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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第四章:勇者な執事と海と水着とバカンスと。バカンスはお仕事と見つけたり?
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34話:妹萌えって大昔から続く萌えの伝統だよね?

 破壊された城の地下。

 整備され、いつのまにか綺麗に掃除された銀色に輝くその施設は父、魔王バアルの残した遺産だった。

 私、アーリア、真人が保護してきたペシテというモフモフ少女。そして宮廷魔術師モルファのところから救出されて届けられた死んだと思われていた義兄弟達に、彼の側にいたビオラというメイドがモニターが沢山ある部屋に詰め込まれていた。

 その中でも一際大きなモニターに映し出されるのは、巨大な父の姿に似た化物。禍々しく、その胸部にはモルファの姿が見えた。どうやら、真人が戦っている状況がリアルタイムでみることができる仕組みになっているらしい。


――私は何のために生きていたのだろうか?


 魔王になるために私は生きてきた。

……なろうとして生きてきた。けれども現実はどうだ?


 部下には見放され、魔王らしからぬ隠居んいも似た引きこもり生活。身内に城を追われ、破壊され、仇敵に救われて、ずっと住んでいたのに、知ることすらなかった城の地下、父ーー魔王バアルの地下施設に至る。それも、戦うためではなく逃げるために。


 何と情けないことか。


 私は結局何も知らぬ子供でしかなかったのだ。私はやればできるのだと言葉だけでは何とでも言えた。言えたのだ。けれども私は、何もできなかった。何も、できていない。

 魔王として最前線に出るべきなのに、私はすくんでしまった。あの、圧倒的な力を目にして、彼の――真人の部下に連れられるがままにここに来てしまった。


「お姉様、ひどい顔をしていますわね」

「ええ、最悪の気分よ。本当は私が対処しないといけないことなのに、アイツに……真人全部投げたの。ああ、こんなに自分が情けない気持ちになるだなんて、惨めな気持ちになるなんて思いもしなかったわ」


 心配するアーリアの頭を軽く撫でながら私は独白する。


「んふー♪って、何で撫でるんですの!?ここ撫でるところじゃないですわよ!」


 結局のところ、なでなで、私には勇気が足りていないのだ。なでなで。


「聞いてくださいまし!」


 自分の実力を嫌という程理解させられてしまったから、とも言える。だってそうじゃない。お父様が勝つことができなかった真人が苦戦する相手に私が立ち向かえれるわけなんてーー。


「状況はどうなっていますか?」


入ってきたのは真人のメイド、ロベリアという少女と二日酔いのルナエルフ、そして生き残った妹の最後の一人、すももがそこにいた。


「すもも!ごめんなさい。助けに行きたかったのだけれども、出たらここに送られてしまって……」

「いいんです。あんず姉さんが無事ならそれだけで私は嬉しいですから」


どうやらこの二人は母親が同じ姉妹らしい。……初めて逢うはず。けど、どこかで……いや、まさか、そんな、訳が。


「ロベリアちゃん、お帰りなさい。現状は真人さんがかなり不利です。分身を出して戦ってはいますが、その数を圧倒するほどに相手が増えていて……」

「完全にあの人を苗床にしているみたいですね。うわ、また増えています。薙ぎ払っても次の瞬間には増えているなんて……」


 メイド二人が不安そうな声でヒソヒソと話している。だが、おかしい。彼にはあの辺り一帯を吹き飛ばせるほどの力があるはずなのだ。それを使えば、倒せないまでも、現状を打破できるはずなのに。


「あ、ああ、そんな、私があんなこと言ったから……」


 すももがそんな言葉を漏らす。


「何を言ったか聞いてもいいかしら?」

「そんなの、決まっているわ」


 話を遮ったのは彼女の姉、あんず。


「きっとこの子はこう言ったの。お母さんを助けてって」


 やっと、合点がいった。つまり、彼女達姉妹は――


「あの女の娘ってことか」


 誰かがそう呟いたのと同時に一気に殺気立つ、かに思われた。


「お前さん苦労してんなぁ。あんな母ちゃん俺は勘弁だぜ……」

「だなぁ、それなのに助けてくれだなんんてよく言えるもんだ」

「てか、姉妹揃って俺らと一緒に生贄にされかけてなかったか!?」

「それでも助けてって……」

「「「「ええ子やん……」」」」


 うん?うんん?い、いや、争いが起こらないのはいいのだけれど?そ、それで……いいのかしら?

 普通ならもっと。こう、ほら!お前の母親のせいでひどい目にあったんだ!とか。だからお前にその責任を……とか。あるんじゃなのかしら?


「姉様、本の読みすぎですよ」

「そうそう、同じ苦しみを分かち合ったんだからな!同じ血を分け合った義妹でもあるんだからな!責任を取れだなんて言える訳が無いじゃあないか!俺、妹こんな妹が欲しかったんだよ!素直で可愛いすももちゃんみたいな!あとペシテちゃんも可愛いよな!」


そう割れたメガネの狼族が吠え、それに男一同が賛同する。うん、妹というなら私やアーリア他いるのだけど?


「え?だってなあ?」

「美人だと思うが、妹っぽくないというか」

「小さい子っていいよね!」


だめだこいつら、早く何とかしないと……。




確かに可愛いと思うけど……。あ、いや違う、違うからね!?

10/27 誤字などを訂正しております。携帯とPCだと結構違うんだなってOTL

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