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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第五章:勇者な執事と白き龍の招待状。そう、絶望が俺のゴールだ!
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25話:月明りも無い闇夜って鳥目だったら何も見えなさそうでヤバいよね?

 星一つ見えない闇夜の中、はちみつ色の髪がキラキラと風を受けてなびく。

 彼女が身に纏っているのは薄手のネグリジェ。うん、透けて薄いしどう見ても風邪ひきそうだな?


「……それで、ボクに何か用か?」

「あれ、バレてた?」


 影の中からそっと出てくると、何でか大きなため息をつかれてしまった。うん、分身でこっそり護衛してたんだよ?


「バレてたも何も、たまに頭を出していたじゃないか。三賢龍の奴らと話してるときふざけ倒しやがって!まぁ、良い気味だとはおもったけどさ」

「うん、流石の俺もあそこ迄気づかれないと思わなかったんだよ?」


 それは三賢龍とシルヴの最後の話し合い。明日の婚約パーティで賢龍たちの子を産む契約を今日の内に結ぶように奴らは求めて来ていたのだ。


「まぁ俺の高度で見事な知略によって見事阻止されたわけだけど!」

「知略って三人のズボンのベルトを落とすのは、ぷ、く、いや、何でバレてないのかおかしすぎたんだが!」


 だってアイツら、俺が真後ろでヤンヤやっても振り向きすらしないんだもの。シルヴが笑うのも自分たちを笑ってるものだと思って、勝手にキレてたし?

 だから、ベルトをそっと外してチャックまで下げておいて差し上げた。もちろん三人分。うん、見事に三人とも立ち上がった瞬間にストーンと落ちて、とっても間抜けな感じでブチ切れながら部屋を飛び出して行っていた。


「アイツらがくだらない事言うたびに頭の上に水滴落としてるし。いや、いたずらにしても地味過ぎないか?」

「ガキっぽいくらいでアイツらにはちょうど良いんだよ。あ、言っちゃった。うん、アイツらの頭って自分の事しか考えてない子供だからね。大人ぶってグロい事とかエロい事とかやってるけど、やってることは駄々こねる子供と同じなんだよ?だからあれで十分かなって?」

「まぁ、思い切り笑わせてもらったし、いいんだけどな」


 そう言ってシルヴは自分の部屋からベランダへと足を踏み出す。風が彼女の長い髪をなびかせて、またキラキラと輝かせ、美しい体のラインが闇夜の薄明りに浮かび上がる。


「……それで、勝算は?」

「三割あればいい方だろう。ああそうさ、これは無駄な労力。骨折り損のくたびれ儲けだろう。けれども僕はその道を選ばざるを得ないのさ。魔王として、次代の魔王を戦い無しに決めるようなことになんてしたくは無いからね」


 後は僕自身の意地ってやつさ、と言ってシルヴはほほ笑む。


「だから、邪魔だけはするんじゃあないぞ」

「ん、振りかな?」

「違うよバカ」


 言ってシルヴはこちらを振り向く。


「言ったろう、意地だって。これは僕の男としての、そう、最後の意地なんだ。その結果どうなるかわかり切っていたとしてもお前には見ているだけにして欲しい。まぁ、男だった僕を抱こうだなんて考える奴なんて頭のネジの外れたアイツらくらいだろうし、お前が助けに入るなんてことは無いとは思うがな!」

「うん、入るつもりだけどなにか?」


 それはお昼くらいにシルヴと話していた時には決めていたことだ。うん、当日になって決闘してるところに割り込んでってのが王道なんだろうけど、邪魔するつもりなのにお邪魔しますって言っておかないと失礼じゃないかなって俺は思うんだよね?だから邪魔をして、うち砕いて、徹底的にペチペチ叩いてやるつもりなわけだ。ダメかな?


「ダメに決まっているだろう!何考えてるんだ!どうせ姉さんたちにそうしろって言われたんだろう!そんなことされて僕が喜ぶとでも思っているのかよ!」

「んー別にそんなことは思ってないさ」

「なら!」


 ギラりと、殺意の篭った目でシルヴは俺を見る。まぁ、そう言われるのは分かり切っていたけれども。


「俺がそうしたいと思っちゃったから仕方ないんだよ。俺はお前を助けたい、ああ、例えシルヴを嫁にすることになっても、だ」


 ポカンと、シルヴの口が開いて段々と顔が真っ赤に染まっていく。うん、湯沸かし器かな?


「ばばばば、ば、馬鹿じゃないのか!?僕を助けたところで君が何を得する訳じゃないだろ!そ、そもそも、これはこの領の問題だ。お前が首を突っ込むことじゃあ……」

「アイツらが勇者と結託してることはもう知ってるぞ」


 そして、その策謀の中でシルヴの力を奪われたことも。


「なら、なおさらお前が首を突っ込むことじゃないだろう?」

「うん、でももう今更なんだよ」


 シルヴを柵に追い込んで、そっと彼女の手を握る。


「じゃあ逆に聞こう。シルヴは俺と婚約するのは――嫌かい?」

「にゃ!?」


 少しとがった耳の先の先まで真っ赤に染めてシルヴは固まってしまった。うん、流石にせかし過ぎちゃったかな?


「まぁ、答えは聞いてないんだけどね!」

「ちょ!お前なぁ!」

「はは、答えが何にしろ、邪魔させてもらうって事さ。その責任も、取る。だから、一人で無茶しようとするんじゃねーぞ?」


 真っ赤に染まったおでこを軽く指でついてあげると、うるさい馬鹿とだけ返答があった。うん、本当にここまで可愛くなるのっておかしい気がするんだ!と言うか、そんなに潤んだ瞳でこっちを見ないで欲しいな!なんかこう、変な気持ちになりそうになるし!


「あ、そう言えばその服透けてるからぽっち見えてるぞ?」

「み、見るな馬鹿ぁ!」


 それは素晴らしきアッパーカットだった。風を纏ったその拳は俺の顎を突き抜けて頭蓋をもボッっという音と共に粉砕されて俺の分身は見事に消えてしまった。うん、かなり弱体化されているとはいえ流石、魔王。やばいな!








「――だけど、きっとそれは無理なんだ」


 ぽつり、そんな言葉が最後に聞こえた気がした。

もう朝!遅くなりまし( ˘ω˘)スヤァ

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