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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
挿話:ペタン娘エルフメイドと伝説の黒包丁~伝説は伝説に~
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挿話:ペタン娘エルフメイドと伝説の黒包丁~伝説は伝説に~ 6

「では、判定を言い渡す!」


 貸し切りとなった個室の中、マネちゃんのお爺ちゃんが神妙な顔つきで書状を読み上げる。


「料理魔人キートス・M!貴殿の料理まっこと美味であった。まさかこんにゃくであれほどの旨味を引き出すとはああ、思い出すだけでも正しく天に昇るようだ……。といかん、話がそれるところであったな」


 ジュルリとあふれ出たよだれを拭い、再びキリっとマネちゃんのお爺ちゃんは表情を整える。

 マネちゃんは何だかあきれ顔である。うん、お爺ちゃんなんだからもう少し優しくして挙げていいんじゃないのかな?


「そして、料理人政の弟子――ペンス!貴殿の料理は語るに落ちる。ああ、確かに美味いのだろう。しかし、それは一般家庭料理としては、だ。料理人として出す料理ではない!キートス氏の料理は天にも昇るあじであった!それに比べてこれは、豚の餌あああああああああああああ!!」

「ぶ、ぶた、ぶたの、エサ……?お、おかしいな、なんで……」


 唖然とした表情で先輩は膝から崩れ落ちる。

 相手が悪すぎたと言うのも無きにしろあらずと言ったところではあるが、確かにその通り。先輩の作った料理は家庭料理の域を出ていなかった。ぶっちゃけ家庭料理でも微妙な部類だと俺は思うけどね!


「くかか!そう言う訳だ!この黒包丁はもらって行かせてもらう!」


 そう言って、魔人キートスは神棚に飾られている黒包丁に手を伸ばす。


「うん、流石にそれは待ってはくれないかな?」

「何だ?今の勝負に何か文句でもあるのかい、坊主」


 坊主って言われたよ!まぁ、言いたいことは数あれど、ヒトコトに纏めて行ってしまおう。


「このどう考えても仕組まれた茶番でそいつは上げられないって事さ」

「……何の事だ?」


 キートスの紅の瞳が怒りに燃え、俺を睨む。


「まず、ここの黒包丁の事を知っていることが一つ。うん、ここを何度も出入りしている俺ですら知らなかったのにどこから聞いたのかなって?そして二つ、なんで政さんのいないこのタイミングを選べたかがおかしい。というか、あの程度の料理なら政さんの方が美味いし?」

「はっ!言ってくれるじゃあねーか。ならなんだ?ここの料理長がいればこの包丁は渡さなくて済む、そう言いてーのか?」


 そう言いたいんだけど、分かってくれないかな?くれないよね!だからこういって差し上げる。


「いや、その必要もない。なぜなら、こっちにはクレアちゃんがいるからね!」

「……え、え?私ですか!?」


 クレアちゃんが驚いた表情でこちらを見る。うん、ごめん。チョットだけ付き合ってね!


「ああそうさ!クレアちゃんはこの領ヴォルガイアの姫君フレアの側近なんだ。つまり、料亭の料理人なんて目じゃないほどの腕前を持っているのさ。もちろん、アンタの料理なんて足元にすら及ばないね!」

「い、いやい、むぐ、むぐぅ!?」


 クレアちゃんの口を押えてニヤニヤとしてさしあげる。キートスは青い顔を真っ赤ににしてクレアちゃんをギロリと睨んでいる。


「けれど、この子が出るまでも無い。うん、俺程度で十分。お前を打ち負かして見せよう」

「は!ははは!言ってくれるじゃあねーか、このクソガキが!ああ、いいだろう。宮廷料理人の弟子の貴様か、料理魔人を名乗るこのキースか、どちらがこの黒包丁に相応しいか勝負と行こうじゃあねーか!」


 よし、上手い事挑発することができた。あとはこいつを打ち負かすだけなのだけれど!


「う、うむ。その、言いずらいのだがの?儂の腹がいっぱいになってしもうてなぁ」


 お腹をさすりながらマネちゃんのお爺ちゃんが申し訳なさそうにはにかむ。マネちゃんの表情が呆れ顔を通り越してジト目になっている!くそう、なんだかうらやましいぞ!


