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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第六章:消えたメイドと勇者な執事。脳細胞がトップギアだぜ!
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8話:ネトゲ廃人にペットボトルは必須と聞いたけど飲むためじゃ無いのがどうしてかって詳しく聞かない方がいいよね?

 薄く光る魔鉱の明かりの中、地底湖から続く洞窟を歩いて進んでいく。


「本来、勇者たちはここを通って地上にある大魔王城へと向かうようになっていたのですが、いろいろと事情があって封鎖することになったんです」


 テクテクと歩きながら四天王クリュメノスさんの妹さん、アコナイトさんが何だか申し訳なさそうだ。とはいえ、洞窟を進むうちに見えてきたダンジョンは石畳も整備され、ほころびはほとんど見受けられない。うん、なかなかに広い迷宮さんだよ、これ!


「いやいや、そんなことよりそ、その、ゆ、ゆゆ、幽霊とその人の死体が一緒にいるって!?」


 先ほど目覚めたナナちゃんが俺の服のすそをつかんでプルプルと震えて何だかかわいい。うん、確かにそれは俺も気になるところなんだけどね!


『ごめんなさい、自分でもどうしてこうなったかわからなくって……』


 申し訳なさそうに薄く光る方のビオラちゃんが頬に手を当てている。うん、半透明でもやっぱり可愛いなぁ!


「見た感じは何だか亡霊と言うよりも精霊みたいな感じがするよね?うん、人って普通は死んだらそのまま霊体がほどけて世界と一体化しちゃうんだよ。それが輪廻になってまた別の何かに生まれ変わるんだけれどね!」


 幽霊はその霊体が解けることなく形を保ったもの。そして亡霊は霊体の外側、霊殻(れいかく)が残留思念に沿って動くもので、つまるところは焼き付いたフィルムでしかない。

 今のビオラちゃんの状態は亡霊ではなく、幽霊……しかもここまで意識がはっきりしているのはかなり珍しかったりする。ここら辺は向こうの世界とあんまり変わりは無いのかな?


「本来、亡霊や幽霊になってしまったものを世界に還したり、冥界に導くのが私たちデスイーターと呼ばれる冥界の者の役目なんです。幽霊になった人はそのまま修行して、デスイーターとして覚醒することもあるんですよ?」


 つまるところ、デスイーターは死神みたいなもの。死んでしまった人たちを正しく導くのが役目なのだという。うん、けれどもビオラちゃんはどうなってるのかな?さっきも言った通り、精霊みたいになってる気がするんだけど?


「はい……。その、ここは魔鉱がとても多いので、自然魔力に満ちた場所で、精霊たちが好んで集まる場所なんです。だからあそこの地底湖には形を成さない下級精霊たちが多く住んでいるんです。ビオラさんは精霊に……特に水の精霊に親しまれやすかったとの事で、瀕死状態になって流れ着いたビオラさんを精霊たちが自分たちの一部を分けて助けようとした結果が……」

『今の状態、のようですね』


 あはは、と精霊になってしまったビオラちゃんがいつも通りかわいらしくはにかむ。そうするとこの体は完全な抜け殻と言う事になる。精霊になると言う事は魂が上位化してしまっていると言っても過言ではない。だのに、残されたこの肉体をどうするつもりなのかな?


「実のところ、まだビオラさんは生きています」

「へ?」


 聞いて思わず背負っていたビオラちゃんの体の息を確認するけれど、ピクリとも動く気配も、血の気もない。うん、どう見ても、その……。


「いわゆる仮死状態、と言うもので。精霊たちが体に入り込んで死ぬのを阻止している状態なんです。けれど、そのせいかビオラさんは体に戻ることも、肉体と結びつきがまだあるせいで冥界にお連れすることもできなくって……」

「なるほど、その原因を取り除くためにビオラちゃんの体を探していたわけね」


 会得が言ってうんうんと俺はうなずく。

 ナナちゃんはそれでもわからないらしく、頭を抱えてううんとうなっているけれど、普通の人にはこの話題はわかり辛いよね!というか、俺ってばほら忍者の前に巫子さんだったし、元の世界からこういう事には慣れている人だったりするのだ。みんなに言ってもなんでか信じてもらえないんだけど!


「それにしても、ダンジョンだとのお話ですが、トラップに引っかかったり魔物が出たりしませんね」


 不安げな様子なままナナちゃんが震える声でジッとアコナイトさんを見つめる。


「……ここはスタッフ用の通路になっていますから、魔物が出たりすることはありません。ただし、害意をもって探索すれば確実にトラップが発動するようになっていますけれど」

「ぴっ!?」


 なんだか涙目でナナちゃんが俺に縋り付いて来た。ううむ、そこまで膨らみは無いけれど、これは、これで……うん、そんなに睨まないでほしいな!はい、ありがとうございます!


 そうこうしているうちにたどり着いたのは――また地底湖だった。


 違うのは精霊たちのいる量と、湖の真ん中になぜか建てられている神社と、直線にいくつも並ぶ赤い鳥居。通常ならば入り口となるはずの場所にはなく、本殿を避けて鳥居がメインに据えられていた。


――まるで、どこかへの道になっているかのように。


 湖にかかるアーチ状の赤い橋を渡り、島に降り立つとその異様さをさらに感じることになった。遠目で見た鳥居は普通の神社に並べられているものよりもかなり大きく、しめ縄で幾重にも封印されているかのようだった。


 そして、その先。鳥居の先は――


「真人様」


 アコナイトさんの言葉に、はたと意識を戻す。


「それ以上見ない方がよろしいかと。ご説明は省きますが、あの門は貴方にとってあまりよろしく無いものらしいですから」

「うん、なんとなく察した。アレがそうなのか」


 元の世界の入り口。


 本来の俺のいるべき場所。いるべきだった場所。最早帰ることも叶わない、地球という惑星への入り口がそこにはあった。うん、ふさがれていて使えなくされてるけどね!


「この大規模な入口は現状ふさがれているので、こちらからも、もちろんあちら側からも繋がらなくなっているのですけれどね。まぁ、大魔王様とお兄様は一年に二回ほど出かけられているそうですが……」


 うん、つまるところ冬と夏のお祭りだね!通販で買ってるにしては量がおかしいと思っていたんだ。あの大魔王、異世界でオタクの祭典に参加してやがるよ!?


「王妃様あの事件があった後、ここは封印されて兄が管理するようになったのですが、兄はそれをいいことに引きこもりになってしまいまして……」


 ふと、よく見ると鳥居からはケーブルが何本か伸びている。……ネット回線!?大魔王ですら異世界とネットをするのに苦労してるってことを言っていたのに、クリュメノスさん直に引いてきちゃってるよこれ!


「仕事をしてくださっていることに違いは無いのですが、こう、もっと生活を――」


 アコナイトさんの言葉を遮るように本殿の扉が音を立てて開いた。


「わが眠りを――妨げる愚か者はどいつだあああああああああ!!」


 闇を纏う姿は、まさしく魔そのもの。

 漆黒の甲冑を纏い、闇の如きマントをはためかせ、髑髏の面の巨躯の化け物が咆哮を上げた。


 どんな引きこもりさんだよ!?

とってもとっても遅くなりまし( ˘ω˘)スヤァ

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