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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第五章:勇者な執事と白き龍の招待状。そう、絶望が俺のゴールだ!
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39話:変化していく時代についていくのがやっとだって感じると自分の歳を感じざるを得ないよね?

 まばゆい光が突き刺さるように眩く、思わず私は眉を顰める。





 ああ、何か、長い夢を、見ていたような――。






「お父様!ああ、良かった……」


 聞き覚えのある声の方を見やると、涙をボロボロと流すクレアの姿がそこにあった。


「……ぅレア、……ぁなぃ……」


 声が上手く出せない。ああ、なんてもどかしいのだろうか。犠牲にしてしまったこの子に、妻に、せめて謝罪の言葉を伝えたいのに――。


「ダメです、お父様。その言葉はいただけません。だって、そうしてしまえばお母様の死も、お父様の頑張りもすべて無に帰してしまうのですから」


 ぎゅ、とクレアがベットに寝ている私の頭を抱えるように抱きしめる。


――ああ、本当に優しい子に育ってくれた。


 お前は私たちの自慢の娘だよ。……だけど、なんだろう。すごく違和感を感じる。こんなにもクレアは大きかっただろうか?いや、背格好は変わっていない。つまるところ、あの勇者との戦いから長い年月が経ったという訳ではないらしい。

 そして、私が生きている、という事は私の本懐は遂げられなかったという事だろう。

 一体、どんな顔をしてシルヴ様にお逢いすればよいのやら――。


「ん、目が覚めたみたいだな」

「シル……さっ!?」

「ああいい、まだ寝たままで構わないよ。まだその体には慣れていないだろうからな」


 ぷふふ、と何だか悪戯っ子の様な顔でシルヴ様が笑う。

 この体に、慣れていない……?ぱちくりと眼をしばたかせて自身の手を見つめてみる。そこには、小さくてプニプニでツルツルとした、中年男性にあるまじき手がそこにあった。うん、これ私の手なのか?!


「はい、その、お父様、こちらをどうぞ」


 クレアが鞄から手鏡を出し、私に手渡す。


――そこには、十歳ほどの少女の姿が映し出されていた。な、なん……!?


「なんというかアルヴ、お前ってばボクの力を取り込んだ三賢龍たちの魔石を喰らって魔龍になっだろ?それで真人の奴に完膚なきまでに叩きのめされた訳だ。つまるところ、ボクと同じ状態になったんだが……。まぁ、その、ボク自身が先祖返りしていたわけだからそうなるのは当然。だからボクが悪いわけじゃあないからな!」

「れ、れすがその、けほ。シルぅ様はもっろ、こう、成長さぇた姿れすよね!?」


 舌足らずならがらも何とか言葉を紡ぐ。そう、シルヴ様は年齢相応の少女の姿になられていた。けれども私はどう考えても……。


「まぁ、うん、なんというかだな。お前からボクの魔石の分を返してもらったんだ。ユウシャが後付けした魔石から魔石に力を移す機械を改修してね。そうしないと、アルヴ達の頑張りが全部無駄になっちゃうから駄目だって真人が言うから……」

「彼が……」


 そう、それは目標に届かないながらも、シルヴ様に力を取り戻していただくことが出来たという事だった。


「すまないな、アルヴ。お前には迷惑ばかりをかけてしまった。ボクがもっと強ければお前やお前の家族に辛い思いをさせずに……」

「謝らないれくらさい。けほ、貴方がいてくれたからこそ、この国に光が差したのれす。貴方が魔王になってくらさったからこそ、私たちは救われたのれすから」

「ああ、そうだったな。あのバカ……真人からも言われていたんだった。謝るんじゃなくてちゃんとありがとうってお礼を言っておけよって」


 そっと、小さくなってしまった私の手を握り、シルヴ様が優しく微笑まれる。


「ありがとう、アルヴ。お前がいなければボクもあそこで終わっていた」


 ああ、なんと勿体ないお言葉なのだろうか!

 私が出来たのは結局、計画を立て、犠牲を出し、自らをも差し出し、聖剣を持ち、()()を名乗る彼に総てを任せ、行く末を見守ることだけだったのだから。


「いえ、私がれきらことは、なにも……」

「それでもだ。だからアルヴ。これからもボクの事を……ううん、この国をボクと共に立て直していってくれないだろうか?」


 その言葉に、私は涙を流す。


 裏切者だと蔑まれ、裁かれる事さえ覚悟していた。なのに、再び私にシルヴ様のもとで働かせていただけるのだ。これ以上に私にとって嬉しい言葉は無かった。


「はい……はい!もちろんれす!あなたの為に、この国の為、がんばらせていたらきます!」


 新たな決意を胸に、私は声を張る。ああ、またこの方と共に働くことができるのだ。きっと、この国はもっと良くなる。だから――


「ああ、その前に。ボクの名前だけど、シルヴィアになったから」

「は?」

「それと、真人と婚約した」

「はい?」

「だから、領主はアイツになったんだけど、魔王の立場はボクが貰ってるからそこだけは安心して欲しい」

「い、いやいや、ち、力を取りも出されたのれしたら、こ、婚約をされる必要は……」


 そう、無い筈なのだ。なぜなら、シルヴ……シルヴィア様が魔王から降りた理由は力を賢龍たちに喰われてしまっていたから。だからそれを取り戻した今、もしもの時の保険であった勇者真人との婚約はする必要は……。


「三賢龍を真人が倒した時点で、真人に領主の権利が移ってしまっていたらしいんだ。真人にも権利だけボクに返しても構わないと言ってくれたのだけど、うん、その……ボクから彼にお願いしたんだ」


 恋する乙女の表情でテレテレとしているシルヴィア様に、思わずポカンと口を開けてしまう。だ、だっておかしいじゃあないか!ついこの前までシルヴ様は男で、女になってしまってすぐに、そんな……。


「まぁ、うん、アルヴにもすぐにわかるさ。なにせ、アルヴもボクと同じ状態なんだからな?」


 にっこりとシルヴィア様がほほ笑む。い、いやいや、流石にそれは無いと思うんだけれども!


「大丈夫です、お父様。ふふ、お父様がどのようになられても、私にとってはお父様ですから!ですが、お名前は変えてしまっても構わないのではないでしょう。お召し物は私にお任せください!ええ、とっても可愛くコーディネートして見せますので!」


 なんだろう、クレアの笑顔が怖いぞ!う、うん、この姿に逢う服など、おじさんな私に分かる筈もないのでクレアに任せるしかないのだろうが……。


 ああ、わ、私は一体どうなってしまうのだ!?こ、困った……。

これにて第5章の完結となります。

ご覧いただき、ありがとうございました。


次回より挿話をいつも通り挟んで六章へと向かいま( ˘ω˘)スヤァ

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