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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第四章:勇者な執事と海と水着とバカンスと。バカンスはお仕事と見つけたり?
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41話:浪漫を追い求めて色々としてみると気が付いたら浪漫から遠ざかってことってあるあるだよね?

 キラキラと輝く閃光が空を、雲を切り裂いた。



――勇者の放つ聖剣の輝き。



 それは倒すためでなく、悪を討つためでもなく、誰かを救うための力。





――結局私だけでは、魔王足りえなかった。


 私には覚悟が足りていなかったのだ。ううん、足りていないのは覚悟だけだと思っていた。能力も、実力も、行動力も私には何もかもが足りていなかったんだ。ああ、なんて思い上がりだったのだろう!

 私の力だけではあの化け物と戦いにすらならず、喰いつぶされていた。それはきっと、義妹たちも同じ。私たちが力を合わせて、それでも足りなくて。いろんな人に力を借りて、借りて、借りて、ようやっと魔王のつま先くらいに手が届くレベルでしかなかった。


「皆さんこれからなんです。だから今を嘆く必要は全くありません。……私もまた、覚悟が出来ていなかった一人。勇者でも、魔人でもない中途半端でした。だからどこにいても最初の一歩を自分から踏み出すことができなかったんです。やっと決意が出来たのは、真人さんがあの婚約武闘会で戦う姿を見てから。――

どんなに辛くても、苦しくても、悲しくても、それでも大切な人がいるならそのために前に進む。そんな真人さんみたいになりたい。そう思って今私はここにいるんです」


 そう笑顔でビオラは言う。でもね、気持ちは痛いほどよくわかるんだけどアレを目標にするのはどうかと思うの。あの人って、人のいう事は聞いてくれないし、自分勝手に突き進んで、別に頼んでもいないのに、自分が助けたいからって何もかもを救おうとするの。お父様を殺した罪悪感のせいかなとか思ったけど、全然そんなつもりはなさそうだし?うん、本当に私の事助けたいからって理由だけで助けたみたいなの!本当に何なのよあの人!!


「ふふ、それが真人さんです。ううん、きっとそれが勇者として正しい姿なんです。――弱きを護り、邪悪を挫く。それだけじゃない、たとえ自分が不幸になろうとも目の前の悲しむ誰かを救わざるを得ないんです。うん、まぁ変な人だなとは私も思いますけど、わ、私はそういうところも……」


 頬をポッと赤らめ、可愛らしく彼女は微笑んだ。うん、アイツって婚約してたわよね!!だ、大丈夫なのかしら?


「あーハイハイごちそう様ですわ。それにしてもこの機体、魔力をゴッソリと持っていくのですね。私、あともう少しで魔力が切れそうなのだけど」

「あーぅー私もぉー」


 疲れた様子でアーリアもペシテもぐったりとしている。私は、というと先ほど魔力を沢山吸ったせいで割と元気だったりする。元気すぎて今日眠れるかしら……?


「……みなさん、ごめんなさい!私のお母様が皆さんにご迷惑をお掛けしまして……」


 すももが大きく頭を下げ涙を浮かべる。


「いかなる罰も受けるつもりです。私も、お姉さまも。だから――」

「罰も何も無いわよ」

「へ?」


 目を真っ赤にはらしたすももに私はため息をつきながら答える。すももはきょとんとしている。だってそうじゃない。本当ならば私が率先してするべきだった事をこの子の母親(リリア)が代わりにやってくれたのだから。


「魔王がいないならば新しく産みなおせばいいだなんて思いもしなかった。ええ、やり方は間違えていたけれど、それはきっとお父様の事を――この領の事を想ってやろうとしたこと。そのことに罪は無いの。まぁ、彼女が手にかけた私たちの兄弟がどれだけいるかが後の問題だけど……まぁ、あとはアレに丸投げでいいんじゃないかしら?」


 アレ、と言って視線が真人のいた場所に移る。……あれ、いない?いなくないかしら?


「あ、あのぅ!そ、その、先ほど魔獣さんから出てきた女の子とリリアさんを抱えて、真人さん落ちて行ってます……ど、どうしましょう……」


 ビオラは青ざめた顔でふるふる震えていた。


「「「「それ早く言って!?」」」」


 慌ててみんなで残った魔力を全力で回してのんきに手を振りながら落ちてくあのバカ(真人)をカオスブラッティアの手で何とかキャッチする。すもも、潰したら駄目だからね!気を付けてそっとだからね!


「お母様!ご無事ですか!お母様!」


 画面には微笑みながらも――手足のない彼女の母親(リリア)の姿が映っていた。アレではもうエリクサー以外での回復は見込めない。残酷ではあるが、もはや人らしく生きることは困難だ。それでも勇者である彼女は死んでもまた復活してしまう。



――今のこの姿のままで、永遠に。


「いいんです、それでもいいんです。お母様が生きていてくださった。また微笑んでくださった。それだけで私は幸せなんです。私は、私たちがお母様を支えてゆきます」


 ボロボロと涙を流してすももはそう言った。

 本当に強い子だ。私には無い覚悟と、想い、そして行動する力を持っている。だからこそ私は負けていられない。きっとこの子をも支える魔王になるのだから!


 城の地下から通信が届き、ようやっと顛末を伝えた。どうやら向こう側に残っていた兄弟たちもこちらのバックアップをしてくれていたらしい。主にシステム面的意味で、データの構築なんかをやっていたとの事だった。うん、なんでそんなことがド素人にできるのかなと思ったけれど、そう言えば彼らも結局はお父様の子供。こう言うもの(ロボや機械)が好きなのだ。うん、私も嫌いじゃないから困りものなのよね……。


 ところで、ドリルは後付けできないのかしら?やっぱり足りていないと思うのよね、ドリル!

間に合った、間に合ったz( ˘ω˘)スヤァ

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