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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第七章:勇者な執事と東の果ての新婚旅行。はい、鍛えてますから!
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1話:船旅をしてどこか遠くへ行きたいと思うときって大体頭が疲れ切ってる時だよね?

 白い雲、蒼い海原、海鳥たちは楽し気に空を舞い、その鳥を大きな魔物が牙をむいて海の中から飛び上がって食らいついていた。


 ここは大海原のど真ん中。巨大貨物()()の船首甲板の先っちょで俺は吠えるように叫ぶ。


「海賊王に俺はな「おろろろろ……」うん、具合が悪いんなら部屋で寝てればいいと思うんだけど!」


 海に虹色の何かを吐瀉しているライガーに思わず突っ込みを入れる。そういえばクロエも体調が悪そうだったし、猫系の獣人は船が苦手なんだろうか?


「う、うるさいなぁ……。風に当たっていた方がまだマシなんだ。はぁぁ……こんなんなら、付いてこなけりゃ……うぼぁ……」

「はぁぁ、仕方ないなぁ。ほら背中さすってやるから出すもん全部出せ」


 優しく華奢なライガーの背中をさすってやる。……うん?なんだろう、背中にひも的な……ブラ?いやいや、流石に無いだろう。うん、大胸筋矯正サポーターでもつけてるんだな!


「ぐ、何か失礼なことを考えている眼をしている!」

「ははは、気のせいだよ気のせい」


 笑ってごまかして背中を続けてさすってあげる。


 この船の名はグランシップ・ブレイブティアーズ。以前、フレイア様に持ち掛けたサテラさんに開発を委託する商船が形になったモノだ。色々とこちらが要請した設計に改修に改修を加え、サテラさんの最終稿によって作られた船である。造船計画の中心はサテラさんだったのでティアーズの銘が刻まれているわけだ。……変形はしないはず。うん、設計図だと大丈夫だったから大丈夫。


 想定していた予算よりも一点五倍ほどかかったけれど、一応は想定内の範囲で納めることはできた。だけど、予定していた四六センチ(ロマン)砲は予算オーバーとの事で泣く泣く収納式の三六センチ砲になり、船の全長も予定より少し小さめに仕上げられている。それでも全長は二百メートルほど。十二分に巨大商船と言っていいだろう。


 そして今回、この船の目的地は俺たちのいる大陸の東側――そこにある東の果ての島国だ。


――修羅の国。


 魔王、羅刹豪刹の納める鬼の国。決してパイナップルが転がっていることもあるという俺の元居た世界のとある県ではない。豚骨ラーメンが有名だってことも、水炊きの名店があるということでもなく、普通に鬼の国だから修羅の国らしい。うん、そこは捻りがあっても良かったかなって思うんだ。せめて明太子は欲しいところなんだけれど、あるのかな?あってくれたら嬉しいんだけどな!


「うぷ……何だよメンタイコって。よくわかんないけど、新婚旅行だからって張り切り過ぎじゃないか、おまえ?」


 ライガーの目が何だかジト目で怖いので、視線をそらして広がるどこまでも広がる水平線を眺める。

 うん、そうかな?そうかもしれない。

 結婚から一月。シルヴィアの領との取り決めやら、フレアと結婚したことによるヴァルカスとの協約の変更やらでてんやわんやで何回も死んで大魔王と戦ってまた何回も死ぬ羽目になったのだ。うん、本当に容赦なさすぎるんだよね、大魔王!というか、いつの間にまた買ったんだよピンクのディケ〇ドライバー……。くそう、俺にも貸して欲しい……!


「相変わらず言ってる意味が分からん。というか、お前こそここにいていいのか?折角の新婚旅行だし、嫁の四人といちゃつけばいいと思うんだけど」

「な、なんだか言葉にトゲがあるなぁ。うん、なんというかだね。ちょっと四人の目が怖くってね……」

「怖いって……」


 そう、怖いのだ。結婚して一か月。キス以上の進展がまだ、無い。


 フレアはよくわかっていなさそうだけれど、サクラちゃんやシルヴィア、ビオラちゃんの目がなんだか怪しい。うん、こっちとしてもバッチコイなんだけど、まだ恥ずかしさが勝って踏み込めていないのだ。

 俺だって、色々ヤリタイよ?だけどこちとら童貞。どう攻めればいいかわからんのですよ!


