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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第五章:勇者な執事と白き龍の招待状。そう、絶望が俺のゴールだ!
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30話:一人暮らししてるとテレビかPCが無いと寂しさで死んでしまいそうになるよね?

 大広間。突如現れた映像にはいたぶられる少女――少女となった傷だらけの魔王様の姿が鮮明に、克明に映し出されていました。


「ああ、シルヴ様……!」

「んむんむ、助けに行きたいところだが、もぎゅもぎゅ己では介入ができない」


 もぐもぐと大広間に並べられた食べ物をこれでもかと乗せたフレア様がもぐもぐと頷いている。うん、少しほおばりすぎじゃあないですか?


「気にしたら負け。うん、真人のご飯に比べると微妙。果物は美味しいけど」

「いえ、そこはその、重要ではないのではないのでしょうか?」

「ん、重要」


 よくわからないけれども重要らしいです。うん、外交の為にここに来ているのですからそれはそれで間違いではないのですが、そうではないんです!


「はいはい、そこまで。ええと、初めて見る顔だけど……」

「えと、その……」


 誰とも知らぬ黒髪のキレイな女の人に話しかけられ、私は思わず言いよどんでしまいます。私に話しかけてきたという事は、フレア様のお知り合い……なのでしょうか?


「ん、知り合い。真人の部下」

「もう、フレアは紹介が雑なんから。と言うか部下じゃないし。うん、まぁ同僚って言えばいいのかな?ボクの名前はライガ・グラディアス。魔王オウカ様に使える姫騎士の隊長を務めさせていただいているんだ」


 話には聞いたことがある。大魔王の娘である魔王オウカ様に使わされている姫騎士隊には獣牙侯爵のご息女が仕えているのだと。


「私たちはフレア様にこの地にて雇い入れていただきましたメイドでございます。真人様に拾われ、ご紹介いただきました」

「ああ、君たちが……」


 黒兎族のニナの話になるほど、とライガさんは頷きます。恐らくは私たちの話を真人様からお聞きしていたのでしょう。


「へぇ、この子たちがなぁ……。うん、布で隠しとるけどえらい別嬪さんぞろいやなぁ。まさか思うけど、また真人さん粉かけて来たんとちゃうか?」

「いやいや、マネッチア。流石のアイツでもそんな簡単に、それも三人もひっかけてくるだなんて……いや、ありえなくは無くは……無い、か?」

「夏凛、流石にそれはないよ!いくら婚約して数カ月もたたないうちに新しい婚約者を作ったとしても!」

「り、林檎ちゃん、その通りだけどやめてあげてくださいね?まーくんも不可抗力だったんですから!」



 うん、真人様の扱いがなんだか雑な気がします!本当にすごい人なのですけれど……。あれ?この目を布で覆っている人って……。


「初めまして、クレアさん。お話はまーくんにお伺いしています。私はアークルの領主を務めております、オウカ・L・アビスニア……魔王オウカと呼ばれる者です。よろしくお願いいたしますね?」


 物腰のやわらかな銀髪の女性がにこやかに微笑んでそう答えました。見た目はまるで絵本の中から飛び出てきたようなお淑やかなお姫様なのですが、彼女があの氷結の魔王と恐れられる魔王オウカだと言うのです。そう、真人様とシルヴ様が彼女との婚約をめぐって戦い、シルヴ様が敗れ去った――


「その、ご家族には無事だと言うお話はされたのですか?」

「……しておりません。父は……いえ、父が私と母を彼らの元へと送り出したのですから」


 私の言葉にその場にいた全員が凍り付きました。真人さんから話を聞いているという事は私がどんな末路をたどりかけたのか知っていると言う事。なら、この言葉だけで十分なのです。


「なら……おかしい」

「うん、そうだよね苺ちゃん。真人さんなら殴りこんでるよね?クレアさんのお父さんのとこ」


 苺さんと林檎さんの言葉に私は目を丸くします。昨日であったばかりの私の為にそこまでしてくれるわけがありません。それは、あまりにも……。


「それがアイツなのよ。ふざけてふざけてふざけ倒してるのに、スジも義理も通す男なの。腹立たしいことにね。助けたいと思ったら、どんな人でも魔王でも魔物ですら助けようとする。それが彼、勇者真人よ。敵だった私ですら、ね。ほら、見なさいな」


 黒髪の少女の指さす映像には――大精霊様の結界を抜けて傷だらけになりながらもシルヴ様を抱きかかえる真人様の姿が映し出されていました。


「本気で馬鹿だよねー」「馬鹿だから真人さんなのにゃ」「あ、服脱いだ」「「「何で!??」」」


 そう、真人様は身に纏っていた上着を脱ぎ捨て、見事に鍛え上げられた筋肉を惜しみなく披露していました。お、男の人の裸……裸!?


「だ、だいじょうぶ、です?」

「え、ええ、大丈夫です。ごめんなさいコーリー。心配ないです」


 そう言って鼻にこみあげるモノを押さえつける。うう、そんなつもりは無いのですが、不格好に筋肉ダルマになっている男の人とは違った、戦うために磨き上げられたあの肢体は見事というか、すごいというか……。


「魅力的だよねー」

「んひゃあ!?」


 耳元でささやかれ、びっくりして振り向くとそこにいたのは――塔にいつもいるはずの魔女……菜乃花(なのは)様でした。


「な、菜乃花様!?ど、どうしてここに……」

「どうしてってヒドイなー。できたから急いで持ってきてあげたのに。ほら、だってせっかくのドレス姿なんだから好きな人に綺麗な姿で素顔を見せたいじゃない?眼鏡ってコーデの一部なんだよ?ダサいとか外せとか言う奴は魔力砲で消滅してしまえばいいと思うの!」


 なんだか、とっても物騒なことをおっしゃられていますが、間違いなく菜乃花様です。できた、というと……。


「うん?なんでクレアちゃんがここに?まぁ、いっか。ともかく、サクラちゃん。はいどーぞ」


 そう言って菜乃花様はオウカ様に小包を手渡しました。中に入っていたのは赤いメガネでした。


「ふふふ、魔法で強化に強化を重ねて、木製フレームの細さの限界に挑戦しつつ生み出した私渾身の一品なのだよ!」


 とっても力説されているけれど、私にはどうにもよくわかりません。ともかく、可愛い眼鏡だなとしか……。


「すごい、細かく魔術紋が刻まれいて……。魔力の循環効率が最適化されてて、使用者の負担にならないように設計されています!」

「うおう、流石魔導家電の開発設計者……一目で分かるとは中々やるねぇ。あ、でもここではつけちゃ駄目だからね?魔布を外した瞬間に大広間がまさしく凍り付いちゃいそうだし?」

「はい、大丈夫です!まーくんが戻ってきてからにしますから!」


 えへへ、ととっても嬉しそうにオウカ様は大切そうに小包みを抱きしめます。本当に真人様の事を愛していらっしゃるのですね。

 見上げると握りこぶしを振りかぶり、賢龍タリウスをものの見事に吹き飛ばしていました。


――真人様。どうか、どうかシルヴ様とお父様をお救いください。きっとこれは貴方にしか……。

今日も今日とて遅くなりまし( ˘ω˘)スヤァ

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