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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第七章:勇者な執事と東の果ての新婚旅行。はい、鍛えてますから!
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21話:畳の香りって嗅いでるだけで何だか眠たくなってくるものだよね?

 ああ、これで一体何回目だろうか。

 何度繰り返しても繰り返しても繰り返しに繰り返しても、俺は同じ過ちを繰り返してしまう。


 だから――俺は深々と旅館の畳にめり込むほど頭を下げるしかないのだ。


 そう、土下座。いつもの我が母国の伝統的謝罪スタイルである!うん、本当にごめんね!


「い、いえ、真人さん。怒っているわけではなく、その、どういう事だったかきちんと説明して欲しいだけでして……」

「んーん。己は怒ってる!危ないなら己を喚ぶべき!」

「はい、言い訳のしようもありません……」


 ぐりぐりと畳に頭を押し付けつつ。語尾を下げていく。涙目でビオラちゃんがおろおろとして、フレアは頬をぷっくりと膨らませてご機嫌斜め三十五度のようだ。ううん、参ったなぁ……。


「自業自得だな。そもそも、何で一人で行ったんだ?あのタイミングなら私たちの誰かを連れて行けば良かっただろうに」


 大きな胸を腕で抱えて、シルヴィアがこちらを見下ろしてくる。

 言い訳としか聞こえないだろうけれど、伊代ちゃんのいた東のお堂は神域になっている。つまるところは、巫子かそれに類する人しか入ることができない場所。だから、みんなを連れて行っても入れないどころか弾かれてあの鳥居の迷宮から永遠に抜け出せなくなる可能性もあったわけだ。継承勇者のビオラちゃんはワンちゃんあったけれど、俺は兎も角としてビオラちゃんに運を天にまかせるようなことはさせたくないから、そんなワンちゃんはあって無いようなもの。え、俺?俺はほら、巫子さんだし?


「絶対嘘だ」

「何で信じてくれないの!?」


 おかしい、割と清廉潔白なのに!あれか?結婚してるのがダメなのか?!可愛い奥さん四人もいちゃダメなんですかね、シルヴィアさん!


「ああもう、可愛いとかいうんじゃない、こ、この……ばか」


 頬をポッと赤らめてシルヴィアがそっと目をそらす。うん、本当に可愛いから仕方ないね!


「ねぇ、ああいうのって何て言うんだっけ?」

「バカップル……」

「カップルというよりも夫婦ですけれどねぇ?」

「新婚だから仕方ないとはいえ……」


 何だか後ろの方からロベリアちゃんとアザミちゃん、ついでにナナちゃんのジトを感じる。うん、シレーネさんは苦笑いをしていてくれてるんだよ!優しいな!


「それで、なんでそんなところへ?」

「ああ、なんか予言をしてくれるっていうから行ってきたんだよ。何だかよくわかんないんだけど、俺が世界に召喚された勇者とかで、魔神?とかそういうのを斃さなきゃならないんだけど、サクラちゃんを聖剣で貫いて世界が平和になるって言われたんだよ」

「それって、普通隠しておくことじゃないか!?」


 シルヴィアがにほっぺたをむにーと引っ張られる。確かにそうかもしれないんだけど、ああ!あの時言っておけばこんな事には……!なんて後悔したくないしね?というか、そんな風にせざるを得ない状況なんて限られて来るだろうし。


「私は――まーくんの選んだ道ならそれで構わないと思います。もし、魔神……というものに私が成ってしまったときはもう、私ではなくなっているのでしょうから」

「なんでサクラも覚悟完了してるのかな!ああもう、そうなる前に絶対止めるからな!」

「はは、シルヴィアは心配性だなぁ」


 この予言とやらが確定した未来であるならば、その確定した後の未来を選択することができるはず。だからそのために俺は頑張るしかないのだ。まぁ、うん。状況が全くの見込めないから対策の私用も無いんだけどね!


「そ、そのう、魔神って……大魔王、様、のことじゃないんです?」


 振り返ると、おずおずとナナちゃんが手を上げていた。うん、俺もそう思ったんだけど、そこの所サクラちゃん知ってたりするかな?


「いえ、私には何も……あ、ですが、大魔王城の地下に勇者たちを冷凍封印してる遺跡がありましたね」

「ああ、地下の迷宮に繋がっているあの……」


 ついこの前、行方不明になっていたビオラちゃんを探し出すために行った井戸の先。地下水脈を超えて迷宮を抜けた果てにあった地下遺跡だ。


「なんでもお父様曰く、気分を変えてお城をリフォームしたいから地下に沈めちゃったんだよね!とかおっしゃられていましたが、まさか……」

「いやうん、どう考えてもそんな理由で地下にお城を沈めたりしないと思うんだ!」


 まだ、可能性としてではあるけれど、あの遺跡にその魔神とやらの手がかりが残されているのかもしれない。うん、最近襲ってきているアラガミの連中を何人か捕らえてただいま尋問してるところなんだけど、みんな遅効性の毒薬を飲んでて捕らえた者たちも皆死んでしまったらしい。まったくもって、命を何だと思っているんだろうか?


「狂信者なんて連中はそんなものさ。自分が信じる者の言葉以外は何者も受け付けなくなってしまうからね」

「うん、知ってる。元の世界でとっても痛い目に逢ってきたからね」


 シルヴィアがしまったという顔で俺に申し訳なさそうな目を向ける。うん、気にしなくっていいんだけどね!


 水無瀬家。


 俺の生まれたその家は皇族に連なる家系であり、古の神を祭る祭司の家系でもあった。

 その、神の力をその一身に受け、人々に、国へ、分け与える。それが水無瀬家の役目。


――それが崩れたのはいつの日からだったか。


 私欲に走った水無瀬家の親族たちは、より自らに神の力――運の振り分けを増やそうと、巫子へ試練を課すようになっていった。

 死ぬほどの試練を与え、それを乗り越えさせることが自らの信仰の証明となり、自らにその運が還元されると考えるようになったのだそうだ。

 事実、そうしてきた親族たちは自らの持つ企業を大成させていき、気付けば大財閥へと成り果ててしまっていた。あの頭のおかしい連中が狂信者と言わなければ何というだろうか?


 尤も、妹を死なせてしまい、最後の巫子を失った水無瀬家が破綻するのは火を見るよりも明らかだったのだけれど。狂信者たちの末路としては相応しいものだろう。恐らくは今まで享受してきた運が全て反転して返って来るだろうしね!怖いな、神様!


「手っ取り早く話を聞くならサテラさんかな?ううん、教えてくれたらいいんだけれど……」


 自らの神を殺したというサテラさん。もしかするとその魔神とやらも知っているのかもしれない。とりあえず、後で聞いてみるかな!……それでその、そろそろ正座を崩しちゃダメかな?割と足がしびれて来てるんだけど!あ、やめて!フレア!ツンツンは!あ、らめえええ!

今日は少し早めn( ˘ω˘)スヤァ

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