挿話:魔王なお姫様の勇者な執事とメガネでデート大作戦7
ぶらりぶらりとサクラちゃんと手をつないで街を歩く。
雑貨店に立ち寄っては普段は見かけない小物にサクラちゃんは目を輝かせ、思わず衝動買いをしていた。なお、お財布は俺もちである。デートだからね!これくらいは出させてもらうよ!ふふ、明日から節約しないと……。
「お、真人の兄ちゃん、デートかい?ふふ、それならほらこれどうぞ」
「真人さん、また恋人増やしたの!?はは、そいつは目出度ぇ!これ持って!け」
「初デートだとぅ!仕方ないな!おまけ付けとくな!」
と、街中のおっちゃんとオバちゃんたちに色々と積み上げられて、持つのも大変なくらいに何やらかにやらと貰ってしまった。うん、申し訳ないくらい貰っちゃったな!
「ふふ、まーくんは街のみなさんの人気者ですね」
最近人気の喫茶店でアイスミルクティーをちびちびと飲みながら、何だかサクラちゃんはとってもご機嫌そうだ。ああ、見てるだけで癒される……。
「人気者なのかは分かんないけど、みんないい人達だからね。うん、ここはとってもいい街だよ」
宵闇の如く真っ黒なアイスコーヒーをゴクリと一口飲んで、ふぅと息を吐く。
――ここまで来るのに数か月かかった。
まさしく死力を尽くして街の復興と発展に努めて来たけれど、これは俺だけでは絶対にやり遂げられなかったことだ。俺がどれだけ分身して頑張ったとしても、それは個人でしかない。誰かが俺の手を握ってくれて、連鎖連鎖で繋いでくれたからこそ今の発展がある。
「けれど、まーくんがいなかったらこの街もこんなに綺麗な……ううん、見た目じゃなく、とっても素敵な街にならなかったと思うんです。引きこもりの私じゃあ、こんな風には出来ませんでした。サテラさんも言っていました。まーくんはお城の事だけじゃあなくて、領のみんなの事を一生懸命に考えて、心身を削ってまでやってのけたんだって。まーくん、ありがとう。私の領をこんなに素敵な場所にしてくれて。これからは私も一緒に頑張るから。ううん、頑張らせて欲しいの。もっともっとみんながあんな風に笑顔でいられるように、私、頑張りたいんです」
そう言ってサクラちゃんはふんす、と鼻息あらく胸元で小さくガッツポーズをしている。たわわな胸が強調されてなんともエロ可愛い……うん、店員のお姉さん?ジト目で俺を見ないでくれるかな?男の子だから視線がそこに行っちゃうのどうしようもない事なんだ!はい、ありがとうございます!!
「もちろん、サクラちゃんにも沢山沢山手伝ってもらうつもりだよ。まだまだこの領の発展は道半ば。ユウシャ達が攻め入ってきても、遊んで帰ってく位にさせるつもりだしね!まぁ、まずはうちの領の魔導家電を人の国に売りつけて行くことからかな。ふふふ、少しずつ出回っていってるからね。あの便利さに染まってしまえばうちの領に攻め入れなくなっていくと言う算段なんだよ」
そう、現状魔導家電はここの領が独占販売している。いくら同じような商品を作ろうとしても、サテラさんの指示のもと改良が施された半自動化された工場に勝るシステム構築には恐らく人の国では百年はかかるだろう。そもそも、同じように魔導回路を組み込もうとしても、サクラちゃん独自の技術と魔導回路で組み込んでいるからマネしようも無い。
そして、向こうの世界の技術を必死こいて否定しているのが人の国。だから電気的な発展は未だ遂げられておらず、ユウシャの現代知識も無駄に終わっていたりして、発展の度合いは発展している場所でも産業革命あたりなのだと言う。
けれども魔導具は違う。人の国でも便利になるよう改良、発展がいまだに続いているのだ。
だからこそ、人の国は魔導家電は受け入れざるを得ない。
だって、魔導家電は電気を使っていない魔道具だ。だからアレは電化製品だから駄目だ!という理論は通用しない。
「サクラちゃんはもっと色々と開発して貰わないと。ふふふ、サクラちゃんのこれまでの頑張りのお陰でこの領はもっともーっと素敵になれるんだよ。だから、あの笑顔もサクラちゃんのお陰でもあるんだからね?」
この言葉をずっと言ってあげたかった。ううん、言葉だけじゃなく見せてあげたかった。サクラちゃんが頑張って、頑張って、誰かの為を思って作って来たモノは確かに誰かを笑顔にして、サクラちゃんのこの国を救う礎になっているのだ、と。
「もう、まーくんはずるいです。そんなこと言われたら、嬉しいに、決まっているじゃあないですか」
サクラちゃんは笑顔のままポロポロと涙を流す。
「ずるいで結構。サクラちゃんが笑顔になるように何でもがんばっちゃうのが執事で婚約者な俺の役目だからね!うん、大好きなサクラちゃんの為なら俺もどんどん頑張れちゃうんからね!」
そっと、優しくサクラちゃんの涙を指で拭ってあげる。
ああ、本当にこれまで頑張って来たかいがあった。この笑顔を見る為に頑張ってきたのだから。
ようし、もっと頑張ってサクラちゃんをもっといい笑顔にさせてあげるぞぉ!
「あ、ご注文のケーキ。おまちっしたー」
「うん、空気を呼んで欲しかったな!!ありがとうございます!」
店員さん……怜君の部下をやってる勇者、ひとみちゃんがひらひらと笑顔で手を振って裏に戻っていってしまった。流石ひとみちゃん、マイペースだ!
「それじゃ、食べましょう。まーくん、はい……あ、あーん」
テーブルの上に並べられたのはケーキが二つ。食べ比べしようとサクラちゃんの提案で二種類頼んだのだけれど、まさか……まさかサクラちゃんこのために!?
パクリと差し出されたショートケーキを口に入れる。甘酸っぱい味が口の中に幸せと共に広がり思わず笑みがこぼれる。サクラちゃんもなんだかうれしそうだ!
「えへへ、美味しいですか?」
「うん、すごく美味しくて幸せ」
幸せで、幸せで、それだけで死んじゃいそうなくらいに幸せで堪らない。ああもう、このまま時間が泊止まってくれればいいのに……。
「コーヒーのお代わりいかがですかー!」
うん、ひとみちゃんはマイペースだなぁ!はい、いただきます!
今日はいつも通りな?時間に。まにあっ……( ˘ω˘)スヤァ