挿話:魔王なお姫様の勇者な執事とメガネでデート大作戦1
――デート。
それはずっとずっとずーっとしたくてしたくてしたかったけれども、どうしてもできなかったもの。
それが、やっとまーくんにOKをもらえたんです!理由は魔布に代わる私の魔眼を防ぐメガネのお陰。実は、まーくんがお父様に、私がどうにか普通に過ごせるようにならないかと掛け合ってくれていたらしいんです。えへへ、流石まーくんです!
だけど……。
「脳内ピンクに染まり過ぎですよ、外に行く前に色々と書類諸々手続きが必要なんですから。ほら、ここ字を間違えてます」
「アリス姉さま!割と書類が沢山すぎます!何でこんなにあるんですかぁ!?」
大魔王城の離れの塔の私の部屋、そこで私は沢山の書類に向き合っていました。うん、何でお外に出るためだけでこんなに書類が必要になるのでしょう!?
「仕方ないでしょう、今まで魔布をつけていたからこそ外に出れたのです。基本的に市街に出る為には民に御触れを出す必要もありますし、何よりお付きの……ああ、そうだ他にもまだ書いてもらわないといけないものが……」
「まだ増えるんですかぁ!?」
「ほら、文句ばかり言わずに手を動かす!真人さんはあちらでお仕事を終わらせて来ると言っていたのでしょう?」
「うう、そうですけど……」
私あh机に突っ伏して大きくため息をつきます。この前の旅行はまーくんといちゃいちゃできてとっても楽しかったですが、またまーくんに婚約者さんが増えてしまいました。
金髪で美人で、スタイルもいい、一度死んで男から女になってしまったシルヴさん改め、シルヴィアさんです。
私が正妻で問題ないですよーだなんて、シルヴィアさんは言ってくれましたけれど、本気でまーくんの事が好きなのは目を見るだけで分かってしまいます。私も好きだから分かるんです。どうしても、まーくんの事目で追っちゃうんですよね……。
このままじゃまだまだ増えるかもしれない可愛い婚約者さんにまーくんの心が持っていかれてしまうかもしれません。だからこその、デート!せっかく普通に過ごせるように眼鏡を作ったのですから、二人でデートをしてもっとラブラブになっておかなければならないんです!
――だから、これは一つの試練。
乗り越えて、まーくんとの初デートを成功させてみせるのですから!
「その、今のアリステラ様の話じゃあ、二人きり……とはいかなさそうですけど……」
「ビオラちゃん!うう、そうなんですよ!姉さまったら心配性です!」
落ち込む私にビオラちゃんが紅茶を注いでくれます。ああ、本当に落ち着きます……。
「とはいえ、オウカ様は魔王様なのですから、おいそれと街に下ってしまうと色々と問題がある可能性がありますので仕方ありませんよ」
「そうそう、変な奴に襲われでもしたらたまったもんじゃあないからね。警備の目は光らせていてもアタシらじゃあどうにもできないことが出てくることだってあるんだから、少しくらいは我慢してもらわないとね?」
椅子に座っていたサンスベリアさんがパタンと本を閉じ、にっこりとほほ笑みます。
だとして、どうにか普通の本に書かれてるようなデートをしてみたいんです!まーくんと手をつないで、一緒に食べ歩きして、お買い物して、そ、そして、最後は……えへ、えへへ……♪
「うん、本当に最初のイメージとは全然違うよな、オウカ様って」
「あはは、伝聞って伝わっていくうちに代わっていくものですしね。私も来たばかりの頃は、見た人の命を凍らせてしまう、とっても怖い魔王姫様だとお聞きしていましたし……」
それを聞いてしまうと、とっても心苦しくなってしまいます。
――魔眼の暴走。それは私自身には止めることが出来なかった不慮の事故。
母様を失った悲しみがあふれ出し、いずれ発現するであろうとされていた魔眼は――最悪のタイミングで発動してしまったのですから。
「ともあれ、ある程度は制御が出来るようになりましたし、そのおかげでこのメガネももらえました。ふふん、これでもう私も一人前です!」
「一人前と言うならメガネを取って制御できるようにならないとねー」
うぐぅ。サンスベリアさんは意地悪です。その通りです。ええ、その通りなのですけれども!
「でも、とっても可愛いと思います。オウカ様の眼ってぱっちりしてて可愛いですし、メガネをかけるとより可愛さが映えて見える気がします」
「ほめてくれてありがと、ビオラちゃん。えへへ、まーくんにもそう言ってもらえました。まぁ、寝る時以外は外れないんですけどね」
この魔眼封じのメガネはズレることはあれど、私が外そうとしない限り外れることは絶対にありません。なんでもまーくんの持っていた仮面の呪いと同じ、「外れなくなる呪い」を魔紋で再現しているらしく、強い衝撃が加わったとしても絶対に外れないのだそうです。流石、魔紋の研究で随一で、魔法学院で賢者と呼ばれる菜乃花さんです!ちなみにレンズの強度もかなりのモノで、マシンガンで撃たれても傷つかないレベル?なのだそうです。いまいちマシンガンが何なのかわかりませんが、きっとすごいものなのでしょう。
「けど、町でデートするにしてもドレスでデートするつもりなのか?普段着じゃあ流石に出歩けそうにないし……」
「……さ、サンスベリアさん、大変です」
そう、私にはドレスに普段着はあれど、お外に行くためのお洋服を持っていなかったのです!ど、どど、どうしましょう……。
思わぬ事態に、私はまた頭を抱えたのでした。
はい、今日中とは言っていたのに大変遅れました!申し訳ございませんでした!
言い訳のしようもございま( ˘ω˘)スヤァ