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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
挿話:ペタン娘エルフメイドと伝説の黒包丁~伝説は伝説に~
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挿話:ペタン娘エルフメイドと伝説の黒包丁~伝説は伝説に~ 3

 お客様の夕餉の支度が終わり、明日の朝に向けての仕込みも終えて、やっと宿の仕事が終わる。

 まぁ、新人は賄い担当だから終わってないんだけどね!


「余った食材を好き勝手に使っていいと言われると中々に楽しいんだよね、これが」


 材料の量にかぎりはあれど、さまざまに種類がある。魚だけでもお頭に使いきれなかったアラが盛沢山!ついでに肉も切れ端がコロコロと残っている。魚の内臓も残っているけれど、使えるところと使えないところがあるから気を付けないとね。さてはて、お頭は炊き込みご飯にして、アラはつみれにして澄まし汁にしちゃうかな?この切れ端お肉は――


「おい、ちょ待てよド新人が!」


 振り向くと、数か月前に入ったという茶髪でヤンキーな新人先輩たちがそこにいた。うん、ナニカようかな?


「ようかな?じゃねぇよ!けっ、大将と同じ勇者だからって厨房を任せられやがって!」

「そうだそうだ!お前が大将に食事を出すだなんて百年はえーんだよ!」


 罵詈雑言に避難轟々。その大将に任せられたのだから俺に浴びせられても困るんだけど、仕方ないのでニッコリとはにかんで後ろに下がっておくことにする。うん、色々と言いたいところだけど、こういう(やから)は言っても無駄なのだ。下手にケンカしても得るモノは何も無いしね?


 それでは食器の準備でもしていますねーとだけ言い残して、すたこらサッサと厨房を後にする。


 三十六計逃げるに如かず。こういう事は勝手知ったる先輩方にお任せしてしまえばいいだろう。


 ……そして出てきたのは、魚のお頭の焼き物とお鍋と言う名のちゃんこ鍋であった。他に数点、小鉢も出ているけれど、どれも何だか微妙そうだった。うん、ちゃんこはお出汁が出ててそれなりだけど、他はちょっとなぁ……。


「けっ、文句があるんなら喰うんじゃねーぞド新人が!」

「いえいえ、きちんと食べます。食事は感謝しながら食べないといけませんからね!」


 そう言って適当にパクパクとつまんでいく。うん、あの小鉢からはなんだか嫌な感じがするしやめておこう。


「しっかし、この刺身うっめー!流石、俺!」

「なるほど、肝醤油か。お前たちにしては上手いこと考えるじゃあねーか」


 政さんがううん、と唸って舌鼓を打つ。


「マジですか大将!ふふふ、これは俺の天才的ひらめきがですね……」

「残念ながら俺の元居た世界ではすでにやってる事だがな」


 そういう大将の言葉にガックリと茶髪ヤンキー先輩は肩を落とす。


「まぁ、そう肩を落とすんじゃあねぇ。こういう成功の積み重ねで成長していくんだからな」

「う、うす!」


 小さくガッツポーズをしているヤンキー先輩である。

 なるほどそう聞いてみれば美味しそうだ。俺も食べたいなーとお皿を見てみると、悲しいかな全部新人先輩と古参先輩たちに食べ尽くされてしまっていた。くぅ、お鍋にかかりきりになりすぎた……!

 まぁ、そのうちに自分で試してみればいいだろう。でもあの肝って何の肝なんだろう?お魚の肝なのは確かだけど……。うん、あとで大将にでも聞いてみようかな!




 ここに滞在するのは今日を入れての三泊四日。


 たった四日で何が出来るの?とロベリアちゃんにはジトられていたけれど、短期間でも違う厨房に立つことによって新たな発見があったりもするわけで。それこそが俺にとっては修行になるのだ。

 うん、お休みくらいちゃんと休んでくださいと色んなみんながあきれ顔だった。俺的にはただで小旅行を楽しむついでに勉強が出来てラッキー!なんて感覚だったのだけれど、悲しいかなみんなには理解されなかったようだ。フシギダナ?


「ふふふ、それにしてもここの温泉は何度入ってもいいモノなんだよ。眺めもいいし、何より!従業員だけの時間だからお客さんが誰もいない!そう!俺は!自由だあああああ!」


 叫んだ言葉は空しく海のさざめきに消えて行き、俺は大きくため息をつきながら露店の湯船に沈み空を見あげる。

 空には三つの月が星とと共に瞬き、キラキラと闇夜を照らし出している。


 ……古参の先輩たちは俺が以前の事件の立役者だという事を知っているせいか、割りと気を使ってくれる。けれども、新人先輩たちはそう言われても実際に見たわけじゃあないからと言う理由で、思い切り目の敵にされてしまっていた。うん、そんな目で見られても俺ってば困るんだよ?好き勝手しに来たわけじゃあないんだからね!うん、勉強しに来てるだけなんだよ?


「まぁ、見るだけでも勉強になるから良いんだけどさ」

「そうは言いつつも、憂鬱そうだぞ」


 ぽふん、と頭の上に柔らかな何かが舞い落ちてくる。


「うん、フレアさん?男の子のお風呂タイムに入って来るのはやめて欲しいなって!」

「大丈夫大丈夫。いつもの事……もふ」


 ああもう、この子は全く……

 フレアと盟約を結んではや幾月か。時間も予定も気にせずにポフンとやって来るから困ったものなのだ。流石にトイレの時だけはやめてくれるようになったけど、こうしてお風呂の時は気にせずやって来るわけで。


「いつもの事だけど、俺も恥ずかしいんだからね!」

「それなら大丈夫」


 さらにポフンと煙が舞って――そこには人の姿に戻ったフレアの姿がいた。うん、いつも通り可愛くてたわわだな?だけどせめて前は隠して欲しいな!隠そうよ!?


「問題ない。己、真人に見せつけてるから」


 耳まで真っ赤にしているくせにぐいぐいとフレアは迫って来る。ああ、たわわが!たわわで……!ふぅ……。オーライ、俺は冷静だ。


「真人、なんか変な顔」

「ぼさつになるのです。ええ、ねはんにいたればこのていど、なんとでも」

「えい」


 むにゅりと、大きなモチな感触が二の腕をつつみ、ついでに手首にも柔らかな感触が伝わる。ふ、太ももッ!


「己は、いつでもいい。己は――真人のだよ?」


 耳元で、そっとそうフレアが呟いた。


 うん、もう駄目だな!たらりと、鼻から血がこぼれた。ああもうダメだよぉ!童貞さんには刺激が強すぎるよぉ!


「……あれ、真人?はっ!真人じゃない!逃げた!?」


 いわゆる一つの変わり身の術。へのへのもへじの書かれた丸太にそっとすり替えて、スタコラサッサである。やばい、ヤバすぎる!最近フレアがエロ過ぎるんだけど!誰だよ入れ知恵してるの!仲が良いうちの領の子たちじゃあないとすると……まさか、あのお付きのメイドっ娘たちが!?

 予想は想像でしかなく答えは出ない。うん、帰る前にきっちりとお話しておかないと。……俺の貞操がヤバイ!

とおおおおっても遅くなりましt( ˘ω˘)スヤァ

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