「ちっ、それならば仕方ない。明日の昼だ。テーマは魚――。どちらが美味い料理を作れるのか見せつけてやろうじゃあないか」

「ああ、それでいいだろう。まぁ、どちらが勝つかはわかり切った事だけれどなぁ!おら、行くぞお前ら!」


 見下ろすように睨みつけ、舌打ちを鳴らして下っ端達を引き連れてどこかへと行ってしまった。うん、塩まいておかないとな!


「……さて、アイツらもいなくなったことだしキリリっと全部話してもらおうかな、せ・ん・ぱ・い?」

「ひっ!?」


 鼻水を垂らして先輩がガタガタと震えだす。この様子を見るだけで大体わかる。うん、この茶番劇を仕組んだ実行役はこのバ――先輩なのだろう。どうせ、上手い話があるとか言われてあの魔族にそそのかされて腹が壊れるレシピを教えてもらい、この旅館を救うと言う体で自分のこの旅館での地位を上げようとでもしたのだろう。


「な、何でそれを……!?」

「いや、誰がどう考えてもそうだと思うよね!何で一人だけ腹壊さずにいたとか、神棚にしまわれていた黒包丁の事だってすぐにわかった事とか、ああもう、あのタイミングで登場した時点で怪しいんだってーの!」


 後ろの方でマネちゃんがうんうんと頷いてくれている。目の前にはお爺さんが正座させられていた。うん……うん?待って、何でそうなってるのかな!?


「あんなくだらない事に加担するやなんて、いくらお爺ちゃんとは言え許せへんやん。せやからな、じぃーっくりとお説教してやろう思うてなぁ」

「ぴっ!?」


 にっこりと笑顔のマネちゃんが何だかコワイ!うん、お手柔らかにしてあげてね?


「い、いやいや、そこは止めてくれぃ!わ、儂はただ審査員をして欲しいと呼ばれただけなのだからな!?」


 お爺さんとしては美味しいものが食べられると連れてこられただけなのだろう。うん、お爺ちゃん明日もよろしくね!また美味しいもの食べさせてあげるからねー!


「ほっほっほ!求められるものは辛いのぅ!うむ、マネッチア?そう養豚場の豚を見るような目で見ないでくれぬか?何かこう、とっても寂しいぞい!」

「ちょっと鏡をみてそのセリフを吐こうかぁ!」

「ま、まて、あ、あががががぁ!?」


 ぐりぐりとお爺ちゃんのツルツル頭がマネちゃんに蹂躙されている。い、痛そうだな!


「あ、あの、大丈夫……なんですか?」


 クレアちゃんがなんだか青い顔で俺の服の裾を握る。うん、あの程度なら戯れ程度かなって思うけれど……。


「そ、そうじゃなくて明日の事です!あんな料理人さんと対決だなんて……」


 どうやら俺の心配をしてくれているらしい。まぁうん、あの位の料理人ならはいて捨てるくらいにいるしね?


「はい、大丈夫です。真人さんなら負けません。真人さんのお料理ってとっても繊細でかつ大胆で物凄いんですから!」


 ふんす、とニナちゃんが腰に手を当てて何だか自慢げである。そういえば今日一日俺のお手伝いしてもらってたっけ?


「とはいえ、俺のってばたたき上げの料理だから政さんと比べられちゃうと割と見劣りしちゃうんだけどね?」


 だからと言って負ける気はさらさらと無い。うん、どう考えても負けられない戦いだしね!勝利のカギは……そよ風、かな?


「そよ……風?」


 クレアちゃんもニナちゃんもマネちゃんも、蚊帳の外でうとうとしてたコーリーちゃんまで首を傾げている。……あれ?お爺ちゃんは?


「腹ごなしにもう寝る言うて帰ったで」

「気が早いな!?」


 ともあれ、もうすでに戦いは始まっているのだ。うん、まずはお魚探さないとな!

いつもながらにおそくなりま( ˘ω˘)スヤァ

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