7話:エルフは小さいのが基本だって言われるけど大きいものもそれはそれでいいものだよね?
ジェット機能で無事着地!あれ、なんだかみんな顔が真っ青だけどどうかしたの?ついたよ?
「その機能、あるなら最初から言いなさいよ!」
「そうだよ!死ぬかと思ったじゃないか!」
「あぅぅ、あうぅぅ、ふぇぇ」
なんだかみんな涙目でぽかぽかと俺を叩いてくる!うん、痛いよ!割と痛いよ!?まったくもう、窓の外を楽しんでるサクラちゃんを見習ってほしいなぁ!
「はい、とっても楽しかったです!」
にっこりととっても可愛らしい笑顔でサクラちゃんがほほ笑む。ああも可愛いなぁ!目を覆う魔帯の上からでも目を輝かせてるのが目に浮かぶようだよ!
「あーもうはいはい、それはいいから。とっとと準備して降りるわよ。まったく、何で二度もあいさつ回りなんてしないといけないのよ」
ぶつぶつと莉愛ちゃんがご立腹顔である。まぁそれも仕方ないだろう。この領に来てシルヴのとこで一旦降りたあと、遠回りをしてここ、エルフ自治区へとやって来たのだから。本当に面倒くさいのだけど事情があるのだから仕方がない。だってここってエルフしか本来は立ち寄っちゃ駄目だから、許可証なんて面倒くさいのが必要だったんだよ!ふふふ、シルヴの執事さんにお願いして発行してもらえていたりする。ふふふ、出来る男は主の知らないところで頑張っているのさ!
「と、声高に言っている時点でダメダメですね」
「まぁ、いつもの真人さんきゃしなぁ。気にせんといてええんとちゃうん?
うん、俺の頑張りがサラリと流された気がする!頑張りと言ってもお願いします!って言って事前に書いておいたみんなの分の資料を提出しただけなんだけどね!……まぁ、そのせいで来れなかった子もいるんだけどね。うん、割りと条件厳しかったんだよ!
「そう言う分けで、ここのエルフの里……ヴぁ、ヴぁ、ヴぁりちゅ?「ヴァリスね?」そうそう、そんなとこ。領主のおっちゃんに逢いに行って書類を出してくるから」
「いえいえ、待ちなさいよ。こういうのってトップがあいさつに行くべきじゃあないの?」
莉愛ちゃんがちらりとサクラちゃんを見る。うん、本当ならそれが礼儀なんだろうけどね。此処はみんなと待っててもらいたいんだよ。ほら、書類出してくるだけだし?
「……まぁ、真人さんがそう言うんならええんとちゃう?ほら、ライガにクロエは潰れてはるし、サンは……うん、爆睡しとるしね」
そう言えば静かだと思ったら猫組の三人とも寝ちゃっていたんだね!まぁ、仕方ないか。快適なフラ……ドライブだったんだし?
「それは絶対に違うわよ!死ぬかと思ったわ!!」「というか、今フライトって言った!!言いました!!」「ぐす、怖かった」「快適では……なかったなぁ」
サクラちゃん以外みんなに怒られた!おかしい、あんなにも見事な操縦技術を披露したのに!うん、何でジトなのかな?はい、ありがとうございます!
シルヴのいた城に比べてしまうと質素だけれども、それでもきっちりと作られた洋風建築なお屋敷は森に囲まれたこの里の中で少し目立って見える。
このヴァリスと言うエルフ自治区は森を切り開いて作られた場所なのではなく、森そのものが彼らの住処にしている感じだった!ビルをも超える木々の空に橋がかけられ、なんとも摩訶不思議で幻想的な雰囲気だった。うん、普通に来たら絶対にここに人が住んでるなんて気づかないんだよ?見事な隠匿魔法で隠されてたし?
なんだかこっちをジィっとにらんでる若いエルフの警備兵さんに挨拶をして書状を見せる。
「へぇ、珍しいですねー魔女様にお客様だなんて。しかも大魔王様直々の書類まで!見た目は普通の人なのにすごい人なんですねー。あ、どーぞどーぞ族長様は中におられますので!」
にっこにこな耳の長い金髪エルフなお兄さんが、軽い口調で中に案内してくれた!
あれれ?なんだか覚悟してた感じと違うぞ!ほら、閉鎖的な場所で来れる種族も限られていたし、首都で許可をもらえないと入れないくらいに厳しかったんだよ?噂を聞いた限りだとかなりつんけんされそうで怖いなって思っていたんだよ!
「ふふふ、それは一昔前の話ですね。今の族長様に代わってからはそういう事はほとんどありませんよ。交易も活発になって里も豊かになりましたし。あ、僕も魔導家電使ってるんです!魔導冷蔵庫は本当に便利で便利で……。独り身にはとってもありがたいんですよねぇ。狩ってきた獲物を捌いて保存に困ることなんて、ままあることでしたし」
なんだかしみじみと警備兵さんが語ってくれる。まぁ確かに冷蔵庫はあるととっても助かるんだよね!ほら、作り置きのご飯とか冷蔵庫が無いと長期間持たないからね!あれ、何でだろう。涙が出てきたぞ!独り身って楽しいけど、寂しいんだよねー。
質素な廊下を案内されるがままに連れられて、自治領主室までの道を歩く。
調度品も無く、床には絨毯すら引かれていない。質素、倹約、堅実、なんて言葉が浮かんできそうで、なんだか同じ国なのに別の場所に来てしまった気がしてならない。
「族長様は真面目な方ですので、自分の身なりなんて気にされないんです。ただひたすらにこの里とエルフ……そして、っと、ここですね。すみません一人語りが過ぎてしまいまして」
「いいや、気持ちが楽になったから助かっちゃったよ。ありがとね、お兄さん」
「はは、お兄さんだなんて言ってもらえるなんて光栄だなぁ。僕もまだまだ若人で通れるってことだしね!」
あれ?そういえば……エルフってかなりの長寿の種族だから見た目じゃ年齢って判らないんだっけ?このお兄さんって何才なんだろ……?き、聞くのが怖いな!
「失礼いたします。アビス国より、塔の魔女様へ向かう許可が欲しいとのお客様がいらしております」
「――通せ」
中から男の声が聞こえ、扉が開かれる。
「ほう、貴方ですか。一度逢いたいとは思っていたのです。シルヴを打ち破った――男、水無瀬真人。そう、貴方にね」
「ええ、初めまして。私も貴方と逢ってみたいと思っていたんです」
「ふふふ、それは奇遇だ。ああ、そこにかけてください。今美味しい紅茶を淹れましょう」
俺の持ってきた書類をエルフなメイドさんに預けて、エルフとは思えないほどにガタイの領主がこちらを値踏みするようにジィと俺を見る。
男の名はアルヴ・ヴァン・ガリウス。
このエルフ自治区の領主にして族長。そして、かつてシルヴの参謀であった男だった。ううん、厳ついな!