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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第五章:勇者な執事と白き龍の招待状。そう、絶望が俺のゴールだ!
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5話:裏切りは蜜の味とかいうけど絶対に胃に悪そうだよね?

 応接間に通され、サクラちゃんをエスコートして上座に座ってもらい、その横に姫騎士の面々が座っていく。うん、俺たちはもっと下っ端だから立ったままなんだよ!と言うか俺ってサクラちゃんの執事だしね。真横で紅茶を入れてあげるんだよ。うん、何でか最近忘れられている気もしないでもないけど、俺ってサクラちゃんの恋人で婚約者で執事だからね!


「え、ええと、主賓のまーくんが座らないと駄目なんじゃないです?」

「いいかい、サクラちゃん。俺ってば違うからね?主賓じゃなくて従者的なアレでサクラちゃんのオマケだよ?雑誌で言えば付録だよ?だからほら、座って、その、アイツと面と向かうのは勘弁して欲しいなって!何でシルヴの席の隣にもう一席用意されてるのさ!こんなの絶対おかしいよ!?」


 そう、頭を抱えて死んだような表情のシルヴの隣にはしっかりと椅子が用意されている。執事さんがにっこりとこっちを見ながらどうぞ、こちらへ♪と言っているけど俺は首を振る。何度も振っているんだよ!うん、林檎ちゃん?背中を押さないで欲しいな!?行きたくないよ!


「何だよ。ぼ、ボクの座りには座れないっていうのかい?」

「それをシルヴが言うかな!?それならその殺気を抑えて欲しいんだよ!」


 真っ赤な顔になりながら、ぐぎぎ、とシルヴがこちらを睨みつける。可愛らしい顔立ちになってしまったせいか、迫力があんまりない。というかぐぬぬと言う顔のせいで余計かわいく見えてなんだか悔しいんだけどどうなんだこれ!何なんだこれ!


「真人さん、ほら!またとない経験だよ!ライバル同士だと互いに思っていたのに気づけば相方が女性になっていて、んへへ、気づけば婚姻関係にだなんて、うふふ」

「くそう、楽しそうだねぇ!でも!現実的にそれはあり得ないというか、いや、ありえてしまってるんだけど!ともかくまず、どういうことか説明が欲しいんだよ!なんでみんな答えてくれないんだよ!って後になって聞いても冷ややかな目で見られるだけとかまじめに勘弁してほしいなって!」


 言ってジィっとシルヴを睨み返すと何でか更に顔を真っ赤にしてそらされてしまった。何なんだよぉ!


「申し訳ありません、真人様。これにはシルヴ様の種族の特性なのです」

「と、特性……?」


 思わず首を捻る。特性と言うとモンスター的な感じなアレで加速していったりとか威嚇して攻撃を下げたりするんだろうか?


「それは絶対に違うと思うわよ?」「威嚇すると攻撃力が下がるって一体どういう事でしょう?」「あっちの、世界のゲーム……だよ、すももちゃん」


 うん、的確な突っ込みをありがとう莉愛ちゃん。俺の心が少しだけ和らいだよ!


「……正確に言えば先祖の特性なんだ。精霊ってのは原初に近づくほど、性別が無いというかあいまいでね。チョットしたことで変わるなんてことがよくあったんだ。ボクらの世代になるまでにはそう言う特性も薄れてきていたはずなんだけど、どうした事か……ボクは先祖返りをしてしまったみたいで……」


 俺がシルヴを倒してしまったから。それが切っ掛けになってシルヴは復活の時に女の子になってしまったらしい。うん、それがどうして俺と婚約って話になるのかな!それなら、別のこの領の男と結婚すればいいじゃあないか!俺関係ないよね?もらい事故的な感じで婚約迫られても、俺ってばとっても困っちゃうんだけど!


「それにも事情がございまして」


 おヒゲの執事さんがそっと外を眺める。


「シルヴ様の種族、アウラドラコと言う種族は古代から好戦的な種族でした。より強く、より高みを目指し、あらゆる種族に戦いを挑んでいたそうです」

「おおよそシルヴとは想像がつかないな」


 シルヴは戦いはするけれども、必要じゃない戦いはしたくなさそうな雰囲気がある。だって、ビオラちゃんの事助けてくれたしね?とか言ったらなんだか照れ臭そうににシルヴが顔をそらした。くそう、無駄に様になってて可愛いのがむかつくぞう!


「今はその荒い気質も失われてはいるのです。ですが、その、“戦って負けた相手の子を産み、もしくは産ませてより強い種族になっていく”という特性がシルヴ様に現れまして……」

「いやいやいやいや、それは色々とアレ過ぎないかなその種族!?」


 つまりは、倒されたら女の子になって「お前の嫁にしろ!」と言ってくる種族なわけだ。うん、怖すぎないかな!


「それでもこうして子孫が残って来ているという事はつまりはそういう事なのです。ええ、倒されてしまえば――」

「そ、それ以上は言わなくていい!話は聞けた。真人はやはりわ……ボクとは結婚できないという事だ。爺やも分かっていたことだろう?」


 執事さんの話を遮ってシルヴが声を荒げる。


「ですが、シルヴ様。それでは賢龍の者らが……」

「構わんと言っている。どうせボクはもうアイツらに抗う力なんてない。……好きにさせてしまえばいいのさ」


 なんだかよくわからないけれども、どうやら今この領で実権を握っているの三賢龍という奴ららしい。

アイツらと言ってる時点で何人かいるらしい。本当に苦労してるな、こいつ……。


「そう言う分けだ、真人が婚約者にならなくてもどうとでもなる。まぁ明日のパーティーは予定通りやるから楽しんで行ってくれ」


 それじゃ、と椅子から立ち上がり、シルヴは振り向かずに部屋から出て行ってしまった。まったくもって勝手な奴だ。


「申し訳ございません、真人様。お呼びいたしましたのにこのようなことになりまして」

「俺は別に気にしてないんだけど、俺が婚約者にならなかったらシルヴはどうなるのかな?」

「……そう、ですね。今、賢龍たちに優劣はありません。ですので、彼らの子を順に産まされていくことになると思われます。シルヴ様にとってはとてもお辛い事になるでしょうが……」


 うん、ええと、色々と言いたいことはあるけど一つ言おう。バカじゃないのかな!?


 いやいやだっておかしい。この領の為に命を賭して覚悟して戦ったアイツが、ただ私腹を肥やしていた連中の慰み者になるだって?そんなの、どう考えても間違っているじゃあないか!


「ですが、これがこの領の取り決めなのです。申し訳ございません。私も何とかしたかったのですが、まさかシルヴ様の参謀であったアルヴ様があちら側につかれてしまうとは……」


 寂しそうな顔で執事さんはそう呟く。どうやらこうなった原因の一つに腹心の部下の裏切りがあったらしい。


「ともかく、断ったからには私たちにはもう何も言えないですよ」


 ロベリアちゃんがやれやれと肩をすくめる。確かにその通り。その通りなんだけれども、何だか飲み込めない。いいや、俺にはどうしてもそれは飲み込んじゃあ駄目だと思ったのだった。だって、俺はこの世界に来て決めたのだ。そう、()()()()()()()。うん、異世界も生き辛過ぎないかな!困るね?

日付が変わる前に間に合ったで( ˘ω˘)スヤァ

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