと崩れ落ちた。


「申し訳ございません。拙者は――不出来な娘でございました」


 物言わぬ肉塊に一瞥すらすることすらなく、拙者は崩れていく氷の壁を見つめる。


 そこにはまた新たな鬼達が――もはや鬼族という存在から逸脱した鬼達が出現していた。


 まだこれでは終わりではない。まだ、動ける――!ふぅ、と息を吐き拙者たちはまた走り出したのだった。

今日も今日とてとってもとっても遅くなりm( ˘ω˘)スヤァ

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