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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第七章:勇者な執事と東の果ての新婚旅行。はい、鍛えてますから!
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18話:買い物に行くと珍しいカップ麺があると思わず手が伸びてしまうのは割と普通……普通だよね?

 即身仏となった師匠から目が外せない。


 何だ?何で?どうして?そんな言葉ばかりが頭の中でグルグルと回り続けて思わず頭を抱えてしまう。けれども、これでどうして無限流があんなにも流行っていた理由が分かった。


 ――師匠がいたからだったのだ。うん、とっても簡単な話だったね!


「ハセヲ様はこの世界に召喚された時代。地は荒れ果て、人々は困窮し――この地は戦乱に満ち満ちておりました。しかしハセヲ様は勇者ですら無い身でありながら、魔王達と彼らの率いる魔物たちを薙ぎ払い、この地を数年とかからずに平定してみせたのです」

「……ごめん、少し頭が痛い。え、何?うちの師匠何やってるの!?」


 この世界に勇者として召喚されていないのも驚きであるのに、魔王や魔物を人の身で薙ぎ払ったて……。いや、師匠ならできるな!できちゃうなぁ……。


「そして、この島国を再建されるにあたり、ハセヲ様の祖国に近い形を残されることにしたと文献に記されております。――こちらを」


 伊代ちゃんがそう言って、古めかしい書物を俺に見せてくれる。


 曰く、全てはいずれこの世界に落ちる馬鹿弟子の為に遺す。馬鹿弟子よ――()()()()()。との事だった。


 終局。それは無限流、その最終奥義。すべてを極め、自らのうちから発露する己だけの技。それに至るには自らの技を全て一から見直す必要がある。


 終局の儀、見合い稽古。


 本来であればその中で俺が見せる筈だったモノ。正統継承者たる資格を得た時、最後に見せるモノだった。


 けれども俺は――極めすぎてしまった。


 始まりの技。その奥義――無限流/刃/奥義ノ壱/武御雷にて、我が師の腕を刀ごと両断し、見合い稽古は始まりで終わってしまったのだった。


 師匠はわざわざ俺を終局に至らせるためだけにこの国を故郷の国に似せて作り上げ、無限なる技を広めたのだ。――俺がこの地に郷愁を求めてやって来ると信じて。


 いや、待て。そもそもがおかしい。まず、どうして五百年も前に俺がこの世界に来ることを知っていたんだ?俺はこの世界に来てまだ一年も経っていない。

 いくら予言といえど、異世界の住人の誰それがやって来ると分かるわけが無いのだ。だって、世界が違えば神も違うのだから。


「ですが、分っていたのです。分かっていたからこそ、この土地は修羅の国となり、貴方に終局を授けんと皆はその身を鍛え上げてきたのですから。なぜなら真人様。貴方は――」

「うん、少しごめん!」


 そう言って、驚く伊代ちゃんを抱きかかえてその部屋を飛び出る。瞬間、爆音と共に天井が崩れ、吹き飛んだ。うん、危ないな!


「申し訳ありません、真人様。予知よりも彼らの到着が早かったようです」

「うん、()()()()()ならそんなものなんだろうね。それで?唐突に天井をぶち破って来てくれたおバカさんは誰かな?」

「――それを話す馬鹿がいるのか?」


 現れた誰かに振りかぶられた拳は爆風を纏い、壁を諸共に吹き飛ばす。木造とはいえ、容易く吹き飛ばすとは中々にパワフルな奴だね!


「いないだろうね?けれど、何者かは想像はできる。あんた――アラガミだろう?」

「さぁてな!」


 筋骨隆々な男は流れるように伊代ちゃんを抱きかかえた俺に拳を振り回す。当たらなければどうと言う事はないのだろうけれど、当たったら伊代ちゃんごと粉みじんになってしまいそうだよ!


「戦略的撤退!うん、申し訳ないけれど君を相手にするのは中々に骨が折れそうだし、逃げさせてもらうよ」

「させると――」

「いいや、押し通る」


 木札を巻いて分身が増える。他方に巻いていた分身を全て消して、今この瞬間に集中させてもらう。それほどまでにこの男は強い。


「はっ!分身如きで!」

「いいや、これは俺だから変わらないのさ」


――無限流/無手/穿


 二人の俺が拳を真直ぐに振りぬき、男の腹を捕らえる。だが、固い!


「ぐ、なるほど。流石は()()という所か。雑兵どもとは比べ物にならん。だが!」


 ゴウと魔力が男のうちから爆発的に溢れ出し、分身がかき消される。ああ、こいつ――魔王クラスだ!


「――参る」


 トンと風の音すらなく男の拳が俺の頭のあった位置を掠める。本当にもう危ないなぁ!

 くるんと回ってその顎を蹴り上げる――が、躱され、俺の背に向けてヤクザなキックを浴びせかける。寸で飛びのき、そのまま階段を転がるように駆け降りる。


「真人様、予言。予言を――」

「舌を噛むから話は後!っ、来る!」


 この階段はどうしても脇道に抜けることなく直線に降りなければならない。


 「鳥居の結界」そのせいで脇道へ逸れても元来た道へと戻ってしまうからだ。


 だからこそ、その男にとって今の俺たちはただの狙いやすい的でしかない。


「さぁ、ここで死ね。水無瀬真人」


 高々度に圧縮された魔力が漆黒の一閃となり俺と伊代ちゃんへ向けて放たれる。


 うん、だけどそれは想定内なんだよ?


――第壱の秘術/八咫鏡


 くるんと階段を飛び降りながら魔力砲の全てを八咫鏡にて受け止めていく。純然たる威力だけで言えばシルヴィアの魔力砲に匹敵するのではないだろうか?ああもう、どうしてこんな奴が暗殺者として送り込まれて来るのかな!俺ってばそんなに恨まれて……いそうだな!

 すべてを受け止めきり、そのあふれ出るエネルギーを持ってきていた木剣に込めて拳を振るう。


――第弐の秘術/叢雲の剣!


 溢れんばかりに輝く黄金の剣は閃光となり茜色に染まり出した山肌を鳥居に沿って駆け上がる。


「これは――!」


 爆音が響き渡り、光が弾ける。けれども奴がどうなったか確認する暇すら惜しい。三十六計逃げるに如かず!うん、あのくらいじゃ死なないだろうし!面倒くさいから逃げるんだよおおお!!


 勢いのままに階段を全て下り、正門を蹴破って町へと飛び出していく。目的地は朝方に行った修羅の城。


 背後から再び爆音が響き、社の跡地から膨大な魔力の気配が溢れ出す。うん、どうにか無事にたどり着きたいな!

今日も今日とて遅くなりま( ˘ω˘)スヤァ

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