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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第五章:勇者な執事と白き龍の招待状。そう、絶望が俺のゴールだ!
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15話:積乱雲ってなんだか何か潜んでそうで見てるだけでワクワクするよね?

 社の外に出て天高くそびえ立つトネリコの巨木を見上げる。

 うん、高いな!寂しいけれども一人でこれを登らないといけないという。

 だけど、色々と前提を聞いておかなければならない。だって気を傷つけずに登るだけなんて条件簡単すぎるんだよ?ほら、羽のある種族なら一瞬だし?


「ですが、真人さんには羽はありません。なのでこれは試練足りうるのです」


 そう言ってウエンディさんがにっこりとほほ笑む。うん、まだあるよね?


「はい。あと一つだけ。この木は大精霊ウィンディアの樹です。ですので、他の精霊の力を借りずにお願いしますね?」

「にゃあ、でもそれなら真人さんじゃ難しいんじゃ?」


 クロエがなんだか心配そうに俺を見る。

 まぁクロエの無理は無いだろう。俺ってだいたい風纏ったり水纏ったり炎の精霊さんな婚約者さんを頭にのせてるし?道路の整備は土の精霊さんに手伝ってもらってるのは言わずもがなである。うん、精霊さんたちにお世話になりっぱなしなのである。


 だけど、クロエは一つ忘れていることがある。うん、俺って忍者なんだよ?


「うわぁ、きもっ!?何も使わずに気を垂直に普通に登っていってるぞ!?」

「爪も建ててねーな。い、一体どうやって……」


 なんだかみんなの反応が芳しくないけれど、登れてるんだから問題ないよね!体の中の気を大樹にくっつけることにより、気を傷つけることなく、一体となりながら登っているわけだ。忍法木登りの術!的な?


「に、ニンジャ!?アイエエエ!ニンジャナンデ!?」


 なんだかどっかで聞いたことがある驚き方をウエンディさんがしてくれている。やっぱり菜乃花さんの影響を少なからず受けているようだ。うん、染まり切ってなければいいなぁ。だって、あんな美人で綺麗な人がぐふふとか言いながらBL本を漁っている姿は想像したくないんだよ!


 頬を撫でる風を感じながら木の上へとあっさりとたどり着く。大きく枝分かれたその中央に小さな祠があり、そこには何ともちょうどいいサイズの木材が用意されていた。あれ、ウィンディアさんが舞ってくれていたりするものだと思っていたのだけど、違うのかー。


「悪かったな。大精霊様じゃあなくって」

「それで何で代わりにいるのがお前なのさ」


 そこにいたのは朝に逢ったはずのシルヴだった。うん、朝ぶりだね?


「なんでと言われても姉さ――ウエンディにここに来る奴にご神木の枝を授けるように言われていたんだ。むしろ何でお前がここにいると聞きたいのは僕の方なんだが?」


 訝し気に可愛い顔でジトをされる。

 ぐ、ぐぬぬ、こいつはシルヴ!シルヴだ!落ち着け俺。心を静めるんだ。あ、はい、ありがとうございます!……はっ!?


「何をやってるんだよ……。はぁ、こんな奴にどうして負けたのか」


 なんだかシルヴが頭を抱えている。


「ともあれ、サクラちゃんの眼鏡の材料にこの木が必要だって話で取りに来たんだよ。最近、魔眼を使うようになってきて少し制御できるようになってきたからって、大魔王が手配してくれた訳」

「ああ、それで……か」


 はぁ、となんだか気の抜けた様子でシルヴが近くの木の枝に腰かける。うん足を組み替えるんじゃあないぞ!お前割と短めなスカートはいてるんだから見えるぞ!……白くぁ!?


「の、覗くな!?」


 顔を真っ赤にして木の枝をぶつけられてしまった!恥ずかしいならそんな恰好するんじゃないよ!


「この格好は仕方ないんだ。もう、どう足掻いても。……たとえお前を殺したとしても男に戻ることなんてないんんだから。だから、ウエンディ姉さんや菜乃花姉さんに可愛い格好を覚えろと……」


 シルヴどこか遠い目をしている。め、目が死んでるぞ!一体どんなお着換えをさせられたんだ……。うん、たぶん猫耳メイドはやらされたんだろうなぁ……。


「何でそれを知っている!?どこで!どこでそれを!?」

「ふっ。にゃん♪と言わされたと見える」

「うああああああああ!!」


 頭を抱え、突っ伏して叫び声を上げている。だから見えるって言ってるだろぉ!レースとかやばいからなぁ!少し透けて……うん、殺気をこっちに向けないで!?


「……はぁ。こうなることまで姉さんたちに見透かされてると思うと、憂鬱過ぎて死にたい」


 膝を抱えた体操座りでズーンとシルヴがうなだれている。

 ううん?姉さんたちって、塔の魔女の菜乃花さんと巫女のウエンディさんと血のつながりはなさそうだけどなぁ。


「二人は僕の育ての親なんだ。幼いころに僕の本当の両親は他界していてね」


 なんだか複雑な家庭環境をサラリと告白されてしまった。うん、そんなこと言われても俺ってどうすればいいかわからないから困っちゃうんだよ?


「愚痴を聞くくらいはいいだろう?どうせここなら誰もいないんだしな」


 上空百メートル。見回す限りここより低い木々しかない。遠くに先ほどまでいた塔が見えるけれども、流石にここの話は聞こえないだろう。うん、聞いちゃだめだからね?


「ん?どうかしたのか?」

「うん、ちょっとね」


 可愛らしく小首をかしげるシルヴ。

うん、こいつ分かっててやってるんじゃないだろうなぁ!一つ一つの動きが妙に可愛すぎるんだけど!?


「で、シルヴはなんでここに?ウエンディさんを明日の晩餐会の招待に来たの?」

「それもあるが……まぁ、お前には話しておこう」


 何かを決意した目。

 俺はこの目を知っている。


「明日、僕は賢龍たちに決闘を申しこむ。勝てば僕の立場は護られるからね」


 死地に挑む者の目。

 敵わないと知りながら、絶望を知りながら、それでも尚、立ち向かう者の目だった。


「……死ぬ気かい?」

「死んでもどうせ復活させられるさ。だから抗う。抗って、勝ち取りに行く」


 初めて逢ったころと変わっていない、シルヴの目。

 まっすぐ過ぎてちょっとだけ、まぶしい。


「だから心配しなくていい。お前に一泡吹かせてやれないのは心残りだが、僕は僕で何とかするさ。姉さんたちに色々と吹き込まれているだろうけどなくていい。というかお前はオウカ様を幸せにすることだけ考えろ。そうじゃなけりゃ、負けた僕の立場がないからな」


 いうだけ言ってシルヴは龍の翼を広げた。

 完全龍化まで至らなくても、翼は取り戻せていたみたいだ。


「それじゃあ、また明日。ふふ、僕の雄姿をみせてやるよ」


 ふわりと風を纏い、シルヴは空へと舞い上がる。

 一瞬だけこちらを見て手を振ると、あっという間に彼方へと飛び去って行った。


 ……うん、だからね?スカートで空飛ぶと見えるから!見えてたからね!?

今日は間に合った( ˘ω˘)スヤァ

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