5話:将来の夢はと言われてすぐに答えられるほど目標って決めれていなかったりするものだよね?
「そう言う訳で変わった事とか見てないかな?」
「ビオラちゃんの事かな~?ん~変なところは何もなかったきがするけど~」
ビオラちゃんの朝の担当。洗濯場を仕切っているスキュラなプニカさんにお話を聞いてみるけれど、どうやら収穫は無いらしい。
「最近は真人さんと一緒に働けてたのし~とか~。真人さんと戦えて、怖かったけど~頑張れた~とか~、言ってたよ~」
うんうんと洗濯する手……基、触手の動きを止めることなくプニカさんはうんうんと頷く。
確かに最近ビオラちゃんには助けられてばかりだった気がする。グランブラッティアーもビオラちゃんがいなければ動かなかったし、ビオラちゃんがいなかったら莉愛ちゃんたち親子は助けることが出来なかった。みんなで力を合わせることもできないから、もしかするとあの子たちの心も一つにならなかっただろう。
そして最近のうちの領のメイドさんたちの教育係だ。
そう、たった数か月。
その数か月でビオラちゃんは一流と言っていいほどにメイドさんとして成長しており、アークルでお手伝いをしてもらっている。うん、ユウシャの子供って魔石を持って生まれなくてもそう言う出来る子が多いらしい。そういえば、あんずちゃんも俺が忍術を教えてあげるとスポンジが水を吸うようにすいすいと覚えていたっけ?お陰で師匠!とか呼ばれたりしてるのはここだけの話で流しておこう。
「だから、やっぱりおかしいの~。あんなに頑張り屋で~、いつかは真人さんのお手伝いが出来るようになって~オウカ様の~お付きのメイドさんになるんだ~って言ってたのにな~」
それは、俺も聞いたことの無かったビオラちゃんの将来の夢だった。
昼下がり、事務や兵士の人たちの食事の波が過ぎ去ったころ、ようやっとメイドさんたちのお昼の時間になる。こういった場所の配膳も彼女たちの仕事であるから仕方ないのであるが、このタイミングが一番メイドさんたちに話を聞きやすかったりする訳だ。うん、プニカさんは早々に仕事を終わらせてお昼寝しちゃうからこっちには来ないんだよね!アラク姉さんことクレオさんは現在は実家の方に帰省中で逢えなかった。まぁ、逢えなくても今回は大丈夫かな?うん、良く服破いてお世話になってお話してるからね!
「……何かしら?いま取り込み中なのだけれども?」
「そうかな?食べながら耳を貸すくらいは出来るんじゃあないかな?」
チッ、と舌打ちをしたのは泣きボクロのある金髪で縦ロールのお姉さん。周りにいる同じく緑髪を縦ロールにしているお姉さんに、赤毛のお姉さんが俺とナナちゃんを威圧感たっぷりに睨みつけてくれている。……えっと、これもお礼を言っていいのかな?
「真人さん、お礼を言う意味が分かりません」
「俺の師匠が言っていたんだ。綺麗な女性にジトられることはご褒美なんだって。はい、ナナちゃんありがとうございます!」
そう言うとナナちゃんは大きなため息をついて頭を抱えてしまった。うん、ごめんね?
「茶番はおしまい?用があるのならさっさと済ませて欲しいのだけれど?」
「うん、簡単な話だよ。お姉さんたちさ……誰にそそのかされたの?」
ガタン、と大きな音を鳴らして緑髪のお姉さんが水を零してしまった。
「な、何を言っているのかしら?私は、何もしていないわよ?」
「んん?俺は誰にそそのかされたんだって聞いたんだよ?なのに、何で……何もしていないって話になるのかな?」
カタカタと細かく震えて、緑髪のお姉さんの視線がくるくると泳ぐ。
「リエル?貴女、まさか……」
「ち、違いますわ!私はあの子の話をしただけで……!」
しただけ、と言いながらも緑髪のお姉さんは言葉を震わせる。うん、問題は誰に話したかなんだけれど、多分覚えてないんじゃないかな?
「!ど、どうしてそれを!?」
緑髪のお姉さんが驚きの声をあげ、ガタリと立ち上がる。うん、そんなことだろうと思っていたんだ。
「それで、なんだか話したことがある気がするのはそっちの二人もじゃないの?」
「それは……」
「確かにビオラの話をしたような気がするけれど……」
けれども、それがどこの、誰に、何を話したかまでは覚えていないのだと言う。うん、認識操作系のチート持ってるのかなー。洗脳や催眠、記憶操作と言うチートは最強のチートにも思えるけれども大体はかなり制限が多いらしい。条件が限定的であったり、催眠を掛けられるのが触れている間だったり、そもそも触れなければチートを発動できなかったりする。うん、条件さえ満たせればかなり強力なんだけどね!ヴォルガイアで思い切り痛い目を見たからねー。
だからこそ、この三人にも何らかの暗示が仕込まれている可能性がある。うん、単純に接触しただけとはどうしても思えないんだよ!せっかく侵入してきたんだから、操られる人を操って爆弾持って突貫させるくらいの事をしかねないのがユウシャだし?
「貴方の中の勇者のイメージってどんなことになってるんですか?」
「え、恥もプライドも外面も無い傭兵軍団……的な?」
「的な、て……」
偏見ましましなのは自分でも分かっているのだけれども、どうしてもそうとしか思えない。集団で攻めてきたこともあったけれど、統率なんてとれていなくて自分勝手に好き勝手動いていた。あれじゃあ勇者軍とは到底言えない。良くて傭兵。最悪、大砲を持ったチンピラだ。うん、始末に負えないなって!
「なんとも、うう、反論できないところがあるのが悲しいところですね」
「事実だから仕方ないね!」
ともあれ、このお姉さん三人は洗脳されている可能性があるから、サテラさんの所へ連れて行くことにしよう。これ以上のビオラちゃんの手掛かりはなさそうだけれど……。
とってもとってもとーっても遅くなりました!
申し訳ありま( ˘ω˘)スヤァ