10話:物欲センサーって色んなゲームにでも搭載されてるけどいらないよね?
塔の魔女さんに案内されるままに連れてこられたのは、さらに上の階。
下の階と同じく本だらけだけど、至る所にBLな雰囲気があふれ出している。壁にはタペストリーにポスターも張られていて、フィギュアにぬいぐるみが可愛く飾り付けられているなんだかオタクな女の子の部屋だった!
それにしても、落ちたと思ったら昇ってて、気づいたらエルフの森を一望できる塔の上まで登っていたみたいだった!これぞ魔法!ううん、危ないけど便利だなぁ……。
「あはは、ごめんね。お客さんが来ることなんて全然考えてなかったからそこらへん適当だったのよ!」
長い黒髪と大きなスイカを揺らして塔の魔女さんがほほ笑む。
そう、こうブルルン!って……うん、見てないから。凝視なんてもっての外。だからね、サクラちゃん。二の腕の裏側は痛いからつねらないで欲しいなって!ああもう、ほっぺた膨らませて可愛いなぁ!
「ふふふ、なんだか友達の子供がラブラブしているのを見ると、未だに独り身の私の胸をものすごく抉ってくる感じが。ぐすん、寄って来るのは変な男ばっかり。だけどいいの!私にはアニメに漫画に小説があるんだから!ゲームしたいなぁー……」
塔の魔女さんは天井を見上げて空中で指をピコピコさせてる。
う、うん、この人色んな意味でダメダメだなぁ……。
「ともかく自己紹介ね。私の名前は如月菜乃花よ。大体の人は塔の魔女って呼ぶからあんまり名前で呼んでくれないのよねぇ。まぁそれ以前にここに引きこもってからほとんど人と逢ってないから、呼ぶ人も……」
そう言う菜乃花さんはなんだか遠くを見ている気がする。うん、その視線の先にある可愛い女の子のフィギュアたちが原因じゃあないのかなと、突っ込みを入れたかったけれど、うん、そっとしておこう。
「まぁ、俺らの自己紹介なんて一人ずつしてもアレですし?適当に割愛して、俺がサクラちゃんの婚約者の婚約者の水無瀬真人。そんで、そっちが姫騎士のライガー「ライガだってーの!」にサンスベリアさん、そんでクロエに椿さん。こっちが俺のまぁ、うん。部下の可愛いロベリアちゃんに苺ちゃん、莉愛ちゃんです!」
「本当に適当だった!」
なんだかジトを後ろから感じるけど、一人ずつ挨拶しちゃうと長いんだよ?ほら、人数多いしね!
「それで、今回は挨拶だけしに来たわけじゃ無さそうだけど、何か私にお願い事があったりするの?」
「するの?」
「って、何で真人くんが首傾げてるのさ!」
だって仕方ないじゃないか!大魔王にシルヴェス行くんならついでに寄ってきて!って言われてただけだし?うん、たぶん荷物受け取りながら大魔王と話してた椿さんの方が詳しいと思うんだけど、そこのところどうなのかな?
「それはもちろんや。まずはこの手紙を」
そう言って椿さんは菜乃花さんに手紙を差し出す。あ、なんか面倒くさそうな顔したよ!そんなに面倒くさいことなのかな?
「あーうん。依頼というかお願いというか。ううん、作ることはやぶさかじゃあないんだけど材料がねー」
「材料はともかく、何を作れって書いてあるのかな?」
「眼鏡だよ?」
んん?眼鏡って、あのメガネかな?もしかして老眼鏡欲しいのあのおっちゃん?それならルーペ買えばいいんじゃないかな?ほらあの象が踏んでも壊れ無い的な奴!
「流石に象に踏まれたら壊れるんじゃないかなぁ!じゃなくて、作るのはグリムのじゃなくてサクラちゃんのメガネだよ」
「え、わ、私のですか?」
ふふふ。はわっと、驚いた様子で自分を指さすサクラちゃん可愛いなぁ。だけど、サクラちゃんに眼鏡ね。確かに似合ってて可愛いと思うんだけど、なんで眼鏡を作るのかな?魔眼あるし、眼鏡くらいじゃ透過しちゃうと思うんだけど!
「そこは光学的透過性はあっても魔力透過性が薄い素材があれば大丈夫。そう、例えば龍玉とかね」
「龍族の、しかも上位の龍族が生まれ出るときに持っているっていう宝玉の事ね」
「流石莉愛ちゃん物知りだ!なるほど、紅玉とか碧玉とか蒼玉とかかー。天鱗じゃないだけまだましかな?」
「何の話をしているのかしら!?」
「ゲームの話かな!」
だけど龍玉って言われて思いつくのなんて、そんなものなんだよ。龍とも何回か戦ってきたけど、龍玉なんて落としてくれてないし?
