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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第四章:勇者な執事と海と水着とバカンスと。バカンスはお仕事と見つけたり?
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26話:どう考えても負けにしかならない盤面ってひっくり返すに限るよね?

 勇者とは何か?

 哲学的か、文学的か、考えられるだけでも答えは万華鏡のようにあるだろう。けれども、ああけれども、だけれども。彼らが勇者だとは俺は認めない。


 笑い、嘲り、あたりかまわず破壊して、人族以外を人と見ようとも……いや、自分たち以外をNPCと思っている節のある彼らを俺は勇者だと認めない。


「あんた、なんか目が怖いよ?」

「はは。切れて無いっす。切れて無いっすよ?」


 なんだかとっても懐かしい気持ちになってくる。うん、これは中東あたりで滞在した村が正義の名のもとに襲われた時の気分だ。清々しい、気持ちが悪い。


「ははは、はーはっははは!おら、死ね死ね!ははは!ああ、うざったいったらありゃしねーぜ!」

「おいおいやりすぎるなよ?依頼主はあそこにいるバアルの娘たちをどんな状態でもいいから捕らえてこいって言ってるんだからな?」


 黒髪の男たちが笑いながらこちらへとやってくる。ひーふーみーよー、ざっと二十人は下らないかな?うん、数えるのもメドイんだよ!


「まさか小隊規模の勇者が……」

「年若いとはいえ、次代の魔王二人だしね。警戒しすぎってことは無いんじゃないかな?」


 少し怯えているのか、水の槍を構えながらもスキュラのお付きさんの声が震えている。


「で、どうするの?逃げるの?戦うの?私は戦うつもりだけど」

「私はもちろん戦いますわぁ!たとえ、ど、どれだけ戦力差があろうとも、私はいつか魔王になるのだから!」


 どうやらベルもアーリアちゃんもやる気満々のようだ。

 勇者たちは俺らが逃げないことを知ってか知らずかじわじわとその距離を縮めてくる。

 恐らく、直接戦闘になっても俺一人で勝つことはたやすい。けれども、その際に周りにどれだけの被害が出るかもわからないし、特に近くのホテル・キングストーンには流れ弾やら何やらが飛んでいくことになるだろう。うん、そうしたら怖いサメさんが出てくるんだろうけどね?


「そういうわけでこうなります?」

「え?」「へ?」「あっ」


 三人の顔が驚愕に染まる。

 それもそのはず、あれだけいたユウシャ達が一人残らず視界から一瞬で消えてしまったからである。


 ――落とし穴。原始的かつ、効率的な罠なんだよ!上手くいったな!


「な、何だこれ、上に昇れねぇ!?」「まて、俺の顔を踏み台にするんじゃ、んがああ!?」

「ぎゃあ、ワイヤーが張って!?飛ぶな!飛んだらワイヤーでしぬぞ」「あぐ、ぐえ」「何だこれ!」

「がああああ!」「下に何かいるぞ!?」「蛇が!へびがぁ!」「ちげえ、水だ!」


 砂浜にぽっかりと空いたアリジゴクは、シンクホールな落とし穴。一度嵌ってしまえば這い上がることは叶わず、空を飛んで逃げようとも、アラク姉(クレオ)さんの研ぎ澄まされた糸ではじき返されてしまう。うん、弾力がすごいんだよ?そして穴掘りを終えた水蛇さんの導きで細く掘られた地下百メートルほどの穴へとスッテンコロリンと転げて落ちる仕掛けになっていて、そのゴールは出口のない地底湖になっている。

 それは、どう足掻いても出ることのできない片道切符の人口地底湖ツアー。うん、落ちた時点でゲームオーバーなんだよ?


「え、えげつない!?」

「魔王より魔王らしい仕掛けしてませんの!?」


 何でか次代の魔王候補二人にドン引きされてしまった!おかしいな、殺してはいないから人道的だよ?死なないと出れないけど?なむなむ。


「アーリア様、真人様を敵に回すのだけはやめましょう。ええ、ダメです。絶対にダメです」

「わかっていますわ!あれだけの勇者を戦う事すらせず……。あれ、この方を側近にしてしまえば私、安泰なのでは!?」


 じっとアーリアちゃんが何か物欲しそうな顔でこちらを見つめてくれている。ふふ、そんなに可愛いお目々で見つめられると照れちゃうぜ!でも残念ながら俺には先約がいるから、君の側近にはなってあげられないんだ。ごめんね!


「くぅぅ、なんて羨ましい……」

「アーリア様、それでは真人様の恋人になりたいという意味に捕らえられますよ?」

「はっ!?」


 顔を真っ赤にしてイヤンイヤンと水色の長い髪を揺らしている。ううん、可愛いなぁ……。見ていて和むよ!


「はぁ、気が抜けるわ。貴方みたいな人だからお父様が貴方に勝てなかった訳ね」


 ベルは大きくため息を吐き、頭を抱えている。

 まぁうん、割りと俺もピンチだったからね?あの悪夢のような物量は怖かったんだよ!?バアルも普通に強かったし?まぁ、先に金髪イケメン……基、最速の魔王(シルヴ)と戦っていたからね。アイツと比べれば格段にシルヴが強かったと言っちゃうんだけどね!単体では間違いなく魔王上位クラスだよ!


「能力面で言えばお父様はそこそこでしたしね……」

「そうなんですの!?」


 アーリアちゃんは驚いているけれども、確かにその通り。うん、上には上がいるモノだ。大魔王は除外するとして、この前行ったヴァルカスの魔王フレイア様もやばかった!うん、正直言って今の状態ですらぎりぎり勝てるか否かって感じなんだよ!本気であの人はやばい。


「さーて、ペシテちゃんの村にも勇者が来てるし、どうしたものかなー。まぁ、一番やばいのは俺の本体なんだけどね!さて、勇者教の教会からどう脱出しようかな?」

「絶賛大ピンチですの!?」


 うん、いい反応をありがとうアーリアちゃん!でも、どうしたものかなコレ!

間に合った!間に合ったよ!

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