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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第五章:勇者な執事と白き龍の招待状。そう、絶望が俺のゴールだ!
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27話:恵方巻は無言で一本食べきらないといけないけど太巻きって割と結構な量だよね?

 カラカラといくつもの車輪の音が鳴り響き、ざわざわと城の中が騒がしくなってくる。どうやら俺らと同じく気の早い魔王たちがやってき始めたらしい。うん、始まるのは夜だからまだまだ早いんだよ?


「とはいえ、速くついておいた方が色々と捗るから仕方ない」


 おいすーと挨拶をしたのは東の果てにある修羅の国の魔王であり、姫騎士である椿さんのお兄さん、詰まるところの鬼のお兄さんである。時間まであまりに暇なので、あいさつ回りがてら前庭に行ってみての出会いである。うん、お久しぶりです鬼のお兄さん?


「お兄さんって、お前なぁ。俺は真人の兄じゃあないからな?それともなんだ?まさかお前、つ、つつ、椿と、そ、そんな仲に……」


 何だか白目の部分が闇に染まっていく。


 いや、違うよ?右も左も知らない頃に、なんだかお世話になったし、そう呼びたいって思っただけなんだけど、ダメだったかな?


「は?いや、ダメではないが。むぅ、そうか。ははは、俺の中の隠せざる兄力がお前にも分かるか!」

「いやいや、兄力ーてなんやあにりょくーて」


 前庭で話し込んでいたらいつの間にやら椿さんがそこにいた。うん、鬼のお兄さんのお兄さん力の事だよ?


「うん、いつも通り何言うてるかさっぱりわからへんなぁ。それで、羅刹(らせつ)兄さまとお付きの人たちだけで来たんか?」

「そうだ。他の魔王との交流って所だからな。この国に先が見えるのなら他に文官を連れてくるんだが、どう考えても現状のこの領にいる賢龍という奴らじゃあ力不足も甚だしい。ああ、力と言うだけではなく諸々の能力がだ、ざっと見てこのままだともって五年と言ったところだろうな……」


 うん、確かにその通りだと思うけど、その五年という数字も大甘も大甘に見積もっての話。正直このままの経済状態を鑑みるに二年で税制は破綻して三年目には木の根っこすら売り払って、四年目には領ごとどこかに売り払われていそうだなって?


「それもまた甘めに見てだがな。アイツら絶対に魔王になったら今以上に羽目を外すぞ。俺は今までにそうやって破綻してきた魔王たちを見てきているからなぁ」


 鬼のお兄さんのため息がとっても深い。とってもおかしな話だけど、経済的理由で追い詰められる魔王は後が経たないらしい。まぁ、そりゃあそうだ。力だけでのし上がった奴に経済観念なんてあったもんじゃあない。ただ彼らにできるのは奪い、殺し、圧政を敷く。それだけ。だからそう言う魔王はそうそうに潰れて行くわけだ。魔王がポコジャカいるこの世界で自分で消えてく魔王がいるって自浄作用か何かかなって思えるけど、ベンチャー企業を起こした右も左も知らない若者が会社を潰していくようなあっちの世界になんだかデジャヴュを感じざるを得ない。世知辛いな異世界!異世界なのに夢も希望もありゃしないぞ!うん、夢でも希望でもなんでもなく現実だから仕方ないんだけどね!


「それで、そっちのお姫様は元気にしているのかい?とりあえず挨拶くらいはしておかないと」

「もう、羅刹兄さまはそういう事ばかり言うてからに。ああそうや、お土産はちゃんと持ってこられているん?こういう場でちゃーんと出せるもん出しとかんと後で後悔するんよ?」


 なんだかお兄さんの視線が泳いでいる。うん、話をするだけのつもりで来てるんだし、後がない領に物見雄山で来てるだけだもんね!そりゃあ何も持ってくるはずも無い。持ってくるとしたら最低限のご祝儀くらいかな?


「正直出すかどうか迷うがな。まぁ、ここの茶は美味いからそれくらいは融通してもらえるように持ってきてはいるがな」


 当たり前ではあるが、外交的いみでこの領の地位は下の下の下、とりあえず話くらいしとけばいいかレベルのようだ。まぁ、うちもそんなレベルだしね。シルヴが魔王じゃなくなったら交易をやめる国は一つや二つじゃあ済まないだろう。だって、アイツら絶対吹っかけてくるんだよ!経済観念なんてあったもんじゃないからね!うん、過去の情報を鑑みるに?本当に詰んでる気がするぞぉ!


「って、待て真人。アレって……」


 サクラちゃんのいる客間へとお兄さんを案内していたのだけれど、途中で兄さんが立ち止まった。

 視線の先は城の裏庭、さらにその先にある風の小さな家ほどあるゴシック風な守護精霊のお社の前だった。


「あれは、シルヴと三賢龍……やな。昨日うちらをナンパしてきた奴もおるし」

「よしぶっころ」「兄さまステイ」


 シスコン気味な鬼のお兄さんは置いといて、四人が何だか剣呑な雰囲気なのは離れた位置からでも見て取れる。もっとも、シルヴがアイツらと親し気に話すだなんて想像もできないんだけどね?


「それにしても一体何話してやがるんだ?ん、あれ?手袋をアイツらに投げつけたぞって、おい真人!!」


 お兄さんの声を後ろに、俺はガラスをぶち破って飛ぶように駆け抜ける。ダメだダメだダメだダメだ!まだ早すぎる!今じゃダメだ、それはまだ――


「決闘を申し込む。ああ誰にも邪魔させやしない。これは――ここを治める王たる権利をかけた戦いだ!」



――暴風。



 吹き荒れる凄まじき風が俺を軽々と吹き飛ばす。


 風の結界。風の精霊の力の元に生み出された空間は歪曲し、小規模な異界を生み出したのだ。


「馬鹿野郎!シルヴ、お前――!」


 暴風に包まれた結界の中に、俺の声など――届くはずもなかった。

今日は早めに( ˘ω˘)スヤァ

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