「現実とゲームを一緒に考えないでちょうだいな……」
なんだか莉愛ちゃんが頭を抱えてる。だって仕方ないね!俺だって現代っ子だもの!
「まぁ、ゲームじゃなくても龍が持ってるから龍玉なんだけどね。まぁ、自分の分身みたいなものだし、後生大事に宝物庫なんかに保管してたりするのよね。まぁ、最近だとお金が必要で泣く泣く手放す龍族もいるって話だけど?」
借金苦でお宝を手放すって、異世界も世知辛いというかなんというか。うん、今更だね!
「そう言う分けで、ここまで態々来てもらってあれだけど、まずはその龍玉が無いと無理かな」
「なるほど、つまりは龍玉があれば言い訳ですね。うん、ちょっと聞いてみるよ」
「え」
驚いた顔の菜乃花を後目に、念話でこっちに読んでみる。うん、もしもしー今行ける?おけー。
ポンと煙が溢れて、くるりんぱ。頭の上にモフんとした感触が広がる。うん、勉強中に喚んじゃってごめんね?
「気にしなくていい。己も真人に逢いたかったところ」
もふんもふんと頭の上でフレアがスリスリしてるのが分かる。どうやら、大分癒しを求めていたらしい。
「ありがとねフレア。それでだけどさ。サクラちゃんの魔眼用の眼鏡に龍玉が必要なんだって。もらえたら嬉しいんだけど、流石に無理かな?」
「構わない。真人は己の婚約者。つまり、己は真人のだし、己のモノは真人のモノだし。ちょっと待ってて」
そう言ってポンと音を立ててフレアが頭の上から消える。
「え、え?今の子って何かな?」
「何って俺の婚約者の一人のフレアだよ?うん、大事にするって言っちゃったからもう逃げられないんだよ。まぁ後悔はしてないけどサクラちゃんには土下座したんだよ」
「まーくん、たぶんそういう事じゃなくって――」
「己、本体で参上。うん、お母様に魔力体で行ったら持って行ったことにならないって言われたの」
そう言って現れたのは可愛いドレスに身を纏った人の姿のフレアだった。うん、こっちの姿って大分久しぶりだね!そっちも可愛いぞー。
「んふ、ちょっと照れる」
ほっぺを抱えてテレテレとする姿がなんともいじらしくて、とっても可愛い!だけどうん、何で胸のところが大胆に開いてるのかすっごく気になるな!外でその服着ちゃ駄目だぞー可愛すぎるからね!
「なるほど、効果は抜群。と、忘れる前に渡しておく」
手渡されたのは透明な手のひら大の宝玉。静かな、けれども不思議な力を感じる玉だった。
「すごく澄んでて綺麗な玉だね。ありがとう、フレア」
「ん、それじゃあ今度デートで」
了解、と言ってフレアの頭をなでなでとしてあげる。今度は新しくアークルにできたパフェに連れて行ってあげよう。美味しかったしきっと喜んでくれるはずかなって?
「むむむ、いいなぁ。デート」
「眼鏡が出来れば外に出れるから、夢じゃないわよ。はぁ、まさか爆炎龍のお姫様と婚約してるって……。いや、うーん、だからこそこのタイミングだったのかなぁ」
頭をポリポリと書いてごそごそと何か地図を取り出して、俺に手渡された。うん、何かなこれ?
「何って見た通り地図だよ?えっと、これがここで、ここまで行ってここのトネリコの大樹の枝を取って来て欲しいの。アレってここじゃないと手に入らないからお願いね!」
「うん、唐突にお願いされても困るんだけど、たぶん眼鏡作りにいるんだろうね!とりあえず行ってくるんだけど、うーん。それじゃあクロエとライガー、サンスベリアさんについて来てもらって、他のみんなはここでサクラちゃんの護衛という事でよろしく?」
「はい、お怪我無きよう」
うん、ロベリアちゃん。ライガーたちだけじゃなくて俺にも言って欲しいな!うん、勇者だし死んでも死なないけど心配くらいして欲しいんだよ!
「え、だって真人様ですし?」
どうせ大丈夫でしょう?とキョトンと首を傾げられてしまった。
ううん、寂しいな!
気づいたら寝てました。遅くなり申し訳ございま( ˘ω˘)スヤァ