37話:二層式洗濯機でモツとかタコとかの食べ物を洗うのに使われるって割と想定外だよね?
「おお!勇者よ!死んでしまうとは情けない!」
目を開けば――いつもの大魔王の間。
これはアレだ。いつものようにいつもの如く死んでしまったわけだ。
手元にはいつの間にか鞘に納められた鼓草。
あの最後の一撃を放った時に砕け散った腕から零れ落ちちゃったモノだと思ったんだけど、どうやら帰ってきてくれたらしい?うん、もしかしてだけれども、俺の手元にどうあっても戻ってくるようになってしまっているのかもしれない。つまる所は妖刀。鼓草には魂が宿っているとマネちゃんが擬人化な話をしていたのだけれど、これはどう考えても魂が宿っているだけではなく、自ら意思を持って動いている。
「……うん、そろそろ反応してくれると余は嬉しいのだが?そろそろ格好つけたポーズも疲れて来たぞい!」
「それなら普通に座って待ってればいいじゃあない……って、銅像!?」
そう、大魔王の後ろには数々の仮面ライダーの銅像が飾られていたのだ。そして一番手前側には……自分がライダーに変身するポーズをかたどった銅像が作られていたのだ!うん、莫迦かな?馬鹿だな!バカだよね!!
「これは、うん、どこからどう突っ込めばいいのかな?」
「ははは、何を言う!我こそは魔王の中の魔王!大魔王なるぞ!ならば!このジオウドライバーとウォッチを使うにふさわしいではないか!うん、オモチャだがな!」
よく見れば魔王の腰にはベルトとジオウⅡのライドウォッチ。どうやらまた無駄遣いをして取り寄せて、壊れないように改造しているらしい。手にはこれまた改造されてちゃんと武器になっているサイキョウギレード。一体いくらつぎ込んだのやら……。
「うん、また怒られるよ?主にアリステラさんに?」
ため息交じりで俺はヤレヤレと首を振る。
「ふふ、そこは問題ない!なぜならば!今回はほぼ自作だからだ!銅像は余が頑張って作ったのだからな!武器にウォッチも自分で改造したのだぞ!!ふははは!割と大変だったぞぉ!」
「その労力をもっと別の方向に使おうよ!!すごくできは良いけどさ!!」
確かにその出来は正しくライダーたちが今にも動かんばかりの仕上がりであり、オモチャたちも本物と見紛う出来である。うん、怒られないかな?本当に?
「大丈夫だ。問題ない。なぜならばここは異世界!そして自作と自分用のだからな!怒られる理由なぞ存在せぬ!」
自信満々に腰に手を当て、がははと笑う。俺、本当に知らないからね!
「さて、そろそろいつも通りやるとしよう。ああ、今回は本気で行こう。ただでは娘はやらんぞゴラァ!!」
「今更かよぉ!ええい、サクラちゃんは絶対に奥さんにさせてもらう!でも、こっそりとでいいから聖剣さん呼ばせて欲しいなって?ダメカナ?」
「ダメダヨ?」
ダメらしい。だから仕方なく俺は手持ちの武器で戦うしかない訳だ。
俺の手には鼓草だけ。うん、すまない。戦い終わって早々だけど付き合ってもらうよ?
――リン、とまた鍔が鳴った気がした。
二回ほど軽く死んだ後、のんびりと二人で某RPGをのんびり遊ぶ。うん、何で異世界にもGOで遊べてるのか摩訶不思議なんだけど、どういうことなのか聞いてもいいのかな?と言うか出歩かないよね大魔王?
「はは、余の力をもってすればこの程度の事造作ない!……ふふ、魔導フォン普及のためにこう、少し予算を割いてだな……」
「絶対バレたら怒られる奴だこれ!」
まぁ、やってるの余だけだから大丈夫だーとか笑う大魔王だけれども、物事はどこからバレるか分かったもんじゃあない訳だ。特に開発者とかから?というか、魔導フォンって誰が開発したのかな?サクラちゃんは家電系は結構作っているのだけど、こういう細かいPC的な電子機器はまだ難しいって言っていたのだけれども。
「それはだな、ここの城の地下にいる引きこもりがそう言うプログラミングに長けたやつがおってだな。それを魔紋に転換して使用しておるわけだ。魔紋に転換するのは――ほれ、真人に遣わせた菜乃花の奴が得意にしておるからな」
なるほど、と納得する。だからこそ大魔王は菜乃花さんをあれほどまでに重用していた訳だ。伊達に賢者を名乗っている訳じゃあないという事らしい。
でも、あれほどの実力を持つ彼女が何で大魔王と友達なのかとっても気になるところなのだけれども?
「ああ、それはだな。アイツには余の魔紋を刻んでやっておるからだ」
「ふぁ!?」
思わず変な声を出してしまった。うん、確かによく考えてみればそうなるだろう。大魔王と戦い、そして勝ったにしろ負けたにしろ、大魔王側にいるという事は忠誠を誓っているという訳で……。
「うむ、刻んだは良いが、いいように改造されておるから、ほぼ余の魔力をちゅーちゅーしておるだけだな。そもそも、アレが余に跪いて足にキスをするようなタマに思えるか?」
……うん、思えないね!流石だよ菜乃花さん!賢者を名乗るだけあるってことだね!なんというか、とっても腐ってたけど!
「ところでさ、あのBL本ってどうやって……」
「聞くな」
「どうやって?」
「聞かないで」
何だか死んだ目で遠くを見つめてしまっている。まって、想像したくないんだけど、もしかして同人ショップにわざわざ出向いて……?!
「通販だからの!ネット通販だからぁ!夏と冬のお祭りで買う勇気はまだ余には無い!!」
「うん、やっと言質をとれたんだよ」
しまった、と言う顔でグリムが顔を逸らす。
「やっぱり、あっちの世界に行けるんだ」
けれどもそれは、あちらの世界で死んでしまっている俺にはできない異世界闊歩。うん、なんだかおかしいと思っていたんだよね!ネット通販にしては色々と買いすぎだし?うん、あっちの世界のお金もどこで稼いでるかも気になるところなんだけれど……。
「それはまだ企業秘密で」
流石に教えてくれないらしい。ううん、何だか怪しい仕事でもしてるんじゃあないだろうか?はっ!?まさか向こうの世界を侵略するために秘密結社を作って――
「いや、余はヒーローには憧れるが敵側をわざわざ作ろうとは思わんからなの?」
「大魔王なのに何今更言ってるのさ!?」
それでもナイナイと手を振っている。うん、あちらの世界が大魔王に侵略される未来はどうやら今のところは無いらしい。
だけど、莫大な魔力を異世界散歩の為だけに使うだなんて、うん、やっぱり馬鹿だよね!
「はい、馬鹿だと思います」
「「あ」」
気づけばどうやってかアリステラさんがまた大魔王の間に入って来ていた。お……お疲れ様です?
「ま、待てアリステラ!あの銅像は余が作ったのだ!だから金も掛かっとらんし、問題はなにも――」
「見栄えが悪いので撤去しておきますね?」
「何でだああああああ!!」
うん、そりゃあそうだ。そう言う訳で俺は退散させて……あれ?なんで俺の首根っこが掴まれてるのかな?不思議だな!
「はい、真人さんが復活したころに向こうに連れ戻すように言われておりますので。ああ、でもその前に……仕立て直しですね。流石にその、上半身裸のボロボロな姿で行かせるわけには行きませんから」
そう言って、アリステラさんにずるずると引っ張られて行くのであった。普通に歩けるよぉ!?
今日も今日とて遅くなりました。次回は一日飛んで8日くらいの予定で( ˘ω˘)スヤァ