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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第六章:消えたメイドと勇者な執事。脳細胞がトップギアだぜ!
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12話:本物とよくできた偽物って大体見た目は同じだから素人目には見分けがつかないよね?

「これで、よし。うん、何とか無事につながった……かな?」


 ラインが消えかかる前に盟約を結び、ビオラちゃんをもとの体に押し込んで差し上げる。もしもし?ええと大丈夫……かな?


「けほ、は、はい。なんだか、体がすごく重たいですが、大丈夫……みたいですね」


 布団に寝かせていたビオラちゃんの体が起き上がり、ふぅと大きく息をついた。


「丸二日間筋肉を動かしていなかったのですから、動きが硬くなるのは仕方ありませんね。回復魔法はかけてあるので肉体的には問題ないと思いますので、後は運動をしながら慣らしていってください」

「アコナイトさん、何から何までありがとうございます」


 ビオラちゃんが礼儀正しくアコナイトさんに頭を下げる。


「気にしないでくださいこれもお仕事ですから。それで、ビオラさんはこの方はご存じですか?」

「ふぇ!?」


 この方とアコナイトさんに指をさされたのはナナちゃんだった。うん、ナナちゃん?そんな風に驚くと自分に何かありますよと言っているようなものだよ?


「はい、アークルに新しく来られたメイドさんの一人で、確か……ナナさんですね。そういえば、どうしてここに?」


 ビオラちゃんは可愛らしくいつものように首をかしげる。やはりと言うか、ビオラちゃんはナナちゃんが何者なのかは知らない……というか気づいてすらいないらしい。


「ど、ドウシテデショネー」


 何だか冷汗をだらだらと垂らして視線をあらぬ方向に向けている。どう見ても怪しいよねこの子!


「さて、被害者本人が復活?したところで犯人の解明をしてもらおうと思うんだけど。うん、ぶっちゃけ誰に井戸から突き落とされたのかな?」

「推理モノだったら一番駄目な犯人解明じゃないですか!?」


 うん、いいかいナナちゃん。これは推理小説じゃないからいいんだよ。だって、目の前に答えがあるのにこねくり回して探し回るのって面倒くさいじゃない!と言ったら、ナナちゃんがものすごいジト目で見られてしまった。うん、ありがとうございます!


「その、えと、実は犯人はわかっているのですが、犯人じゃないような気がすると言いますか……」


 ビオラちゃんが申し訳なさそうな、何とも言えないような顔をしている。ううん、なんだか要領を得ないな?


「私を突き落としたメイド長――ダリアさんは私の知ってるダリアさんじゃなかった気がするんです」

「は――?」


 思いもよらぬ人がビオラちゃんの言葉にでてきて思わず頭を抱える。

 メイド長、ダリアさんはルナエルフでありながら、この大魔王城の諸々のメイド達を取りまとめる中心的役割な人物だ。聞くところによると姫騎士のミラさんやサラさんとは親戚関係だとの事だけど、細かい話は悲しいかなまだ聞いていないから知らなかったりする。

 けれども、彼女がユウシャ側なのだとすればあのメイド三人組がビオラちゃんのことを聞き出すのに選ばれたのも納得がいく。いくけれども、なんでビオラちゃんのことをそんなにも狙ったのか釈然としない。確かにビオラちゃんはユウシャの子孫だ。だけど、それだけ。いくら優れていようとユウシャじゃあない。殺されれば死んでしまうし、チートも持っているわけもない。だから勇者教に狙われるようなことは無いはずなんだけど、そこのところどうなのかな?


「……私の母は間違いなく勇者でした。目の前の困った人のために手を差し伸べることのできる……。まぁ、その代わり家事とかはてんで駄目で、いつもお城の部下の方に多大なご迷惑をお掛けしていましたけれど……」

「そういえばビオラちゃんのお父さんって……」

「私の父の名はフォカロル――風と海の魔王……でした。もうすでに勇者教に滅ぼされてしましましたが」


 魔王と勇者の娘。そう、ビオラちゃんはサクラちゃんと同じ境遇だったのだ。違うのはもうすでにビオラちゃんのお父さんは滅ぼされてしまっていると言う事。そして勇者だった彼女の母は――


「母は勇者教に連れていかれてしまいました。私を見逃してくれる代わりに勇者として働くんだと言っていましたが……」


 ビオラちゃんがごそごそと何かを取り出す。それは――茜色をした宝石のはまったブローチだった。


「コレが母なのだそうです」


 掌に収まるほどの大きさのブローチ。それが、彼女の母のだと言う。うん?いやいや、流石にそれはおかしい。だって、それはどう見ても……。


「私も初めて見たときは魔石だと思いました。けれど、けれど私にはわかってしまうんです。これが母なんだって、お母様は私のためにこんな姿にさせられてしまったのだと。そして、これを持っていたのは井戸の前で待っていたメイド長のダリアさんでした」


 ビオラちゃんはギュッと大事そうに茜色のブローチを握りしめてポロポロと涙をこぼす。


「私をあの場所に呼び出した手紙にはこうありました。――貴女は勇者アカネの遺志を継ぎ勇者とならなければならない。名を捨てし魔王の姫よ、今勇者となる時だ……と。だけど、私は……私です。勇者には、絶対になれないんです」


 だから、断るためにあの場所に行ったのだとビオラちゃんは言う。


「だけど、ダリアさんはそれはできないと言ってきたんです。私はお母様の代わりに魔王を撃たなければならないと。そう言ってこのブローチを見せつけてきたんです。……私の中のナノマシンが一斉に警戒態勢の入ったので、その時に洗脳の魔法かチートを使ってきたのだと思います。だから、これを奪い取って逃げようとしたのですが、情けないことに簡単に捕まってしまいまして……。その、やはり出来損ないはだめだ、と言われて井戸に投げ入れられてしまったんです」


 出来損ないと言うのは恐らく勇者と魔王の間の子供だと言う事だろう。うん、本当に失礼な奴だな!


「本来ならナノマシンの力で井戸に投げ入れられるくらいでは何ともないはずなんですけど、恐らく洗脳魔法をはじいた影響が出たみたいで動かなくなってしまっているみたいで……」


 しゅんとした表情でビオラちゃんが首を垂れる。まぁ、ビオラちゃんが悪いわけじゃないから後でサテラさんにでも相談してみることにしよう。


「それで、今の話に心当たりは?」

「ししし、知りませんよ!?そもそも勇者が石にされるとか初めて聞いたんですけれど!」


 アコナイトさんの突っ込みにナナちゃんがあわあわと答えている。うん、答えちゃってるよ!この子本当に潜入に向いてないんじゃないかなぁ……。誰だよ、この子派遣したの!

遅くなりまし( ˘ω˘)スヤァ

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