「のですよ!と語気を強められてもボクが知るわけが無いじゃないか!」

「なんだ、ライガーもまだか……」

「結婚してないんだから当たり前だろ!って、なにを言わせるだー!……うぷっ」


 ふ、と鼻で笑ってやると素早い動きで飛び掛かり――そのまま床に突っ伏した。ああもう、急に激しく動くから気持ち悪くなるんだよ。


「ぜぇ、ぜぇ、ともかく、お世継ぎは早いにこしたことはないんだろう?それなら、初めてだからって戸惑ってる暇は無いと思うんだが……」

「そうは言うがな?こう、もっとシチュエーションというか、ロマンティックなタイミングにだね……」

「乙女か!」


 ズビシとテンポよくライガーの突っ込みが入る。何と見事な突っ込み……!うん、本当にタイミングを見計らっていたんだよ?そう、それがつまるところはこの新婚旅行。ここで俺は童貞を捨てる……!す、捨てれたらいいなぁ!


「何で希望的観測なんだよ……」

「童貞にそこまで期待しないでくれ……」


 ふぅ、とため息をついて空を見上げる。ああ、綺麗な青空だ……。


 圧倒的経験値不足なのが否めない。こうなる前にさっさと捨ててしまっておけばよかったのだけれど、こういう事にもうちの神様はうるさかったわけで、巫子として次代になるまで純潔であるべきだ!とかなんとか。うん、先代の義母さんは普通に経産婦じゃないの?と神様に突っ込んだら目をそっとそらされたのも今では想い出の中。くそう、あの時もっと深く言っておけばこんな事には……。


「良いからとっとヤレよ!」

「しかしだな!」

「しかしじゃない!」

「だけどだね!」

「言い訳を辞めろぉ!」


 ぐぬぬ、とライガーとにらみ合う。というか、何でライガーはこんなに突っ込んでくるんだよ!まぁ、うん、姫騎士の隊長だし?そういう事は気にならないでもないんだろうけど?


「それは……こっちだっていつまでも悶々とされたら溜まったもんじゃ無いんだよ!玉無しというぞ!玉無しと!」

「ぐふぅ!?くそう、言い返せねぇ……」


 お前はどうだ!と言いたいところだけれど、こっちと違ってライガーはまだ未婚。迫りくる相手がまだいないわけだ。ぐぬぬ、どこで、どうするべきか……うん、考えておこう。


「……逃げたな」

「ニゲテナイヨ」


 目をギギギっとそらしたところで、ザパン水しぶきを上げて巨大な魔物が船の近くで跳ねた。流石にあれは近すぎるんじゃあないかな?


 ジリリリと警報が鳴り響き、三六センチの砲台が展開する。ううん、見事なロングバレル!ああ、見栄えもいいなぁ!


『ご搭乗の皆様。巨大な魔物の出現の為、砲による殲滅を行います。衝撃に備えてください』


 操舵室のサテラさんの声が甲板に響き、目標に向けて砲が稼働する。


『感良し、目標――セット。ってぇーっ!』


 爆発音と共にに閃光が奔り、巨大な魚系の魔物の頭部を見事に打ち貫いたのだった。。


「……あれ?おかしいな。俺が見た設計だと火薬砲だったはずなんだけど、今のってどう見ても魔力砲だったよね、ライガー?」

「え?なに?聞こえない!」

「うん、砲撃音で耳が死んでるね!何でふさいでないかなぁ!ともかく、聞こえてるよねサテラさん!どういう事かな!」


 艦首から艦橋の操舵室を見上げる。


『コストと安全上の問題ですね。火薬砲では反動で船の傾きが大きく出過ぎてしまいますので。あと、火薬砲より魔力砲が安上がりです』


 なるほど、サテラさんの言い分はよくわかった。確かにその通りだ。だけど、それ以外に色々と改造してるよね?してないかな?


『……ああ、申し訳ありません。電波が――悪くて――』


 ブツリ、と音声が途切れ、同時に展開していた砲台が蒸気を上げつつ収納されていく。く、ごまかされた!

 うん、流石に変な機構詰んでないよね?武装船だけど、あくまで商船だからね!商船なんだけど……まさか変形しないよね?く、い、嫌な予感しかしない……!


「え、何だって?」

「何も言ってないよ、お爺ちゃん?」


 ふらふらとしているライガーを抱えて船内に戻ることにする。また魔物も出てきそうだしね!……あと、船内を少しでも確認しておかないと!怖いな!

と言う事でいつも通り遅くなりました。

第七章も楽しんで読んでいただければと思いま( ˘ω˘)スヤァ

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