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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第七章:勇者な執事と東の果ての新婚旅行。はい、鍛えてますから!
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11話:旅館の窓際にあるテーブルと椅子のあるスペースって何とも言えない癒しスポットだよね?

 晩餐会と言う名の宴会を終えて、夜。三つの月が昇る空を部屋の窓から眺める。


 伊代と名乗った少女もその場にいたので先ほどの話をしたかったのだが、悲しいかな酔っぱらい(羅刹さん)に絡まれて話どころではなくなってしまった。

 酔っぱらいはどこの世界でも迷惑なものだ。酩酊して暴れまわった挙句、翌日にはその記憶をストンと無くしていたりしたものだ。うん、俺の御師匠さんのことである。本当に最後に逢ったあの日までそんな調子だったからね!困ったものだったよ!


 はぁ、と息を吐いて魔導冷蔵庫から取り出した冷えたお茶を飲む。


 彼女の――伊代の言う予言とはいかなるものなのだろうか?


 予言。そう呼ばれるものは俺の元居た世界にも存在していた。世界に刻まれたレールともいうべき指標があると()()して生み出された技術ではあるけれど、結局のところ些細なことで崩れてしまう予知というよりも予測程度のものでしかなかった。有名どころで言えば二千年あたりに有名になった某予言の書だろうか?結局のところ当たることは無かったと言われているが、それもそうだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()その結果があるのだから。だから、あの預言書には先がある。つまるところ、俺の世界の予言は予測であり、予見でしかない。だからこそ回避することができる。


――だが、それがもしも確定された未来を予言したものだったならばどうだろう?


 それはもはや知ることはできてもどう足掻いても()()()()()()()。そう、人ではその確約されてしまった未来はどう足掻いても避ける事ができないのだ。――もし変えることができるならば、それは神か――或いは別の世界からの干渉があった場合だろう。


 尤も、その事を仮定したならばおかしなことになる。うん、だって俺が来ることや俺がやることを彼女は予言して見せたのだ。つまり、俺もまたこの世界に組み込まれていることになる。だとすれば、彼女は俺に何を予言するつもりなのだろうか?


 まさかとは思うが、俺とサクラちゃんとの円満な夫婦生活を予言するから、わざわざお堂まで来てください!なんていう訳もない。うん、どう考えても悪い方の予言をするつもりだよね!はぁ、憂鬱だ……。ようやっと、幸せだと思える日々を手に入れることができたのに……。いっそのこと聞かずに帰ってしまおうかとも思うけれど、確定した未来の予言だとすれば聞いておかなければ確実に後悔するだろう。うん、家族を今度こそ守ると誓ったんだ。生ける時も死ぬ時もサクラちゃんを、フレアを、シルヴィアを、ビオラちゃんをどんな災厄からも守ると。だから――


「――難しい顔をして、どうしたのですか?」

「……ごめん、起こしちゃったかな?」


 美しい白銀の髪をハラリと落とし、サクラちゃんが俺のいる障子で区切られている広縁(ひろえん)に顔を覗かせる。月明かりに照らされて普段でも幻想的なレベルで綺麗なのに、更に美しく見える。


「いえ、単に横にまーくんがいませんでしたから傍にいたいなって思いまして」


 頬を赤く染めて、サクラちゃんが俺の膝に乗って来る。ふわりとした香りと共に柔らかな重みが何とも心地いい。


「大好きだよ、サクラちゃん」

「ふふ、私もです。……それで、難しい顔をしてどうしたんです?」


 俺の顔を覗き込んで、サクラちゃんが優しく微笑む。ああ、これだけで癒されるぅ……。


「……俺にもよくわからないけど、何か面倒くさそうなことが起きそうでね。無い頭を巡らせていたところさ」


 またため息を付いてサクラちゃんを優しく両の手で包み込む。


「まーくんだけで悩んじゃダメです。だって――もうちゃんとした夫婦なんです。まーくんのお悩みは私のお悩みなんですから」


 そう言ってスリスリと俺の胸に猫のように頬を摺り寄せる。


「ありがとね、サクラちゃん。そうだなぁどう話したものか――」


 とりあえず、お風呂で逢ったという事は省くとして、予言の少女――伊代に出逢った話をサクラちゃんに伝えてみる。うん、お風呂で逢っただなんていうと変な誤解を招くからね!そう、決して他意は無い。無いのである!


「予言……まーくんはどう考えているんです?」

「んー。聞いてみないと分からないと言うのが一つ。その予言があからさまに悪い事な気がして溜まらないというのが一つ。話すだけならあの場で言えば良かったのに、東堂まで呼び出した理由が不可思議なのが一つ。ともあれ、行かざるを得ないんだよね……」


 言ってサクラちゃんの頭に頬を摺り寄せる。自分ではそうは思っていなかったが、どうやら俺はらしくもなく不安になっていたようだ。


「大丈夫ですよ。まーくんだったら、どんな予言だって乗り越えられます。それに――困難は夫婦で乗り越えて行けばいいんです。私もいます、フレアちゃんもいます、シルヴィアさんだって、ビオラちゃんもいるんです。それに、ロベリアちゃんに林檎ちゃん、夏凛ちゃんに苺ちゃんだって、まーくんの為だったら火の中水の中です!……だから、一人で不安にならないでください」


 微笑みながら見上げるサクラちゃん。


――ああ、俺は本当に幸せ者だ。


「ありがとう、サクラちゃん。愛してる」

「私もですよ、まーくん。愛しています」


 互いの唇が触れたのは必然。


 月明かりに照らされて、俺は愛すべきこの美しい人を生涯愛し続ける事を今一度――誓ったのだった。

今日は遅いけれど早めに?( ˘ω˘)スヤァ

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