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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第六章:消えたメイドと勇者な執事。脳細胞がトップギアだぜ!
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10話:人にはどうしても譲れないモノがあるけれど車に乗ってても譲れないと事故っちゃいそうだよね?

 冥府の番人。

 大魔王四天王、クリュメノス・エルステイン。

 その強さは四天王の中でも上位クラスと言われ、出逢えばそれはすでに死を意味しているとすら言われる存在である。


 その絶対的な力をもつクリュメノスさんが奥座敷の六畳一間の部屋で正座をさせられていた。うん、筋骨隆々なイケメンな青年が、アニメの可愛い女の子キャラのピッチピチなTシャツを着ているのはどう見てもシュールとしか言いようがない光景だな!


「アコ、違うんだ。この前の事もあったし、兄ちゃんは心配でだな?」

「兄さんが心配してくれるのはとても嬉しいです。ですが、全く関係ないどころか、先日私を助けてくださった真人さんに対して必殺の攻撃を仕掛けるだなんて本当に何を考えているんですか!」


 腰に手を当ててクリュメノスさんをギロリと見下ろすアコナイトさんの眼光は鋭い。どうやらかなり怒らせてしまっているらしい。うん、本当に問答無用で殺しに来られちゃったからね!


「そもそも、真人さんはオウカ姫の婚約者なんですよ?それを知っていても襲い掛かったのですか?」

「はっ――勇者が姫様の婚約者だと!?馬鹿な!そんな馬鹿な事があってたまるか!大魔王様はいったい何を考えていらっしゃるのだ!」


 うん、普通に考えるとその通りだよね!見ず知らずの勇者が大事なお世継ぎの婿になっているんだし?というか、魔族側からしてみれば俺ってば敵側もいいところなんだよね。正直なところ、唐突に召喚されてしまったせいか俺には魔族側が敵とはどうしても思えない。そしてもちろん人の国も同じだ。単純に種族が違うから、国が違うから対立しているだけにしか見えないわけで。元居た世界とそうたいして変わらないよね!ね?


 ……ナナちゃんの返事がない。まだ意識戻ってないな、これ!


『仕方ありませんよ。私も初めてクリュメノスさんにお逢いした時は魂が抜けちゃうくらいびっくりしましたから。まぁ、今は実際抜けてるんですけどね!』


 あはは、と俺の横でプカプカ浮いているビオラちゃんが笑う。ううん、可愛いなぁ……っとなごんでいる場合じゃなかった。

 元々の目的、それはビオラちゃんを探し出すことだ。つまるところ、これで目的自体は達成なのだけれど、現状はまだビオラちゃんが無事だったとは言い難い。うん、どうやったらこの仮死状態解けて元の体に戻れるのかな?


「その娘の魂はほぼ精霊化してしまっている。つまるところ肉体に戻ろうにも肉体に容量が足りていない状態と言っていいだろう。本来精霊の肉体には相応の器になっているものなのだが、その娘の場合は魂に精霊が力を与えて精霊化しておるからな。あと数刻もすれば肉体は死に至り、繋がりを失った魂が昇華して完全な精霊となるだろう」


 何だか偉そうにクリュメノスさんがふん、と鼻を鳴らす。……もちろん正座したままで。うん、威厳もへったくれもないな!


「うーん、そもそも精霊になると何がダメなのかな?肉体と決別する以外でデメリットってあるの?」

「それについては私がご説明しましょう。基本的に精霊とは元から肉体のある精霊と持たないものがいます。肉体のある精霊は、この世界に根差しているので世界に還るなんてことは無いのですが、魂のみの精霊は基本的に不安定なので、どこか……例えば木や花、川や野山に宿って、その存在を保つ必要があるんです」


 アコナイトさんのいう所によると肉体がないと場所やモノに縛られてしまうのだそうだ。つまるところ、肉体がなくなって精霊となってしまえば――


「その娘はこの湖の精霊となるのだろうから、さらに上位化でもせぬ限りはここから出ることすら叶わなくなろうな」


 つまりはそういう事。ずーっとこの暗闇の中、このガラの微妙に悪いお兄さんのそばにずっとい続けなければならなくなるわけだ。うん、流石にそれは可哀そうかな!


「おい、結構失礼なこと考えてないか、お前!」

「事実だからしかたないね!というか、可愛い女の子がいていい環境にしたいのなら、もう少しこう部屋の中を何とかしろよぉ!なんだよこのオタ部屋は!!」


 そう、クリュメノスさんの部屋の中にはアニメやオタグッツが盛々沢山だった。漫画にゲームに雑誌にフィギュアにプラモに抱き枕にポスターに……。デスクトップPCに映るトップ画面もパンチラしてる女の子がバーンと出ている萌え萌えな仕様であった。うぉん、目が何だかチカチカするぞぉ!


「しゅ、趣味なのだから仕方あるまい!悪いか!」

「俺も好きだから悪いとは思わん!だけど、もう少し抑えろよおおお!」

「え、無理」


 駄目だこいつ、早く何とかしないと!


「うう、兄さんにここまで強く言ってくださる方が現れるだなんて……。大魔王様なら何とかしてくれると思っていたら、むしろ称賛して一緒に異世界に出歩いているという始末で……」


 よよよ、とアコナイトさんが涙をぬぐう。うん、夏と冬のオタクな祭典に行ってるって言ってたしね!苦労が偲ばれるなぁ……。


「ふん、誰にも迷惑をかけておらぬのだから問題はあるまい。我はただ、おのれの職務を全うしておるだけにすぎぬ。ただ、まぁ、少しだけ?趣味に走っているだけだからな!」

「どう見ても全力疾走で趣味に走ってるけどね!く、まさか十二体合体のエンジンオーG12と十一体合体のサムライハオー、更には十三体合体のワイルドトウサイキングまで揃えているとは……」


 並ぶおもちゃの中には大量の特撮玩具までそろっていた。くそう、お宝の山じゃあないかここは!


「私にはガラクタの山にしか見えませんけどね……」

『ごめんなさい、私にもなにがいいのかまでは……』


 そうだよね!仕方ないよね!女の子わかってくれるサクラちゃんが珍しいだけなんだもの!そういう事だから……ね?


「わかってはいる!だが、わかるわけにはいかんのだ!」


 何でか涙を流し、クリュメノスさんはミシリと大きな拳を握るのであった。

 彼こそオタクの鏡と言っていいだろう。うん、だけどね?気持ちだけは痛いほどわかるんだけど、そこはわからないとそろそろやばそう(捨てられそう)だから気を付けて!

今日も今日とて遅くなりま( ˘ω˘)スヤァ

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