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序:もう少しで届きそうで届かない自販機の下って魔窟だよね?
――君は、君は優しく微笑むばかり。
手を伸ばしても届かない。
声を出しても届かない。
これでいったい幾度目だろうか?
数えきれないほどに彼女に出会い、数えきれないほどに見送られてきた。
――それでも俺は手を伸ばす。
必ず君の手をまた握ってみせるのだと。
必ず君に声を届けてみせるのだと。
必ず君の元へ行くのだと。
不可能という言葉を踏みつぶしてでも、俺は――
ふわりと俺の手が揺らめく。
今回もまた届かなかった。けれども、いつか、絶対に。
――ああそうだ。
俺は約束を、必ず守る男なのだから――