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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第七章:勇者な執事と東の果ての新婚旅行。はい、鍛えてますから!
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19話:アイスの当たりくじって当たると嬉しいけど何だかお店で交換するのがもったいなくなっちゃうよね?

 トンタントンと逃げに徹して夕焼けに染まる街を全力で走り抜ける。そう、屋根の上を!


 道路を走って人に紛れて見失わせるのも一つの手なのだろうけれど、こいつらはまったくもって周りに配慮していない。つまり!人がまずいない屋根を逃げ回る方が被害が少なくて済むわけなのである!うん、今もまた魔力砲が横を掠めていったしね!本当に容赦ないな!


「逃げ回るな、勇者!おとなしくここで死ね!」

「死ねと言われて死ぬ奴はいないと思うんだ!というか足速いなアンタ!」


 風の大精霊ウィンディアことウエンディさんの加護を全力でフル活用して逃げているのに、あの男はもう追いついて来ている。本当に何者なんだよこいつ!


「我が神よ!ああ神よ!我に力をお与えくださいませ――!」


 瞬間、爆発的な魔力が男の胸へ収束し、暴風の如き瞬発力となって男の顔が俺の真横に現れた。うん、きもいから思わず回し蹴りで吹き飛ばしたけどね!


「ちぃ、本当に人間離れしてやがる……!」

「うん、勇者だけど基本普通の人間なんだけどなぁ……」


 いやいやそんなわけねーだろと、何だか家に突っ込んでも無傷な敵にジトられている。俺の腕の中の伊代ちゃんもないないとばかりに手を振る。勇者だけどチートも何も貰ってないからし!ほら!どう考えても!ただの……人間だ!


「ただの人間がそんな風に動けるか!」


 男の拳が俺の頭のあった場所を通過していく。うん、本当に速いな!


「動かないと死んじゃうから動かざるを得ないし仕方ないね!」


 正しく暴風雨の如き拳激を避けて躱しでもう一度蹴り飛ばす。うん、攻撃力はすごいけどどう見ても隙だらけなんだよ!


「ち、まだ馴染んでないか」

「馴染んでないのはその魔石とかな?それとも――その体かな?」

「な――」


――無限流/無手/虎!


 起き上がりかけていた男の腹を思い切り真横に蹴り穿つ!それは腰のひねりを加えた前蹴り!つまるところはケンカキックの強化版である。うん、伊代ちゃんを抱っこしてて腕がふさがってるから蹴り技しかできないんだよ!


「が、ふ、ぐ、け、蹴り、如きで……!」


 膝をつき、呼吸もままならない様子で男がこちらを睨む。うん、そんなに見つめられても男じゃ嬉しく無いんだよ!


「お前はまだその程度って事さ。うん、ここで決着をつけたいところだけど――どうやら時間が無いかな!」


 周りに集まる人だかり。その中から――幾つもの怪しい影が素早くこちらへと飛び掛かって来る。


「ああ!神よ!神よ!」

「身許へ――」


 ボンボンボンとその身を弾けさせ、アラガミたちが無残に散っていく。


「ああもう、何でこう命を大事にしない奴らばかりなのかな!死ぬのって辛いよ!辛いのに何で死ぬかな!」

「そこに救いがあるからさ」


 逃げる俺の後頭部へ迫る男の拳。けれども、遅い――!


「……ライダーキック」


――無限流/無手/奥義ノ(ろく)/哪吒(なた)


 ギュルンと高速で回転し、振り向きざまに男のこめかみへと霊力やら気(ありったけ)を込めた炎の加護を纏った踵(かかと)を振りぬく。


「ガッ――?!」


 爆炎を上げて男の頭がはじけ飛び――煙を出しながら男は地面へと落ちていったのだった。

 

「た、倒したのですか?」

「……倒しはしたけれど、多分これじゃあ終わらない」


 屋根から見下ろす男の肉体はボロりと炎に溶けて黒く崩れる。


 だが――そこには既に男の魔石は残されていなかった。うん、これ絶対に誰かが体を乗っ取ってたよね!厄介過ぎないかな、こいつ……。




 三つの月の登り始めた闇夜を走り抜け、ようやっと修羅の城へとたどり着く。色々と逃げ回って遅くなってしまったが、なんとか無事にたどり着くことができたようだ。


「お救いいただき、ありがとうございました真人様」

「いいんだよ。狙われていたのは俺だしね」


 正門へと降り立つと扉が開き、羅刹さん――を差し置いて奥さんの緋乃女さんが伊代ちゃんに抱き着く。


「伊代!全くあなたは無茶ばかりしはって……」

「ん。姉さまくすぐったいです」


 そう言いつつも何だか嬉しそうな伊代ちゃんである。うんうん、姉妹仲が良い事で……うん、姉妹?


「昨日も言ったが聞いていなかったのか?伊代と緋乃女は実の姉妹であるぞ。俺と椿は兄妹でな、この子は俺の義妹ということになる」


 なるほど、と羅刹さんの言葉にうなずく。


「それでは――真人様、城内へどうぞ」

「……ええと、伊代ちゃん?もしかしてだけどこうなる事……」

「はい、予知をしておりました。不確定要素だらけ――でしたが、真人様であれば――問題ないと」


 どうやらあの襲撃も彼女の予知のうちだったらしい。


――そう俺が伊代ちゃんをここに連れてくることすらも。


 だから羅刹さんも緋乃女さんも、城から出張ってこずにここで待ち構えていたのね!

 伊代ちゃんあまりの予知の正確さに驚かされる。うん、昨日もお風呂に俺だけしか入ってこないと予言してたみたいだしね!


「ホンマ、伊代ちゃんは力の無駄遣いばかり……。と言うかお風呂て!?う、うち、伊代の将来が不安なんやけど」

「大丈夫です――姉さま。私は――あと少しなので」


 寂しそうな顔で伊代ちゃんがほほ笑む。

 そうじゃ無いんだけど、と緋乃女さんが大きくため息を付いている。うん、伊代ちゃんって何と言うか天然だしね!


 だけど、あと少し……か。言葉の意味が気になるけれど、どいうやら今の俺が踏み入って聞けることではなさそうだった。

とってもとってもおそくなりまs( ˘ω˘)スヤァ

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