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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
メイド忍者とまかないご飯
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メイド忍者とまかないご飯7

 ごめんなさい。たった六文字の言葉。けれどもそれを口に出すことは実に難しいことでした。


 私がそんなことを口にしてしまっていいのか?

 私にそんな言葉を口にする資格はあるのか?

 そもそも、私がその言葉を口にして――


「うん、面倒くさいね!おば……おねえさーん!うん、ニンジンを音速で投げるのはやめて欲しいな!砕け散ったらもったいないから連打だとう!?」

「真人さん!?」


 うだうだしているうちに八百屋のおかみさんに話しかけた真人さんが、何でかニンジンをおでこにもらっていた!まぁ、うん、真人さんが悪いから自業自得ですね。うん、ニンジンって地面を抉る威力があるんですね……。

 昼下がりのアークルの城下町。お昼休みに真人さんに首根っこを掴まれて私はまたここに来ていました。


「それで、なんだい真人のにいちゃん?次はカボチャがいいかい?」


 オーガなおかみさんがにっこりといい笑顔で一抱えほどもあるカボチャを頭上に掲げています。ひ、ひええ!?


「流石にそれは色んな意味で被害がでかそうだからやめて欲しいかなって!そういう事で、準備はいいかな?」

「え、えぇ?!ちょ、ま、待ってください!はうぁ!?」

「はっはっは!答えは聞いてないけど!そう言う分けで、あんずちゃんが言いたいことがあるそうなので聞いてくれろ?」


 そう言われてぐいと真人さんに背中を押されてしまいました。


 目の前には脇に大きなカボチャを軽々と抱えたおかみさん。 思わずたらりと冷や汗が額を伝わります。


「はー。まったく、真人さんも人が悪いねぇ。言わせたいことは分かるけど、そんなことしなくってもアタシらは気にしないって知ってるだろうに」

「知ってる知ってる。知ってるから謝ってもらいたいのさ。謝りたいのに謝れないのってどうしようもなく辛いものだからね」

「……ああ、そういう……」


 おかみさんは大きくため息をつき、頭を掻いて笑顔のままこう続けました。


「そう言う分けなら聞いてあげないとだね。ほら、あんず。思いのたけを言ってみな」


 暖かなその言葉。


 意を決して、その五文字を言おうとします。だけど、途端に声が出なくなってしまいました。冷や汗が止まらなくなり、目の前がぐるぐると回って、体がガタガタと震えてきます。

 ああ、おかみさんはこんなにも優しくしてくれているのに、真人さんにまで迷惑をかけて――


「えい」

「あうぁ!?な、なんで叩くんですか!?」


 ぺちんと頭をたたかれて思わず真人さんを涙目で見てしまいます。私も鍛えているはずなのに、全く反応すらできませんでした。流石と言うべきか、私の油断しすぎというべきか……。


「考えすぎだよ。ほら復唱。ごーめんなさいよ」

「ご、ごめんなさいよ?」

「違う違う。ごーめんなさいよ!」

「ご、ごーめんなさいよ……」

「だが私は謝らない」

「だが私はあやま……って謝りに来たんですよ!?」


 そうだったね!と真人さんはカラカラと笑います。うう、もう本当に私をからかって……。


「ほい、正面を向いて復唱!」

「え、ええと。ごーめんなさいよ?」

「ん、いいって事よ。アタシは気にしてないから、気軽にね」


 にっこりと笑ったおかみさんが私の頭を優しくぽんぽんと撫でてくれました。

 ……あれ?あ、あれぇ?


「よし、大体わかった。あい、次行くねー」

「ま、待ってください真人さん!なんだか思っていたのと違う、違う気がします!真人さぁん!」

「さぁ、ひとっ走り付き合えよ!」

「どこまで行く気なんですか!?」


 そうして私はお昼休みをとうに過ぎてもいろんな人に頭を下げ続けました。後ろに真人さんがいたせいでみんな笑ってましたけど!


「でも、すっきりしたでしょ?」

「しました。ええ、本当に不承不承ながら」

「えー」


 公園のベンチに座りながらぷくーとむくれる私に真人さんが不満の声を漏らします。だけど仕方ないじゃないですか!あれじゃあ謝ってるというより言わされてただけですし!……うん、それでもかなり気持ちが晴れたのがなんだか悔しいのですが。


「ま、そんなもんでいいんだよ。みんなも言ってたでしょ?気にしてないって」

「だけど、なんだか……その、ズルをしているみたいで」


 逆に申し訳ない気がして、と言いかけてまたぺちんと頭を叩かれました。なんで!?


「申し訳ないなんて考えるのは間違ってるんだよ。というかそれはみんなに対して失礼かなって。そう思っちゃうなら言葉が違うんだよ?」

「違うんですか?」

「そう、違う。だってそこはお礼をいうべきなんだよ。ありがとうって」


 その言葉に私はハッとしてしまいました。そう、私はお礼を言うべきだったんです。だって、もう許してくれる、気にしていないって知っているのに私の謝罪を聞いてくれて、あまつさえこれでもう大丈夫だよ、もう気にしなくて大丈夫だからね、なんて言ってくださったのですから。


「わ、私!皆さんにお礼、言ってきます!」

「うん、いってらっしゃい。みんなの困った顔が目に浮かぶなぁ。良き哉良き哉」

「と、その前に――真人さん、ありがとうございました。私、真人さんの為に何でもがんばりますから!」


 そう言うと、真人さんはなんだかハトが豆鉄砲を食らったような顔をしていました。ふふふ、やっと意趣返しをすることが出来ました!

 だけど、今の言葉に嘘偽りはありません。私は真人さんの為ならどんなことでも出来ると、そう思っているのですから。


 でも、うん。エッチなことはもう少し色々とお話をしてからにしてくれたら嬉しいかな、と思って私は頭を振ります。ううう、何考えているんでしょう、私はぁ!!


という事で今回の挿話はこちらで終わりとなります。

読んでいただき、ありがとうございましたOTL


次回より、第5章を開始いたします。どうぞよろしくお願いいたします!


そして今回も遅くなりましたあああああああああ( ˘ω˘)スヤァ

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