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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
挿話:ドキ!女の子だらけのパジャマパーティー!~ポロリは無いよ~
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挿話:ドキ!女の子だらけのパジャマパーティー!~ポロリは無いよ~8

 楽しく楽しい夜が流れていく。


 酒を酌み交わすこともなく、ここまで楽しい夜はいつぶりだったでしょうか?


 目にクマを作りながら必死になって魔導家電の開発に打ち込んで、この子が倒れたのは一体いつの日だったでしょうか?

 アリステラ様に泣きながら怒られて、それ以来規則正しく頑張るように心がけるようになったのは今では懐かしく思います。……そう、こんな風に思えるのも全て真人様のおかげ。


 あの日――私が私を奪われた日、彼に救われなければ、私の全てをあの男……バアルに奪われていました。 勇者であることを捨てたあの日、自分の神を殺した、記憶を捨てたあの日。私は――その頃の本当の私の記憶を取り戻したのです。


 けれど、だからと言って私が勇者(あの頃)に戻るという事はありません。だって、私がそんな軌跡をたどっていたのだという記録でしかなかったのですから。


「そういえば、サテラさんて元勇者だって話だけど詳しい話って聞いたことなかったですよね?もとはどんな勇者さんだったんですか?」


 林檎がをパンケーキを頬張りながら小首をかしげている。まったく、口の端にクリームが着いていますよ?


「そうですね、いたって普通の勇者でした。普通に魔物を殺し、魔王を殺し、最もあの頃は勇者教なんてありませんでしたら勇者の扱いはもっとひどいモノでしたが。よくて傭兵、下手をすれば兵器、もっと悪ければ道具としか見られませんでしたね」

「お、思った以上に殺伐としていたんですね……」


 うへーという顔をしながら林檎がさらにパンケーキをもぐもぐと口に運んでいます。


「林檎、みんなの分まで食う気?」

「んへ、ごめんごめん」


 夏凛に横からパンケーキを取られて、てへぺろと可愛く微笑んでいるけれど、うん、これは反省していませんねぇ。


「……その時の私たちの目的は魔王を殺すことでも、魔物を殲滅することでもありませんでした」

「それでは何と戦われていたのですか?」


 サクラ様が首をかしげます。

 それはそうでしょう。今の形ができたのは()()()()()()()()()()。それ以前はもっと違うものだったのですから。


「――世界の敵ですよ」


 けれどもそれは倒された。だからグリムは――大魔王様がここにいる。すべてを終わらせるために、終わりの日を迎えるために……。


「ううん、それが元々の勇者として召喚された目的なら今の私たちってかなり変じゃない?うーん……そういえば、うちの神様にこの世界にいる魔王とか倒せばいいんじゃないかな!とか割と適当なこと言ってたような……」

「だな。絶対に倒して滅ぼせとは言っていなかったと思う」

「うん、私の神様も……」


 勇者三人娘もうんうん、と頷きあっています。


――やはり、神はいつになっても変わることは無いのでしょう。


 私の神もそうでした。私たちのことなんて、勇者なんてただの駒としか思っていない。欺瞞と自己愛に満ちたクソを煮詰めたような存在。それが私の知る神という存在でした。

 どんなに頑張って頑張って頑張って頑張っても、彼らにとっては物語が面白くなる一要素でしかありません。

 だから――私は最後にその神と対峙し、殺した。

 チートに頼らず、自らの力で組み上げたブラスティアの――その最終形態の手によって。


 そして私は自らの生を手にしたのです。私の――私という記憶を代償にして。


「ごめんなさい、何だか湿っぽい話になってしまいましたね。まぁ、そうですね。私の神は魔物と魔王殺しをモットーとする神でして、そのためならどんなことでもさせる神でしたので。ええ、皆さんには無いようですが、神託で勇者をこき使っていたんです。強制力はありませんが、次に死んだときにどこか欠損させられていたり、バッドステータスを乗せられたりするので……まぁほぼ強制でしたが」

「そういえば菜乃花姉さんもうちの神様趣味で生きてるろくでもない奴だーって言ってたかな。うん、姉さんと話がすごく合う神って言ってたから本当にろくでもないんじゃあないかな!」


 シルヴィア様が頭を抱えて大きくため息をつかれています。

 いえ、その神様であれば私もものすごく仲良くなれたと思うんです。ええ、とっても?


「え?」

「まぁそれは兎も角として、神様という存在はこの世界を管理しようだなんて毛頭思っていない存在なんです。行ってしまえば力ある貴族がボードゲームをしている感覚ですね」

「それはうん、最悪だな……」

「最悪です。世界の為になんて考えなくても、一緒に楽しむ仲間が欲しくて呼んだり、自分の主人公になって欲しくて呼ぶのならまだましでした。ええ、単純に自分の思う通りにするための手駒として呼ばれた私のような勇者は本当に最悪でしたから」


 つまるところは神様ガチャ。呼ばれるのも運ならば、呼んだのがどの神なのかも運でした。本当にクソを煮詰めたような……コホン、流石に二度も言うのは口が汚いですね。猛省いたします。


「……なら、本当に何で勇者を神様は呼ぶのでしょう?もう倒す対象がいなければ……」

「良い疑問ですね、サクラ様。答えは人と魔王達との均衡を護るためです。魔王に対して普通の人は――あまりにも無力ですから」


 だから人のための勇者はいても魔王達のための勇者がいない。なぜなら魔王達の神は――


「にゃむ……」

「っと、もうこんな時間ですか。フレア様もお眠のようですし、今日はここまでとしましょう」


 そう言って、私はスクリと立ち上がり、残っていたお菓子やジュースを片付けていきます。


「あ、お手伝いします」「私も……」


 ビオラ様とロベリアがオボンをもって手伝ってくださいます。これならばすぐに済ませられるでしょう。


「サテラ様……。一つだけ質問をしてもいいですか?」

「なんですか、サクラ様」


 枕を抱えたサクラ様がジッと私を見つめます。


「均衡を保つために勇者を呼ぶんならどうしてまーくんはお父様の所に……大魔王の間に召喚されたんですか?」

「……それは私にもわかりかねます。彼の神は――まだ誰なのかわかっていませんから」


 彼を呼び出したのは均衡を護る神か、或いは――その答えはまだ出ていません。けれども、彼がいなければ私も、フレア様も、シルヴィア様も、ビオラさんも、林檎たちさえもこの場に居なかったのですから、彼を呼び出した神様には……まぁ少しくらいは感謝してあげてもいいかもしれませんね。


「ふふ、ですね。さて、眠る前にあれ!あれやりましょう!」


 そう言ってサクラ様が枕を構えています。うん、駄目ですよ?駄目ですからね?サクラ様は魔王様。シルヴィア様も魔王様です。フレア様も魔王様候補なんです。勇者も三人いますし?姫騎士たちもいますから、この部屋が危険で危ないですから!


「だ、駄目です?」

「駄目です!」


 むぅ、と唇を尖らせる子供っぽいサクラ様をなだめて、みんなでお布団につきます。真人様の電気はまだ消えていません。ある程度は終わらせてきたはずなのですが、まだお仕事がのこっていたのでしょうか?


 ……彼は――いつ――眠っているのでしょ、う。


 うとうとと迫りくる心地よい眠気に私は身を任せ、私は意識を手放したのでした。この幸せな日々が、この子たちの幸せな日々がいつまでも続きますようにと願いながら――。

という事でこれにて挿話は終わりになります。

ご覧いただきありがとうございます。


次話より第7章を開始いたします。


是非読んでいただければ幸いでs( ˘ω˘)スヤァ

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