13話:ふわふわ系のかき氷ってすごく美味しいけどなんだかお財布まで寒くなる気がするよね?
地底湖の社を出て、アコナイトさんの案内で地上への道を進む。
クリュメノスさんはここにいることがお仕事らしいから、また引きこもり続けるらしい。うん、新作ゲームもあったしたまに遊びに来てみようかな?
「ええ是非お願いします。というか、兄はネトゲと言うもので女の子のキャラになり切って遊んでいるようでして、私にはどうにも理解が……」
アコナイトさんの目が何だか遠くを見ている。
まぁ、流石に自分の兄がネカマだったことがわかったら、異世界じゃなくても衝撃的だと思うから仕方ないかな!というか、あの体格でイケメンなのにネカマなのかよ!……今度じっくりとお話をしてみるとしよう。うん、そうしよう。
迷宮の裏道から抜けて、大きな扉に突き当たる。そこはこれまでのレンガ造りの道とは違う、もっと古い神殿の入り口のようだった。
「もともと大魔王城の地下には何かしらの神殿が建てられていたそうなんです。ここはからは埋め立てられた神殿の一部を改装して大魔王城への入り口として使用しているエリアになります。もしかすると、ここの事は真人さんもご存じかだと思いますよ」
そう言ってアコナイトさんが大きな扉を開くと、極寒の冷気が辺りに溢れ出した。
「な、中、全部凍って――人が!?」
ナナちゃんが驚きと恐怖の声をあげる。それもそうだろう、扉の先に張り巡らされた氷の中には何人もの人が氷漬けにされていたのだから。
そう。ココこそが氷極結界。サクラちゃんの絶対零度にて封じられた勇者たちが眠る場所なのだ。
「ここは復活を阻止しなければならなかった勇者や、人としての精神を摩耗しきって廃人となってしまった勇者たちが眠っている場所でもあります。まれに彼らを復活せんとする者もいるようですが、張り巡らされた氷はヴォルガイアのフレイア様でなければ溶かすことは叶わないでしょう。尤も、フレイア様の炎で焼かれれば、氷どころか勇者の魂も焼き尽くされてしまうかもしれませんが」
ふふふ、とアコナイトさんが冗談交じりに笑っているけれど、ナナちゃんの表情はどんどん青くなって来ている。まぁ、こんなことになるのは余程のことをした奴か、サクラちゃんに襲い掛かった不届き千万な輩しかいないから大丈夫だよ!と言ったら何だかもっと青くなっていた。うん、真緑になってないかな?
「あ、あはは、自分の主がそんな風にできる人だと聞いたら誰でもビックリしちゃいますよ」
手をつないでいるビオラちゃんが朗らかにそう言う。
あえて言わせてもらおう、これは決して、そう、決して浮気ではない。単純にビオラちゃんがまだ安定していないから、あふれる力を俺が受け止めるために手をつないでいるのだ。まったくもってやましい思いは無い。うん、無いからね?サクラちゃんには言わないでほしいなって。
「ぐす、ありのままをご報告いたしますね!」
「やめてくださいお願いします」
涙目なナナちゃんに思わず頭を下げる。斜め四五度。それは見事な最敬礼だった。
階段の最後の段を上がり切り、大きな扉の前にたどり着く。案内付きで更には裏道を通ったのに割と時間がかかった。流石は大魔王上地下迷宮といったところだろう。
「それでは、私の案内はここまでです。また兄のところへ戻らないといけませんから」
アコナイトさんがぺこりと頭を下げ、こちらに笑顔を見せる。
「真人さん、貴方のおかげで私はこうしてまた新しい人生を歩みだせました。このお礼はどうやってもきっとし尽くせないと思います。だから、兄と私の直属だった姫騎士のエルゥーシーに貴方のことをお任せしております。もし、私や兄にとりなせることがあったならあの子に伝えてください」
そうアコナイトさんが言い終わると扉が自動で閉まり始め、
「また、あのお社にお越しください。私も兄もお待ちしていますから」
最後の言葉とともに完全に閉じ切ったのだった。ううん、ハイテクだな?
「……どう考えてもここの道を通る勇者っていなさそうですね」
ナナちゃんが大きくため息をついてその場にへたり込んでしまった。どうやらここまでの道のりでかなり体力を消耗してしまっていたらしい。まぁ、水に揉まれて気絶したりもしてたし、疲れて当然だね!
「誰が原因ですか!誰が!」
あはは、と笑って目をそらしておく。俺は悪くないし!悪いのはビオラちゃんを井戸に突き落とした犯人だしね!
「それで、その、私はどうすればよいのでしょうか……?」
「ううん、そうだね。まずは犯人を引きずり出すところからかな?俺が見てもいつも通りだったメイド長のダリアさんが犯人なら、何かしらあるはずだからね」
そして、ダリアさん以外にも潜入している奴がいる可能性もある。監視してるおっちゃんは何も変な奴は通していないと言うし、もちろん監視カメラにもそんな影は映っていない。つまりは、もうすでに職員、或いは使用人として潜入しているということだ。
ここまでくると、潜入のプロかそれに準ずるチートを持っている奴、或いはもともとは魔王側だった人物とまで考えられる。まぁ、想像の範疇を出ないから何とも言えないんだけれども。
「でも、まずは心配してくれてるサクラちゃんのところからかな?行くサテラさんには道中よって、話をしていけばいいかなー」
だけど、まだビオラちゃんが生きていると言う情報は知られたくない。うん、本当に思った以上に重要な情報って武器になるから馬鹿にならないんだよね!
俺の執事服の裏地を剥いで、隠し持っておいていた針と糸で簡単にほっかむりを作ってあげる。
うん、これならきっとばれないよね!……後でクレオさんに怒られそうだけど。
「余計に怪しいと思いますが……」
「怪しくてもばれなければいいの!」
ナナちゃんがほっかむりの出来に不満があるようだ。材料が少ないから仕方ないんだよ!きちんと材料がそろっていれば、着ぐるみまで作るつもりだったからね!
「いや、着ぐるみはもっと駄目だと思いますよ!?」
びしりと俺の胸に掌をたたきつける。カンと慣らしたらコンと帰ってくる見事な反応。
ああ、いい突込みだなぁ!うん、何で二人してジトなのかな?はい、ありがとうございます!
おそくなりm( ˘ω˘)スヤァ




