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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
メイド忍者とまかないご飯
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メイド忍者とまかないご飯5

――なんで殺した?



 なんで?



――何故見殺しにした?



 何故?



 ああ、目が、目が、目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が、すべての目が幾重数多の目が、感情の篭らぬ目が、ジィと私を睨みつける。



 穏やかなあの人も、優しくしてくれたあの人も、親しくなったあの人も、皆、皆、皆、私を見つめて言葉を重ねる。



――()()()()()()()()()()()()()()()、と。



 彼らの手が、石のように動けない私の首へ顔へ体へ、ぬぅと伸び、ぎゅうと締め上げる。



 あ、あ、あ、あ――





                                ――ナンデコロシタ。



「っ――!」


 声にならない悲鳴を上げ、私は目を覚ましました。

 ぐっしょりと汗でぬれた額を拭い、首に触れる。――跡などあるわけもなく、私は安堵のため息をつきます。

 これで何度目かの悪夢。ここに来てから――ううん、()()()()()()()()あの日からずっと見続けている私の悪夢。

 そう、私は父が生きていたころにもここを訪れたことがありました。それは潜入任務の報告の為に父に顔を見せるように言われ、訪れたのです。


 あの日の事を私は未だ忘れられずにいました。


 綺麗に整えられた表通り以外の総てが壊れ、寂れ、活気の失われた街――。


 そんな街で人々は街中にあふれる虫たちに手足を食われ、ボロボロになりながらも生きていた。……ううん、生かされていました。


 労働力として、玩具として、食料として。


 人々に生気は無く、ただ空虚な目で城へ向かう私を見て――


 大きく息を吐き、思わず流れた涙をぬぐいます。

 あの日、あの時、彼らのあの目を見てしまって、私はこの悪夢にさいなまれ続けています。


 どうして手を伸ばせなかったのかと、どうしてあの時父へ言えなかったのかと。


 けれども、今思い返してみればあの時の私にそれを口にだす勇気なんてありはしなかったのです。私が反抗的な態度をとれば、お母様に火が及ぶかもしれなかったのですから。


 ああ、私には勇気もなく、願いも無く、ただ流されるがままに今に至るのです。

 だから私が赦されるはずもなく、そんな私がここに皆さんに優しくされることを、私自身が赦すことができるはずもありませんでした。


 すやすやと隣で眠るくるみの髪をそっと撫で、窓の外を眺めます。闇夜は雲にあふれ、一つの月すらも顔を見せてくれていなかった。


 思わず、寂しさにギュッと胸を締め付けられ眠るくるみをそっと抱きしめます。


――お父様の忘れ形見。


 お母様と魔獣ゼブルが一つになったとき、この子がいたおかげでお母様とゼブルの総てがまじりあう事が無かったのだ、と真人さんが仰られていました。


『俺は運命なんて言葉は嫌いなんだけど、この子は確かにお母さんを護ろうとしてくれたんだよ。そうじゃなければ切り放った時、まずこの子が切り離されるはずだったんだ。だって、ゼブルは莉愛ちゃんとくっつきたかったわけで、くるみちゃんと合体したいわけじゃなかったんだからね?けれど、そうはならなかった。だから莉愛さんはここにいるってわけ。まぁ、あとはそうだな。バアルの愛のお陰ってことにしてやらんことも無いかな!うちの領でしでかしてくれたことにはいろいろと腹に据えかねることもあるけど、死人に鞭打ってもしかたないしねー』


 とかなんとか。


 だから、この子は私が護らなければならない。私がやりたくてもできなかった、誰かを護るなんてことをくるみちゃんは生まれる前にやって見せたのですから。だから、私がこの子を護らなければいけないんです。


 すぅすぅとあどけない顔で眠るくるみちゃんの暖かさを感じながらまた、瞳を閉じます。

 それでも、眠ることが出来ません。


 心の中をざわざわとあの悪夢が蝕むのです。


――眠ればまた沢山の()()()が私を視るのではないかと。


 罪の意識。

 きっと単純に言ってしまえばそんなもの。


 街の皆さんは、気にすることは無い、気にしてもいないと言います。

 だけど、ああ、だけど、私には拭い去ることが出来ないのです。

 あの目を見てしまったから。悪夢をも絶望をも通り過ぎた空虚となり果てた人形のようなあの目を――


 はらはらと何もしていないのに涙が溢れます。私は何で今、こんな幸せを享受してしまっているのでしょうか?これが罰だとでも言うのでしょうか?答えなんて私に出すこともできず、声に出さずに嗚咽を漏らします。


 ああ、このままではせっかくよく眠っているこの子を起こしてしまう。そう思いそっとベッドを抜け、部屋をでます。シンと静まり返った廊下は薄暗く、ぽつりぽつりと灯った魔力ランプが、何とか足元を照らしていました。

 目的地は同じ階にある食堂。あそこなら、冷たい井戸水が飲めるはずです。


 暗がりの中、物音一つしない廊下を進み、暖簾をくぐって蛇口をひねってコップに水を――


「あ、待った」

「んひゃあああああ!!??もが、むぐぅ!?」

「まった、待って、待つんだオーライ?うん、落ち着いたかな?」

「ま、真人……さん?」


 振り向くと、母と一緒に大魔王城にいるはずの真人さんが手のひらをひらひらと振っていました。

 え、な、なんでこんなところに?


「うん、書類仕事を少し片づけに……ね?」


 なんだか死んだ目で真人さんはどこか遠くを眺められていました。

 この人、すごい人なのになぁ……。

とっても遅くなりましたあああああ( ˘ω˘)スヤァ

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