序:水の底から見上げる空って割と綺麗で感動しちゃうよね?
――ああ、アレは良い戦いだった。
男として、魔王としてボクは負けたのだ。
彼は間違いなく勇者だった。魔王を倒し、姫を救う。
誰もが――そう、ボクもあこがれたことのある勇者だった。
故郷の事は大いに心配だけれども、それでもあの戦いはボクにとっては――
――音。
音が聞こえる。
こぽり、こぽりという水泡の音。そしてゴウンゴウンと鳴り響く機械音。
――おかしい、ボクはあの時死んだのでは?
「――様――覚醒――ました。バイタル、安定――ます」
透き通る声が聞こえた。けれども水泡の音が邪魔でよく聞こえない。
ああ、そうか。ボクは生き返ったのか。
つまるところは、ここは培養液の中と言ったところだろう。
「うむ――よくやった――よ」
バカなことを。ボクの魔石を返されたのなら、次代の魔王候補に渡せば良いものを――
「くかか!ああ、無様な姿だな――よ」
ああやはりうまく、聞きとれない。
「お前が跪く姿――ああ、楽しみでならんなぁ」
猛烈な眠気が僕を襲う。ああ、そうか、こいつ、は――
ボクの意識は闇の中へと落ちていく。心地よい水の音に身を任せ、またボクは夢に沈んでいった。
第1話は本日中に投稿いたしま( ˘ω˘)スヤァ